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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
27.川の流れ着く先
496/683

5.咳をしても一人

 森を駆ける。


 懐かしい。


 少女はその昔、暗殺者の訓練の一環でよく森林やの山を駆けて回った。慣れたように根っこを跳び、慣れたように枝を飛び移る。


 歌が近い。残り4分40秒で敵を討つ。大丈夫。いつもやっていることだ。

 暗殺者は顔を見られてはならない。ゆえに、短期決戦を挑むのだ。


 見えた。魔物は一匹。確か名前はラミアだったか。速攻で終わらせにかかる。

 さすがにラミアとて無抵抗ではない。咄嗟に身を翻し、逃げようとした。


 シキが深追いする。ラミアは逃走を隠れ蓑にして反撃に出た。

 尻尾を大きく振るい、シキの横腹を叩いた。しかし、尾と体の間にはナイフが入っている。


 シキは無表情でナイフを振るった。ラミアの尾が切られる。


『ア!?』


 ラミアの歌が途切れた。ラミアが絶叫をこらえようと奥歯を噛み締める。

 正直、歌が終わったので、シキの役目は終了している。しかし、アレンに褒められたいので、この魔物を倒す。

 ラミアが見えない。あれ? 逃げた?


 シキはとりあえず褒められたいので、ラミアの痕跡を探す。血の跡が見えているので追跡は容易い。


 シキの考え通り、ラミアは血の跡の先にいた。

 シキがナイフを振るう。逃げに徹していたラミアはシキの存在に気付いていなかった。

 その結果、ラミアの頭がゴロリと地面に落ちた。シキはラミアの頭を持ち上げる。これで褒められる。


「ムフー」


 シキは一人、森の中で勝ち誇った。





 世界樹近くに存在する町、ガクカセイチ。ここに突如として名を轟かせた新人がいた。

 その者の名前を知る者があまりにも少ないため、その冒険者には渾名が付けられた。3分間の魔女、と。


「3分間の魔女について知りたい? 兄ちゃん、何者だよ」


「私は記者をしております、ミードと申します。こちらは助手のエッグです」


 そういうとミードは身分証を見せた。確かに記者なようだが、大元の視を知らない。そして、エッグと言う助手が見えない。


「助手?」


「はい。こちらのォエエエエエ!?」


 そこでようやく気付いたようだ。隣には誰もいない。イマジナリーフレンドをリアリーフレンドだとして扱っている精神異常者の線を疑った、どうやら違うらしい。


「エェエエエッブッ!!」


 ミードが客を搔き分け、一人の女を引っ張ってきた。


「エッグ。今日はこの方からお話を聞くって言っただろ! 何をしていたんだ」


「……いい匂い」


「君と言う人は」


 エッグはボーッッとしている女のようだ。ミードは額に手を当て、顔を振っている。苦労が見えてくる。


「3分間の魔女の話だったな」


「はい」


「正直俺の知っていることなんて少ねェ。こういうのは本人に聞くべきだぜ」


「そうおっしゃられましても、その3分間の魔女の御姿を我々は知りませんので」


「すげー特徴的だから、すぐに見つけられると思うぜ」


「ほぉほぉ」


 ミードは羊皮紙にメモを残していく。未だ重要なことを話していないのだが、何を書いているのだろうか。


「まず、凄ェ包帯姿だ。服の下に至るまで、全部が、だぜ。それにいつもぐったりしている」


「包帯? それはなぜ」


「知るかよ。聞いたって答えちゃくれねぇぞ」


「成る程。では会ってみた方が早そうですね。ありがとうございます」


 男はひらひらと手を振った。





 3分間の魔女ことサヒミサセイは今日もぐったりしている。体が動かなくなってきている。その為、3分間の戦闘が限界なのだ。その時間を過ぎれば倒れてしまうだろう。


 レベル65近い魔物が30体。それを討伐するのが、今回の依頼だ。

 討伐時間は2分54秒。ギリギリだ。いや、ギリギリアウトだ。帰り道で許容量を超えてしまう。


 サヒミサセイは汗腺が壊れている。うまく汗が分泌されないため、体温がぐんぐん上昇していく。すでに体温が40度を突破した。早く横になりたい。

 街に入ると、好奇や興味の視線が向けられる。いつものことだ。しかし、その中に珍しい視線を感じる。こんな視線に耐えられないため、早く路銀を稼ぎたい。


「あの、3分間の魔女様ですか?」


「……は?」


 3分間の魔女と言う名前は渾名であり、陰で言われているものだ。当然のように言われているが、サヒミサセイは知らない。


「え、知らない」


「え!? 全身包帯の方だと聞いたのですが」


 面倒な雰囲気を感じ取り、足早に去ることにした。


「ゴホゴホ」


 湿っぽく鉄臭い咳をすると、天を見上げた。心配してくれる人は誰もいない。

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