3.ゴール家
決意の固まった少女がいる。ゴール家領地内で起こった、とある事件に関与している少女の噂は、領主であるロランドの耳にも届いていた。
勇敢な者には栄誉があるべきだ。
ロランドが外出しようと外套を羽織り、帽子を被ると、娘のニャスがどこからともなく現れた。
ニャスは幼い頃に、自分は女の子の方が好きだ、結婚したい、とカミングアウトしてきた。
きっと少女だと知り、一番に会いに行きたがったのだろう。
制御が困ってしまうため、もう一人の娘であるトレットを連れて行きたいが、今、彼女は学舎へ忘れ物を取りに行くついでに、先生と話しに行ってしまった。
ガラガラと音と振動を出しながら場所が道を進む。
社交デビューしたばかりの娘は、はしたなく足をパタパタとさせながら、出会えることを待ち望んでいる。
ロランドが注意をしようと、覚悟を決めた時、ドォンと大きな音と振動が馬車を襲った。
「何っ!?」
「何だ!? どうした!?」
ニャスが馬車の壁にぶつけた頭を痛そうに押さえながら状況も分からず叫ぶ。
ロランドは壁に手を着き体を起こしながら、護衛の者に情報を求めた。
「な、何やら争いのようです。戦っているのは、お、大人と子供のようです」
「大人と子供だと? 親子喧嘩か?」
「そ、そこまでは」
「男の子? 女の子?」
「えっと、女の子だったかと」
「あ、おい!」
ニャスが馬車から飛び出した。ニャスが無茶をするような情報を授けた護衛を叱りながら、ロランドも馬車を下りる。護衛が頭を下げるのを止めながら、剣を奪い、ニャスを追いかける。
ニャスは着ているドレスの裾を持ち上げ、走りやすいように加工している。そして、ニャスは走りながら、民衆には避難するように指示を出す。
その時だった。
「お、お、お貴族様! お! 逃げ、く、下さい!」
目の前に少女が現れた。薄紫色の髪を爆発させ、顔や体に血をつけた、そばかすの少女が顔を上げ、ニャスの目をしっかりと見ている。
その瞬間、ニャス・ゴールはエンドローゼに恋をした。




