表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
33.魔大陸
664/683

36.境界の怪物

 コストイラの歴史は3つに分けられる。


 フラメテとアイケルスに育てられた齢一桁の幼少期時代。

 アシドやアストロと出会って遊び始めた成人までの少年期時代。

 シキやアレン達と出会い、冒険を始めた勇者としての青年期時代。


 幼少期時代の過去のほとんどを清算していることができた。

 青年期時代は生きている今だ。清算すべき過去というものはない。


 少年期時代には一個だけ清算すべき過去がある。

 当時母親役をしてくれていたカーミラだ。10日に一回や一月に一回くらいのペースで母親をしに来てくれた。

 まぁ、10日も日持ちするようなものを作ることはできないため、一月の大半を草食って過ごしていた。


 カーミラは目の前の岩に座っていた。右手には水の入った容器を持っている。左手を岩に着き、上を向くと、水を飲んだ。


「待っていたよ、コストイラ」

「もう大丈夫なのか、母さん(カーミラ)

「えぇ、大丈夫よ。アイケルスは救われたもの」


 カーミラは嬉しそうに天を見ている。


「ここから先はかなりキツイよ?」

「つまり?」

「行くの?」


 カーミラが超大真面目にコストイラを見つめている。コストイラはアイケルスの直前でも似たようなことをやったな、と思いつつ、カーミラの言葉を持つ。


「この先は魔素が世界に充満する前から存在している真正の怪物や、魔力を誰よりも扱える魔女なんかがいるわ」

「それなら余計さ」


 カーミラの発言に、コストイラが刀に手を置きながら答えた。


「……そうね、そうよね」


 何かを言おうとして手をワタワタとさせたかと思うと、一気に力を抜いた。カーミラはコストイラの性格を知っている。少年期時代だけでなく、幼少期時代も一緒にいたのだ。十三年も一緒にいるのだ、分かってしまう。


「なら、私もやらなきゃいけないことがあるわ」

「……働きすぎで倒れるなよ」

「ヤバい。義息(コストイラ)の優しさに涙が溢れてきそう」


 カーミラは目尻を押さえて天を向いた。


「ごめんね、コストイラ」

「あん?」


 突然謝罪してきたカーミラに、コストイラは眉を顰めた。何に対しての謝罪だ?


 次の瞬間、カーミラの脇から巨大な丸太が飛び出してきた。


「何!?」


 コストイラは咄嗟に刀を振るった。極太の丸太が砕け散る。そのそばから、次の丸太が飛んできた。


「ぐッ!?」


 後から追ってきた丸太に顔面を撃ち抜かれた。

 カーミラの背後に100本以上の丸太が出現する。


「ごめんね、コストイラ。でも、これは個人(ソロ)の問題じゃなくて、(チーム)の問題なのよ」

「シキ、寸止め(コロスナ)

「承知」


 100本以上の丸太群を前に、レイドが楯を構えた。その後ろにアストロ達後衛が隠れる。

 アシドが楯から飛び出し、一気に最高速(トップスピード)になる。回転するように躱し、カーミラに近づいていく。

 地面からヴォンという音が聞こえた。後二歩も走れば穴に足を取られてしまうだろう。ここからの回避は足を捻ってしまう可能性が高い。

 最初にして最後の一歩で跳躍を試みる。最高速(トップスピード)であるため、雑な踏み込みでも世界記録(ワールドレコード)だ。


 目の前から高速で丸太が飛んでくる。


「くっ!?」


 アシドが槍を振るい、丸太を壊す。木端微塵となった木片を全身に浴びる中、さらに丸太がやってくる。それはさっき見た。と、言わんばかりに槍を振るった。

 2,3本の丸太を破壊した後、次に飛来してきたのは石柱だった。


 それまでの数本の飛来群によって、速度が殺され、跳躍の飛距離が短くなった。そこに留めの石柱がやってきたのだ。


 アシドが槍で石柱の破壊を試みるが、成功しなかった。三分の一ほど破壊された石柱がアシドの顎に当たり、顔が跳ね上がり、進行が止まる。

 一回転したアシドは派手に地面を滑る。そこに丸太やら石柱やらが集中した。


 アストロが助けるように魔術を放ち、アシドに向かう飛来群を少しでも減らそうとする。


 シキはアシド以上にギリギリで躱す。むしろ掠っているように見える。

 シキを狙う丸太や石柱が互にぶつかり合い、壊れてしまう。


「あの子、肝座りすぎでしょ」


 800年ほどの人生の中でも、上位級に位置する異常な精神性を目の当たりにしてカーミラが冷や汗を流す。

 前後左右上下に至るまで、縦横無尽、自由自在に駆け回る。足が何本も増えたみたいな速さでカーミラに迫っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ