27.戦士が集う
「ここが」
コストイラが手で笠を作る。
ついに魔王城に辿り着いた。アレンはきっとこの中にいる。
「よし、行こう」
そして、足を踏み出した時、目の前の門が爆発した。土埃の中から、銀の髪をした黒翼の天使が現れた。
コストイラ達が現れる少し前、ゴイアレとその騎士団”滅天隊”隊長リュリュレは執務室にいた。
『状況は?』
『駄目です。”天界の使徒”に囲まれています』
『くそっ! まだ準備が終わっていないというのに』
ゴイアレは太い指を丸め、拳を作る。その拳が強く握られすぎて、血が滲んでいた。
『迎え撃つ。奴等をここで殺す』
『分かりました』
リュリュレがいなくなるを見て、溜息を吐いた。
『ペテロシウスめ』
ドゴンと壁が破壊された。
『何ッ!?』
正体を見ようとして、後ろを振り返ると、ハンマーが飛び込んできた。咄嗟に大剣を呼び出し、ハンマーを受け止める。しかし、相手は力自慢なのか、tになっているゴイアレの体が吹き飛ばされた。
『ペテロシウス!』
『魔王ゴイアレ、貴様をここで仕留める』
『はっ! ついに強硬手段に出たか! そう簡単に我等がやられるわけがないだろう!』
『それはどうかな』
大剣を振るうたび、ハンマーが振るわれるたび、城内が破壊されていく。
その音を聞いた”滅天隊”が反応する。
ちょうど玄関ホールにいたリュリュレが先程までいた執務室を見上げる。
『ゴイアレ様!?』
『行かせない』
立ちはだかったのは”天界の使徒”の副官セプオク。№2同士の戦いが始まった。
不意打ち気味に振られる剣に、リュリュレも何とか剣を挟み込む。
しかし、すべてを防げたわけではない。剣先につけられた魔力が爆発した。リュリュレの体は後ろに飛ばされ、扉を破壊し、外に出された。
黒翼の天使は見た。自分の足元に勇者達がいるのを。
『チ』
挟まれた。しかし、脅威は目の前の女の方。すでに攻撃を開始している。リュリュレも剣を振るい、交わらせる。
再び爆発。
剣戟に隠された魔力爆発と、城壁の破壊の音が重なった。
「上から」
蒼髪が何か言った。リュリュレは気付いている。しっかりと目視できている。セプオクは気付いていない。まだ何も分かっていない。
上から瓦礫がいくつか降ってくる。そこでリュリュレが離れ、ようやく異変に気付く。しかし、もう遅い。
振り向いた顔面を巨大な掌が覆った。そのまま地面に叩きつけられる。そして無造作に投げられた。
ペテロシウスは関係ないとばかりにハンマーを振るった。体の左側がメキメキと破壊されていく。セプオクの体は破壊された魔王城に突っ込んだ。
『リュリュレ』
『はい』
『お前が持っていろ』
渡されたのは黒い箱。アストロはその箱から微量の魔力を感じ取った。
『貴様等、勇者だな』
「だとしたら?」
『手を貸してくれないか?』
「は?」
コストイラの目つきが鋭くなった。
そこを隙と見たのか、ペテロシウスが肉薄し、ハンマーを振るった。ゴイアレが大剣を立てて攻撃を防いだ。
動きの止まった戦神に対し、コストイラが刀を振るった。しかし、すぐさま躱された。その躱した先にいるのはシキ。殺戮的威力の蹴りがペテロシウスの顔面に叩き込まれた。森の中に消えていく。
『続きを話そう』
「そうね。協力しろって言ったかしら?」
『あぁ』
「倒すのは賛成だ。だが、協力のメリットは?」
『あれが強いからだ。今もおそらく、タイミングを計っているだけ。ダメージは望めない。手を組んだ方が確実だ』
「足りねぇな」
『貴様……』
『リュリュレ、抑えろ。勇者の行く先を可能な限り邪魔はせん。我々の夢に干渉してこない限り、な』
「何?」
ゴイアレの提案にレイドの眉根が寄る。
「よし、乗った」
「何?」
コストイラの返答に、レイドはさらに皺を刻んだ。
「夢は大事だからな」
ゴイアレは口角を上げ、コストイラの手を取った。
『リュリュレ、お前は箱を持って、さっさと行け。それを取られるわけにはいかない』
『はい……』
森から男が戻ってくる。
『これ以上待っていても好転すると思えなかったのでな』
『こっから好転することはないぞ』
『フン』
ペテロシウスはハンマーを地面に突き立てた。
『悪魔、魔王、勇者。全てが討伐対象。粛清すべき存在』
ペテロシウスの頭にどんどん血が集まっていく。熱を帯びていく体を抑制し、敵を見据える。
『ムン!!』
ペテロシウスの振るうハンマーをゴイアレが大剣で受け止める。コストイラが刀を振るうと、ペテロシウスは素早く躱す。
リュリュレが黒翼をはばたかせ、空へと逃げる。ペテロシウスはハンマーをゴルフクラブのように振るい、岩を飛ばして襲撃しようとした。それはシキが防ぐ。
『無駄だ。すでに箱はこちらにある』
何を言っているのだ、と思った。
しかし、上空には左手を失ったリュリュレと、その黒い箱を持っている左手を奪ったヴァルキリーがいた。




