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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
27.川の流れ着く先
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7.豊かすぎる自然

 森はあればいいというものではない。緑が乱暴なまでに生い茂っている時、森は地獄に変わる。

 葉が大きいうえに多く、森内部の風通しが明らかに悪い。その為か、幾本の木々が生きながらに腐っているのだ。


 嫌な腐臭が立ち込めている。


「何でこんなになってんだよ。これ燃やしちゃ駄目か?」


「駄目に決まってんでしょ」


 コストイラが苛立ちすぎて冗句に聞こえないことを言ったため、アストロが頭を叩く。


「何バカなことを言っているのよ。この腐臭よ。ガスがその辺にあって、引火したら爆発するかもしれないわ」


 アストロの指摘は、確かにその通りなのだが、少しズレている。絶対にそれが理由で炎を使ってはいけないわけではないだろう。

 フワリと風が髪を持ち上げた。同時に腐臭を浴びる。

 鼻が曲がる思いをしながら、風が吹いてきた方を見る。


 そこには風の精霊がいた。


 精霊がいながら森は生い茂りすぎている。それを管理する者がおらず、管理する立場にある者が義務を放棄している。

 シルフィードが相手を蔑むような眼で見ている。コストイラやアストロを見て、片眉だけを上げて、怒りを顕にした。

 シルフィードが腕を振るって、風の刃を生み出した。


 コストイラが居合で風の刃を断つ。


 アストロが魔力をシルフィードに向けて放つ。旋風精霊(シルフィード)は体を傾けて躱した。


 コストイラが一気に距離を詰め、刀で切り付けようとする。


 ブシュと血が出た。足の甲に何か傷を負ったようだが、何も見えない。何かが足の甲を貫いた?

 足を無理矢理動かそうとすると、傷口が広がった。釘が留められた紙束を引き千切るような感覚だ。つまり、今も何かが貫いている。

 

 そこで意識を戻す。目の前にシルフィードがいるではないか。

 左手に何かを握っている。しかし、手の中に何も見えない。

 キュウと瞳が絞られていく。その手の中のものを見ようとする。


 もう少し。もう少し。あとちょっと。


 そこで空気が集まっているのが見えた。これは空気の塊だ。集まってきた空気が剣の形をしている。


 あれ? 長さ的に大丈夫か? これ?


 汁をちらっと流しながら、横に跳んだ。ピッと耳たぶが切れた。そのままごろごろ転がり、少し離れる。


「あっぶね~」


「あっ! アウトです!」


 怪我を見逃さない回復術士エンドローゼは許さない。コストイラは耳を覆いながら、エンドローゼの顔を見た。


 アウト? そりゃそうだ。問題は耳ではなく足の方だ。足を貫いていた空気を無理矢理引き剥がした時にできた傷が、かなり開いてしまっている。靴など関係なく血がドクドク出ている。

 エンドローゼが歯茎剥き出しにして怒っている。コストイラのテンションはダダ下がりだ。エンドローゼの怒りによっては月が代わってお仕置きしてくるだろう。

 今はエンドローゼの優しさで生かされているだけ。それを実感させられる。プレッシャーがヤヴァイ。


 シルフィードは少し気まずそうにしていたが、キッと目を吊り上げ、風の刃を放った。

 コストイラは足に力を込めて刀を振るった。足の甲からプシッと血が噴き出た。


 エンドローゼが”あ”と声を出した。


 シルフィードの頭上からシキが落ちてきた。魔物の頭を貫いた。ナイフを抜き、流れるように首を斬る。


「おぉん!?」


 コストイラの珍妙な声が響いた。


「天罰?」


 アストロの口が引き攣る。エンドローゼが少しオロオロしているのを見ると、フォンは出力ミスを起こしたようだ。フォンの適正とエンドローゼの適正は違うので当然だ。

 コストイラが仕方ない、と言いたげな顔をしている。少しはこれで懲りたら、と思う一方で、無茶無謀を冒すのがコストイラの味だと知っている。


 今後数十回は天罰を食らいそうだ。

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