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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
26.『黄昏の箱庭』
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3.虹の境界

 装置は3m程の高さで、一脚の梯子が架けられている。その梯子にエンドローゼと同じくらいの身長をした少女が乗っている。装置の側では水色のビキニを身に着けている緑色の少女が、側面の窓から中を覗いている。


『もうちょっと入れて~』


『……うい』


 緑髪の少女が手を招いて指示を出すと、金髪の少女が手から水を出した。


『あ、もう大丈夫』


『……うい』


「何が大丈夫なんだ?」


 水色のビキニの少女が止めるように言い、白色のビキニの少女はそれに従う。何の工夫もなくそのまま近づいたコストイラが話しかけると、2人とも声も出さずに装置の陰に隠れてしまった。


『な、な、何!? 何の用!?』


『わ、わ、私達は崇高な行いの途中なのです。ど、ど、どっか行け』


 つっけんどんな態度をとられ、コストイラはガリガリと頭を掻いた。こちらには敵対の意思はない。それを示すために、両の掌を相手に見せる。

 少し興味を持ったのか、装置から顔を出した。


『じ、じゃあ、何で来たの?』


「オレ達はあんた等の仕事に興味がないわけじゃねェが、それよりもどうにかしなくちゃいけねェことがあんだよ」


『どうにか?』


『な、何それ』


 少女の1人が指を鳴らす。少女達は興味を示したのか、陰から出てきた。好奇心旺盛なようだ。よくこの地で生きていけるな。


『で、な、何を聞きたいの?』


 表に出てきた2人は、コストイラの掌をニギニギと触っている。コストイラとしては気分を損ねさせる方が面倒そうだと判断し、放置した。


「手伝ってくれるのか?」


『うん。困っている人がいたら』


『助けてあげなさいって、か、か、かか様もエンドローゼちゃんも言っていたから』


 岩陰でエンドローゼが身を固くしたのが分かった。この少女2人はエンドローゼを知っている。どういう関係なのか分かるまで、こちらにいることを悟らせないようにしよう。


「じゃあ、その言葉に甘えさせてもらうわ。実は連れがどこにいんのか分かんなくてな」


『その、お連れの特徴は?』


「アイツは特徴がありすぎる奴だからな」


 コストイラが口を曲げながら、空を見た。


「まず右目の上に切り傷がある」


『フムフム』


「次に右腕に大きな火傷の痕がある」


『ホォホォ』


「さらに右耳は切れてて、左耳はギザギザに千切れている」


『う……ン?』


「あとは左手が痺れて、あんま動かない」


『アイエェエエエエ! な、な、何でそこまでの、けー、怪我をしているんだぁ!?』


『え、エンドローゼちゃんがいたら、ブチギレてそう』


 コストイラも簡単に想像できてしまい、笑いそうになってしまう。


「あと、弓矢を武器にしている」


『見た?』


『見ていないな』


 少女2人は互いに顔を見合わせ、首を傾げた。


『マスターなら知ってるかな?』


『どうだろ?』


「マスター?」


 今度はコストイラが首を傾げた。


「誰だ? マスター」


『『私達の飼い主様』』


 コストイラが目を細める。人身売買。許せない行為だが、今、この近くに売主がいるとは限らない。


「その飼い主はどこにいるんだ?」


『えっと』


『ゴルゥアアアアアアッ!!』


 コストイラが森の方を見ると、バサバサと鳥が飛び立っていった。


『何でまだ虹が架かってねェんだァ!?』


 怒鳴りながらミノタウロスが現れた。


『さっさとしろォ!!』


 飼い主の命令を受け、焦りながら、緑の少女が装置に風を送る。


 装置から七色の美しい虹が発生した。

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