2.ホウギ
どうしても一人でいるときは物思いに耽ってしまう。眩しくて目を細めてしまうような朝の日差しの中でも、この世ならざる者との交流が盛んになる夕日の中でも、沈んでしまう。
盃に酒を注ぎ、その嫌な空気ごと大きく呷る。
「プハァ」
ホウギは気持ちよさそうに風に当たりながら、目を閉じる。酒の影響で火照っている頬が涼しくて気持ちいい。黄土色の髪がそよそよと揺れる。
気分の高揚により、心地よい。
それがなくなってしまう程に物思いに耽ってしまう。
自分は弱い。自覚している。
かつて自分は初代勇者である”英雄”ジョコンドの仲間として、魔大陸に旅立ったことがある。自分は臆病であり、仲間の中で一番弱かった。ジョコンドよりも力が強かったが、心が弱かった。
むしろ、周りがおかしかったかもしれない。
人間であるにもかかわらず、神と渡り合う程の精神力を持った勇者。
神相手にも冷静に戦いを運び、神にも勝る侍。
全てを見通すような口ぶりをしていた、万事万能な邪神。
最後に仲間になったにもかかわらず、その強さを遺憾なく発揮した最上位である竜種。
その中にいては、自分は無能であり、平均以下、凡人以下であった。
そんな状態の奴を最近見かけた。見た時は泣きそうになった。
勇者一行の中に見つけたあの楯の男。レイドだ。
レイドの周りは化け物だらけだ。
人間であるにもかかわらず、神を下した異常な勇者。
神相手にも一歩も引かず、戦闘を行った侍。
全てを悟り、もとい諦めたかのような物言いをしている魔女。
足の速さで場を支配し、槍で敵を討つ兵士。
見た目が気弱そうだというのに、芯が強すぎる回復術士。
あともう一人いたような気がするけど、どんな奴だったか覚えていない。
自分と似た境遇。自分と似た忸怩。自分と似た末路。
それが心配になってしまう。
「もし、もう一度会えたなら、いっちょ揉んでやるか」
ホウギは盃に入った酒を呑み干した。




