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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
32-4.磨穿鉄硯
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2.ホウギ

 どうしても一人でいるときは物思いに耽ってしまう。眩しくて目を細めてしまうような朝の日差しの中でも、この世ならざる者との交流が盛んになる夕日の中でも、沈んでしまう。

 盃に酒を注ぎ、その嫌な空気ごと大きく呷る。


「プハァ」


 ホウギは気持ちよさそうに風に当たりながら、目を閉じる。酒の影響で火照っている頬が涼しくて気持ちいい。黄土色の髪がそよそよと揺れる。

 気分の高揚により、心地よい。


 それがなくなってしまう程に物思いに耽ってしまう。


 自分は弱い。自覚している。


 かつて自分は初代勇者である”英雄”ジョコンドの仲間として、魔大陸に旅立ったことがある。自分は臆病であり、仲間の中で一番弱かった。ジョコンドよりも力が強かったが、心が弱かった。


 むしろ、周りがおかしかったかもしれない。


 人間であるにもかかわらず、神と渡り合う程の精神力を持った勇者。


 神相手にも冷静に戦いを運び、神にも勝る侍。


 全てを見通すような口ぶりをしていた、万事万能な邪神。


 最後に仲間になったにもかかわらず、その強さを遺憾なく発揮した最上位である竜種。


 その中にいては、自分は無能であり、平均以下、凡人以下であった。


 そんな状態の奴を最近見かけた。見た時は泣きそうになった。

 勇者一行の中に見つけたあの楯の男。レイドだ。

 レイドの周りは化け物だらけだ。


 人間であるにもかかわらず、神を下した異常な勇者。


 神相手にも一歩も引かず、戦闘を行った侍。


 全てを悟り、もとい諦めたかのような物言いをしている魔女。


 足の速さで場を支配し、槍で敵を討つ兵士。


 見た目が気弱そうだというのに、芯が強すぎる回復術士。


 あともう一人いたような気がするけど、どんな奴だったか覚えていない。


 自分と似た境遇。自分と似た忸怩(おもい)。自分と似た末路(みらい)


 それが心配になってしまう。


「もし、もう一度会えたなら、いっちょ揉んでやるか」


 ホウギは盃に入った酒を呑み干した。

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