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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
26.『黄昏の箱庭』
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27.戦士が集う

「ここが」


 コストイラが手で笠を作る。


 ついに魔王城に辿り着いた。アレンはきっとこの中にいる。


「よし、行こう」


 そして、足を踏み出した時、目の前の門が爆発した。土埃の中から、銀の髪をした黒翼の天使が現れた。





 コストイラ達が現れる少し前、ゴイアレとその騎士団”滅天隊”隊長リュリュレは執務室にいた。


『状況は?』


『駄目です。”天界の使徒”に囲まれています』


『くそっ! まだ準備が終わっていないというのに』


 ゴイアレは太い指を丸め、拳を作る。その拳が強く握られすぎて、血が滲んでいた。


『迎え撃つ。奴等をここで殺す』


『分かりました』


 リュリュレがいなくなるを見て、溜息を吐いた。


『ペテロシウスめ』


 ドゴンと壁が破壊された。


『何ッ!?』


 正体を見ようとして、後ろを振り返ると、ハンマーが飛び込んできた。咄嗟に大剣を呼び出し、ハンマーを受け止める。しかし、相手は力自慢なのか、tになっているゴイアレの体が吹き飛ばされた。


『ペテロシウス!』


『魔王ゴイアレ、貴様をここで仕留める』


『はっ! ついに強硬手段に出たか! そう簡単に我等がやられるわけがないだろう!』


『それはどうかな』


 大剣を振るうたび、ハンマーが振るわれるたび、城内が破壊されていく。


 その音を聞いた”滅天隊”が反応する。

 ちょうど玄関ホールにいたリュリュレが先程までいた執務室を見上げる。


『ゴイアレ様!?』


『行かせない』


 立ちはだかったのは”天界の使徒”の副官セプオク。№2同士の戦いが始まった。


 不意打ち気味に振られる剣に、リュリュレも何とか剣を挟み込む。

 しかし、すべてを防げたわけではない。剣先につけられた魔力が爆発した。リュリュレの体は後ろに飛ばされ、扉を破壊し、外に出された。


 黒翼の天使は見た。自分の足元に勇者達がいるのを。


『チ』


 挟まれた。しかし、脅威は目の前の女の方。すでに攻撃を開始している。リュリュレも剣を振るい、交わらせる。

 再び爆発。

 剣戟に隠された魔力爆発と、城壁の破壊の音が重なった。


「上から」


 蒼髪が何か言った。リュリュレは気付いている。しっかりと目視できている。セプオクは気付いていない。まだ何も分かっていない。

 上から瓦礫がいくつか降ってくる。そこでリュリュレが離れ、ようやく異変に気付く。しかし、もう遅い。

 振り向いた顔面を巨大な掌が覆った。そのまま地面に叩きつけられる。そして無造作に投げられた。


 ペテロシウスは関係ないとばかりにハンマーを振るった。体の左側がメキメキと破壊されていく。セプオクの体は破壊された魔王城に突っ込んだ。


『リュリュレ』


『はい』


『お前が持っていろ』


 渡されたのは黒い箱。アストロはその箱から微量の魔力を感じ取った。


『貴様等、勇者だな』


「だとしたら?」


『手を貸してくれないか?』


「は?」


 コストイラの目つきが鋭くなった。

 そこを隙と見たのか、ペテロシウスが肉薄し、ハンマーを振るった。ゴイアレが大剣を立てて攻撃を防いだ。

 動きの止まった戦神に対し、コストイラが刀を振るった。しかし、すぐさま躱された。その躱した先にいるのはシキ。殺戮的威力の蹴りがペテロシウスの顔面に叩き込まれた。森の中に消えていく。


『続きを話そう』


「そうね。協力しろって言ったかしら?」


『あぁ』


「倒すのは賛成だ。だが、協力のメリットは?」


『あれが強いからだ。今もおそらく、タイミングを計っているだけ。ダメージは望めない。手を組んだ方が確実だ』


「足りねぇな」


『貴様……』


『リュリュレ、抑えろ。勇者の行く先を可能な限り邪魔はせん。我々の夢に干渉してこない限り、な』


「何?」


 ゴイアレの提案にレイドの眉根が寄る。


「よし、乗った」


「何?」


 コストイラの返答に、レイドはさらに皺を刻んだ。


「夢は大事だからな」


 ゴイアレは口角を上げ、コストイラの手を取った。


『リュリュレ、お前は箱を持って、さっさと行け。それを取られるわけにはいかない』


『はい……』


 森から男が戻ってくる。


『これ以上待っていても好転すると思えなかったのでな』


『こっから好転することはないぞ』


『フン』


 ペテロシウスはハンマーを地面に突き立てた。


『悪魔、魔王、勇者。全てが討伐対象。粛清すべき存在』


 ペテロシウスの頭にどんどん血が集まっていく。熱を帯びていく体を抑制し、敵を見据える。


『ムン!!』


 ペテロシウスの振るうハンマーをゴイアレが大剣で受け止める。コストイラが刀を振るうと、ペテロシウスは素早く躱す。


 リュリュレが黒翼をはばたかせ、空へと逃げる。ペテロシウスはハンマーをゴルフクラブのように振るい、岩を飛ばして襲撃しようとした。それはシキが防ぐ。


『無駄だ。すでに箱はこちらにある』


 何を言っているのだ、と思った。


 しかし、上空には左手を失ったリュリュレと、その黒い箱を持っている左手を奪ったヴァルキリーがいた。

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