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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
26.『黄昏の箱庭』
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10.冥府の穴

 森はすぐに抜けられた。安堵したようにコストイラが伸びをするが、溜息を吐いた。


「山だ……」


「……山っつーか崖だな、こりゃ」

 

 コストイラが首を折り、アシドが額に手を当てた。


「シ」


 シキが黙るように言ってくる。何かと思い、静かにシキの目線の先を見つめると、オオカミのようなものが寝ていた。まだこちら側に反応していない。


 コストイラが静かに移動するようにハンドサインする。

 レイド達は頷き、指を差した。そこには明らかに人工的だが、向こう側まで続いていそうな道の入口があった。

 目下そこに行くことを短期目標にして行動を始める。


 こういう時、エンドローゼが何かやらかして、狼擬きが起きて襲われるのが通例。それを起こされるのは困るので、エンドローゼの手をアストロが握った。そういうことをされると思っていなかったエンドローゼは凄いニコニコしている。


 その後、狼擬きが起きてしまった。しかし、原因はエンドローゼでも時間でもなかった。


 上からバルログが降ってきたのだ。


 800㎏近い体重が遠慮なく着地した。その衝撃、振動によって狼擬きが置いてしまったのだ。


『ハァ』


『ブルル』


 バルログの口端から湯気のような白い息が吐かれる。完全に捕捉されてしまった。ここから逃げるのはもう無理だろう。

 狼擬きは眠気を覚ますように頭を振り、完全にこちらと敵対している。


 二手に分かれるのは可能だが、問題は狼擬きの方が完全に初見であるという点だ。どう立ち回るべきなのか分からないので、時間がかかってしまうだろう。

 シキ、レイド、エンドローゼがバルログを残りの幼馴染トリオが狼擬きを担当する。


『グン!』


 バルログがパンチを繰り出す。レイドが楯で完璧に防ぐ。力に押され、レイドの体が後ろに下がる。バルログも反射して体が反った。

 上からシキが踵を落とした。左肩に当たり、爆発した。弾け飛んでいないが、骨も肉もばっちり露出している。

 バルログが拳に炎を纏う。未だ着地していないシキに向けた。

 シキは無表情に、無感動に、無反応にナイフを振るった。センテンロールの時に炎を浴び、痛い目を見たことがある。

 その経験があったからこそ、シキは恐れなかった。あの時より火力低そうだから、いけるでしょ。

 シキは炎に体を焼かれながら、ナイフを二振り振るった。右の手首を切り落とし、その切り傷から斬撃が伝播していく。

 まだ我慢できる熱さだ。じゃあ、このままでいいだろう。

 後ろへのけぞろうとするバルログに糸を巻き付け、そのまま近づく。


 右のナイフを振るう。

 ボロリと首が落ちた。


 シキが着地した瞬間、手を引かれた。いつ近づかれたのか気付かなかった。誰だ?


「あ」


 思わずといった感じに声が出た。シキにしては珍しい反応だが、それは手を引いた人物の正体のせいだ。

 その人物は皆が最強の冒険者と呼んでいるエンドローゼだった。特定の条件下で最強の存在へと変わる少女なのだ。その状態となったエンドローゼは止めることができるものはおらず、あのシキでも従わざるを得ない。

 シキはおとなしく腕を引かれ、チクチクとお説教されながら、治してもらうのだった。

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