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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
33.魔大陸
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46.再生利用

「儂はお前さんを突破せにゃならんのか」


 新緑の瞳をしている小柄な男が、アシドを見つめ、そう溢す。

 小柄かつ樽のような腹を持つガストロは、足が速いわけではないのだろう。痩身かつ走るのに適した足の筋肉を見ている。


 ガストロの眼は魔眼ではない。しかし、義眼であり、そこから得られる審美眼は鑑定眼に近い。そのため、アシドの脚の筋肉が、負荷トレーニングではなく、生活・戦闘中の中で自然と作られたものであることが見抜けた。


「そこまで鍛え上げるなんて、凄ぇな。儂、感心しちまうよ」

「分かんのか」

「儂、鍛冶師だし」


 そこで横から炎の絨毯がやってきた。

 ガストロは自身の三分の二ほどの大きさの斧を振り、炎を掻き消した。

 アシドは槍をくるくると回転させ、楯として防いだ。


「凄ぇな。だからこそ、惜しいな」

「あん?」

「自然なのが惜しい」


 ガストロはアシド以上の速度で距離を詰めた。





 ガストロは元ドワーフである。

 まぁ、”元”のところが気になるだろうが、経緯を含めて説明するので、少し待ってほしい。


 ドワーフとして鉱山に住み、中で鶴嘴(つるはし)を振っていた。それも五歳の頃だ。

 この町ではドワーフの他にエルフ、不死魔族、有翼人族なども働いていた。


 種族には種族のいいところがある。ガストロはそれを羨んで生活していた。


 ある日、ガストロの育った町が人間に蹂躙された。その時のガストロは悲観することがなかった。むしろ、目を輝かせていた。

 各種族はそれぞれの得意分野で対抗していた。

 エルフは森の中で連携や俊敏さ。

 不死魔族はその不死性を活かしたゾンビ戦術。

 有翼人族は制空権を活かした翻弄する戦術。

 ドワーフはいつまでも炭鉱で働ける厖大(ぼうだい)体力(スタミナ)筋力(パワー)

 これが全種族連携できていたならば、きっと人間軍を退けられただろう。


 つまり、一つ一つは負けていなかった。合わせれば勝てた。運用方法がいけなかったのだ。


 ガストロはそこに魅せられた。


 自然と、各個で来た敵と戦っていたからいけなかった。人工的に戦場を設定し、相手を決めていれば勝てていただろう。


 全てを壊し、全てを炉に入れ、全てを打ち壊す。自然では駄目だ。人口でなければ駄目だ。全てを造り変える必要がある。


 ガストロがその思想に至った時、この世の全てが原石に見えた。しかし、本当に原石なのかも気になった。


 そこで、ガストロを魔眼を人工的に作ることにした。当時のステータス眼のチャンプセンと鑑定眼のゴロクリンの目を刳り貫き、加工した。つけてみると、対象が自然物か人工物か分かるではありませんか。


「あぁ、楽しい。あぁ、これだ。私が求めていたのはこれに違いない!」


 その後は、エルフの死体をかき集めては脚を作り、不死魔族の死体をかき集めては再生能力の高い肉体をつくった。有翼人族から翼を作り、獣人からは高い索敵能力をつくった。


 この頃になると、既にガストロの強さは伝説級となっていた。もうほとんどの者が手を出せない実力者となった時、もう一度人間が攻めてきた。


 今更この町に何しに来たのだ。


 そんなことを思ったが、どうやら目的は自分らしい。


「今更儂に何の用じゃ」


 ガストロは溜息を吐いた。ガストロは敵討ちになど興味ない。そのため、その人間達には興味が湧かないのだ。


 とはいえ、人工物には興味がある。その鎧、その楯、その剣、全てを見てみたい。


 ガストロが拳を繰り出せば、人間の鎧は簡単に凹み、砕け散った。

 斧と振るえば、楯が紙のように切れた。

 少しの力を入れなくても、相手の剣が折れた。


 こんなものか。人間の作る人工物など。


「何じゃ、儂等はこの程度の輩に負けたのか」


 ガストロは人工物な魔眼を見開き、剣を見つける。


『どうしたんだい? そんなつまらなさそうな顔をして』

「あん?」


 声が聞こえた。ガストロが(うずたか)く積まれた死体の山の上から、その声の主を見る。もちろん魔眼を使っておく。


 魂が震えた。こんなに素晴らしい素体があるものなのか。


「お前さん」

『ん?』

「旅人か? ならば儂も連れて行ってはくれないか?」

「この爺さん、目ェ輝きすぎだろ」


 魔眼はダイヤモンドのような輝きを放っている。それを見たキスレは若干、いや、かなり引いていた。






「自然とは手付かず。すなわち過去の遺物。現在に即した形になっていない。それを現在(イマ)(モノ)にするのが儂の役目」


 ガストロが筋肉を膨張させ、斧を水平に構えた。

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