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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
32.次元の狭間
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34.鬼と悪魔

 大爆発が起こった。


 しかし、コストイラは生きている。


「ガハハ! 何死を受け入れてやがるんだ?」


 豪快な笑い声が上から来る。


 瓢箪を腰から下げる3m大の男がそこにいた。


「レイベルス!?」


「フン! 大男一人増えたところで何だというのだ! 殺せ! 殺せ!!」


 レイベルスは自身のこめかみをコリコリと掻きながら、困ったような顔をする。


「……何だ、アイツ?」


「さぁな。元五重塔の住民であるマーエン教だ」


「マーエン……? あぁ、イーラのところの宗教か」


「イーラ様だ!」


「来る!」


『ゴォア!』


 敬神の念を抱く相手を呼び捨てにされ、激情に駆られるフェリップの令を受け、エイルドラゴンとフレアドラゴンが突進してくる。


「……向かう相手くらい考えろ、獣風情が」


 レイベルスがコストイラの肩に手を置き、後ろに押しやった。コストイラが文句を言う前に、レイベルスはエイルドラゴンの下顎を拳で打ち抜いた。

 エイルドラゴンの頭部を覆っている骨格が砕け、顔の半分が陥没している。


「は?」


「え、マジ?」


 フェリップは空色の瞳を丸くして呆然とし、コストイラ達はその攻撃一撃の威力にドン引きした。


 レイベルスは左腕を引き戻す勢いを利用して、右ストレートをエイルドラゴンの顔面に叩き込んだ。その威力は先程のアッパーよりも数段高く、エイルドラゴンの頭が弾けた。


 ある程度長い手腕を伸ばし、近づいてきていたフレアドラゴンの顔を掴んだ。炎竜(フレアドラゴン)は焦りながら逃れようとするが、鬼の力を振り解けない。それどころか、鱗が砕けている。


「な、グレートドラゴン! カオスドラゴン! 何とかしろ!」


 レイベルスはフレアドラゴンの首を掴んだ。


「なぜ動かない! 行け! 殺せ!」


 レイベルスは両腕に力を込めた。鬼の中でも一、二を争う暴力の持ち主だ。炎竜の首はブチブチと既に耐えきれていない。


「くそ! もう俺がやるしかない!」


 フェリップが走り始めた途端、レイベルスはフレアドラゴンの首を引き千切った。


 レイベルスとフェリップの間にコストイラが入った。


「これ以上いい格好させるかよ!!」


「チッ!」


「なら任せようじゃねぇか」


 フェリップは顔いっぱいに不満を爆発させ、空色の瞳を金色にした。


 魔眼だ。間違いない。しかし、何の能力か分からない。


 フェリップは指揮者の指揮棒(タクト)のような剣を抜いた。四ツ目を失った男(フェリップ)史上最速に近い速度で細剣を振るう。

 アレンは目を丸くした。アレンでも思ってしまった。


 遅い。アレンの目から見ても遅い。まぁ、視認できることと、体が動くことは別である。


 フェリップが細剣を振るう。


 コストイラは何のモーションもなく跳躍し、細剣を躱した。そして拳のように固めた足で、フェリップの顔面を蹴る。

 フェリップの鼻頭が折れ、背から倒れてしまう。


 その時、ズズンとグレートドラゴンが倒れた。もう目に光がない。完全に死んでいる。

 

 フェリップは後転して四つ足となる。

 頭が上手に働いてくれない。なぜグレートドラゴンが倒れている? なぜ原初の魔竜と素手でやり合える奴がいる? そして、()俺は何をされた(・・・・・・・)


 自身の鼻へと手をやり、ベキベキと鼻を真っ直ぐに治す。途端、蛇口を捻ったように血が流れ出てきた。


「イーラ様の、贄となるのだ!」


 フェリップは立ち上がることなく、低姿勢のまま走り出した。

 フェリップ史上最速の刺突を前に、コストイラはただゆらりと動いた。そして、フェリップの目に映らず、金の瞳でも判別できない程の速度と手数で動く。

 フェリップは一つしかない瞳をあらん限りに見開き、動きを止めようとする。


 しかし、その前にコストイラがフェリップの細剣を右足で踏んだ。一歩も動かせない。フェリップが焦りを交えた目でコストイラを見た。

 その顔は勝ち誇るでも憐れむでもなく、ただ無表情。


「おぉ、神よ……」


 フェリップはその一言を残して、首だけとなった。

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