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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
23.大空洞
416/683

5.炎熱地獄

 人が気温を感じるとき、単純な気温や湿度だけでは決まらない。その時の風や影、人の服装や運動量など、他にもたくさんのものが関係している。


 今、アレン達は地獄にいる。形容的な地獄だ。単純な気温が高く、湿度も高い。風はなく、影もない。アレン達の姿は、決して薄着ではなく、歩行状態にある。


 暑いに決まっている。


 灼熱の環境下に対して、耐性が低い。改めて、自分達の育った環境は、とても恵まれていたことが分かる。最高気温30度、最低気温8度は過ごしやすすぎた。


 汗を拭う。そうした側から汗が噴き出てくる。正直な話、熱中症だし、脱水症状だ。頭がクラクラして、体もフラフラしてくる。目が霞んできた。


「目がシパシパする」


「水欲しい」


「何でシキは平気な顔してんのよ」


「平気じゃない」


 コストイラが眉間を指で摘まみ、揉み解している。アシドは喉を押さえて、口を開けた。アストロは恨みがましくシキを見るが、シキは無表情かつ平坦な声で反論した。


 パッと道の端の行燈に火が灯った。行燈の火すらも気温に影響するので、とっとと消したい。

 ボボボと連続して火が着いた。


 コストイラがわざとらしく指を動かし、数える。


「98、99、あれで100か」


 目線の少し上、地下が一段低くなっているところの出っ張りに、行燈があった。全ての行燈に、青で染色された布が貼り付けられている。光は透過していて、しっかりと炎が確認できる。


 ズモモとレッドジャイアントが立ち上がる。そして、レッドジャイアントが腕を振るって攻撃してくる。

 先頭にいたコストイラは刀を抜き、何でもないかのように腕を切り落とし、流れるように体まで刻んだ。

 もはや息をするように自然な動きだ。


 パッと行燈の炎が一つ消えた。コストイラ達が見逃すはずがない。しかし、それが何を表しているのかが、分からないので無視する。


 次から次へとレッドジャイアントが立ち上がる。数は数えたくない。気持ちを下げたくないからだ。


「パレードか!?」


「罠かもしれません」


「どっちでもいい。倒すぞ」


 アシドが槍を振るいながら舌を打つ。アレンが即座に別の可能性を持ち出すが、コストイラが2つとも切った。


 まだ、レベルが2桁になりたての頃は、かなり苦戦していたが、今では一振りで倒せる相手だ。

 さすがに何体も倒していると気付いてくることがある。レッドジャイアント一体倒すと、行燈の火が一つ消える。一体に一つが対応している。この行燈はいわば命の灯火だ。

 倒せば火が消える。つまり、暗さが戻ってくる。とはいえ、アレンにとって数少ない経験値稼ぎの場なので、最大限まで活用したい。


 ぼんやりとした闇が場を支配し始めた。アレンの目では、もう分からなくなってきている。


 闇の中でも平然と動く化け物、シキとコストイラの時間が始まる。


 闇の中という悪環境もそうなのだが、この暑さの中でもパフォーマンスが落ちないのは、どういうことなのだろうか。


 コストイラが刀を振るい、97体目のレッドジャイアントを切り飛ばした。それと同時にシキが98体目と99体目を切り刻んだ。


 シキからの当てつけに若干キレながら、100体目を待つ。


 100個目の行燈は少し大きめで、その後ろからぬらりと、手が現れた。行燈の大きさは分からないが、おそらく普通サイズだ。


 そのままゆっくりと顔を出す。黒く長い髪と、牛のような短い角を持っている。身体はキモノを着ており、白地の布に、青の花柄だ。

 少女が行燈よりも身を乗り出すと、そのまま落ちた。

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