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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
25.四柱一体
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22.神をも恐れぬ愚行

 皇龍。藍色の体に、黄龍と同じような黄色の模様。30mはある長躯を巻きながら、勇者一行を睥睨する。

 光から現れたということは、この龍がこの空間の王であり、神ということだ。


 脱出の仕方は分からない。だが、この龍を倒すことで脱出に近づけると、本能で感じ取った。


「また空を飛んでいやがる。どうすっかな」


 コストイラは刀を構えながら、皇龍を睨みつけた。皇龍は動じずにコストイラを睨み返している。


「まず、私が魔術で刺激する。向こうが魔術を撃ってきたら、レイドかコストイラが動いて」


「こっちの攻撃タイミングは?」


「下りてきた時」


 その作戦で大丈夫なのか? とコストイラが目線で訴える。


「大丈夫よ」


 アストロは自信に満ちる目でコストイラに返した。


 ガッシリとエンドローゼが腕を掴んだ。アストロにはエンドローゼの考えていることなど手に取るように分かる。徹頭徹尾、仲間かフォンのことだ。


 どうせ今もそういうことだろう。


 アストロがそう思った時、エンドローゼが口を開いた。


「わ、わ、私がさ、さーさえます」


 アストロは目を丸くした。アストロの考えていた語群の中にない言葉だった。手に取るように分かるというのか驕りだったか。

 アストロはすぐに鋭い吊り目に変え、乱暴にエンドローゼの頭を撫でようとした。そこで今自分が隻腕であることを再確認した。


「魔術が撃てないから離れなさい」


 エンドローゼが少し落ち込みながら離れた。


「いくわよ」


 アストロが魔力を素早さ重視で撃った。皇龍は向かってくる魔力を見てから避けようとする。

 しかし、素早さ重視で撃たれた魔力を避けることができなかった。皇龍の頬を魔力が掠める。


 皇龍が頬から煙を出しながら、アストロのことを睨む。口内に魔力を溜めていく。ブレスの準備だ。


 レイドがアストロの前に出る。レイドが体内の魔力を練り上げ、ブレスに対して準備していく。


 しかし、皇龍が繰り出したのはブレスではなく、ただの砲撃。バチバチと電気を纏いながら、放射された砲は、レイドに当たり、弾き飛ばした。

 一撃とはいえ、レイドは仕事した。レイドの仕事は後衛を護ること。彼は守護する者として、砲を弾いていた。その衝撃でレイドは飛ばされただけだ。


 次護る人がいない。しかし、そんな人は要らない。次など装填させなければいいからだ。


 皇龍の左頬に衝撃が走った。口から唾を出しながら顔を歪めた。

 痛みを逃がすように顔を振ると、銀の髪をした少女が落ちていくのが見えた。


 上の牙が1本砕かれているのを確認しながら、尻尾を振るい、シキを叩いた。弾丸のような速さでシキが地面に激突した。


 ズキリと尻尾に痛みが走った。確認すると、先が見えない。体の5分の1までに斬撃が走った。


 下では、ナイフを両手に装備した銀髪の少女が首を傾けて、頭上に乗っていた小石を落とした。さらに、口元を拭って、ブッと血を吐き出した。

 目はギラついており、皇龍はゾクリと背筋を震わせた。


 捕食者はこちらではなく、向こうだったのか?


 皇龍は今すぐにでも逃げ出したくなった。こいつはヤバい。勝ったとしても無事では済まない。


 しかし、皇帝として逃げることは許されない。この地に住まう者としての責務を果たさなければならない。


『ブォオオオオ!!』


 皇龍が自ら奮い立たせるために、雄叫びを上げた。そこに合わせてアストロが魔術をぶつける。

 口から煙を吐きながら、アストロを睨む。

 下からゴンと衝撃が来る。


 何か分からず、内側から舌を動かして確認してみる。


 ザクリと舌が斬られた。何かが口内に侵入してきた?


 皇龍は吐き出すために唾を分泌し、半ばまで失った舌を外に出す。その下を足場にしてシキとコストイラが鼻を伝って上に乗る。


 皇龍の眼には2人の異常者が映る。絶対的な捕食者たる白銀の悪魔。サメのような笑みを浮かべる朱紅の悪魔。


 どちらを相手しても地獄。


 それが理解できた瞬間、朱紅の悪魔が刀を振るった。鼻筋の鱗が剥がれ、血とオレンジと黒の混じった煙が噴き出る。

 そこから恐怖の始まりだった。どれだけ抵抗しても刃は乱舞し、すべてを切り落とされる。身を逆さまにして落とそうとしても、刃を刺して抵抗されてしまう。


 しばらくして、皇龍は落ちた。






「よく背負ったまま跳んだわね」


「チョー余裕」


「できることが増えんのいいんだけど、あまりにも人外じみすぎてねェか?」


「む」


 呆れるアストロにVサインするシキ。コストイラに言われた言葉に頬を膨らませるシキ。どれもアレンの見たことないシキだ。


 シキはアレンの前では無口無表情無抵抗の三無を貫いている。この差は一体何なのだろうか。


 どうにかして心を開いてほしい、距離を縮めたいと考えているアレンには、途轍もなく大きな問題だ。

 どうしたものかと頭を悩ませていると、皇龍の死体が光った。


「え?」


 まさか、こいつも何か発動のカギ?


 それは、死後に発動する、嫌がらせのような一撃で……。


 視界は真っ白に消えたあと、紫炎のような色に包まれた。

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