表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
24.深層の備え
437/683

5.月まで届く、怪鳥の煙

 シキがカッと目を開く。何の前兆もないので、ホラーさえ感じる。


 幼い頃から同じ起床時間で、同じ行動、同じ就寝時間を繰り返しているうちに、朝の3時半には必ず目が覚めるようになってしまった。3つ語の魂百までとはいうが、恐ろしいものだ。

 そして、いつものようにナイフを振るったり、足技を繰り出したりして、戦闘訓練をする。


 4時になり、コストイラとアシドが起きてくる。コストイラは訓練のために、毎日この時間に起きている。アシドは漁師の息子として、早起きの特訓だ。目標はシキと同じ3時半だが、まだ起きることができない。


 4時15分になり、エンドローゼが起きてくる。孤児院の習慣が体に染みついており、さらにメイドの教えもあり、この時間に起きてくる。何かすることがあるわけではないので、月にお祈りしたり、ボーッとしていたりする。この時間にフォンは起きていない。


 5時になり、アストロとレイドが起きてくる。アストロは指輪を磨いたり、魔力切れの道具に魔力を注いだりしている。レイドは朝日に対する礼拝だ。


 またしても最後に起きてきたのはアレン。時刻は7時半だ。別に遅いわけではない。


「申し訳ないです」


「謝る必要なんかねェよ」


「全員起きたことだし、行きましょうか」


 皆が覚悟を決めて、山登りをし始める。


 この山はそこまで高い山ではない。休日に親子で山登りピクニックができる程にはキツイ山ではない。

 だからこそ、魔物が現れた際にはそこまでヘイトを集めなかった。しかし、この魔物に最も闘志を燃やすものがいた。


 エンドローゼである。


 現れた魔物の名前はインフェルノ。体を青紫の炎で包んだ鳳である。

 激しく鳴くことなく、そこで羽ばたいている。体は熱く燃えており、その際発生する煙は月を隠していた。

 今日は昼間にも月が見える、トッテム教には大事な日。常に月とともに在れるため、最もテンションの上がる日だ。


 それを邪魔されたとあっては、フォンが許さない。


 チャキ、とコストイラが刀が構えた瞬間、淡い月明かりのような魔力が放たれた。インフェルノは向かってくる魔力に対して、炎を吐きかけて抵抗する。


 しかし、それは意味をなさず、インフェルノの頭に当たった。威力がすさまじく、一撃でインフェルノの頭を消し飛ばした。


 体を覆っていた炎が霧散し、体が顕になった。


「朝御飯にちょうどいい奴が来たな」


「そうね、これを調理しましょう」


 アストロとコストイラがインフェルノの解体を始めた。





 月のとある一角で、とある双子が身を寄せ合って泣いていた。


『フォン様はあの女にご執心』


『私達の事なんてどうでもいいんだ』


 双子はお互いの涙を拭いながら、窓の外を見る。ここから見えるのは、立ち入り禁止エリアだ。しかし、そこを見ていない。

 見えてるのは月宮殿。そこに住まうフォンの御姿だ。


『愛してほしいな、フォン様』


『頭なでなでと、力一杯のハグ。してくれないかな、フォン様』


『何でしてくれないの?』


『何で?』


『何で?』


『何で?』

 ・

 ・

 ・

『『私達の夢を打ち砕いたのは、誰?』』






 モフリと柔らかい感触のものに、顔を突っ込んだ。思い切り吸い込む。これで当分の精神安定を図るのだ。


 あの日、公爵家からの呼び出しがなければ、帰ってきた彼女にお祝いパーティをしてあげる予定だったのに。

 だというのに、こんなことになった。なんてことだ。いつものようにたくさんのキスができないではないかっ!?


『ニャス。いい加減出てきなさい! 御飯よ』


 姉のトレットの声が聞こえた気がした。しかし、今は何に対してもやる気が出ない。


 あぁ、愛しのエンドローゼ。今、貴方はどこにいるの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ