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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
3.魔法の森
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4.岩と泥

 コストイラは顔を真っ赤にしていた。恥ずかしさと怒りが含まれている。


 アシドはコストイラの姿を見て、思い切り笑う。


「コストイラ、お前なんだその姿っ!」


 申し訳ないが、アレンも笑ってしまった。過去に笑われたことへの意趣返しも含まれているが、それがなくても笑ってしまった。


「泥まみれじゃん。ぷっふ、どうしたんだよ、お前」


「普通に泥浴びた」


 アシドはツボに入ったようだ。コストイラはやり場のない怒りに体を震わせる。泥にまみれた瞬間の記憶を思い出し、落胆した。


「くそぉ、もう夜になるし、寝床を見つけなきゃいけねェのに水場も探さなきゃいけねェじゃねェかよ」


 コストイラは舌打ちをすると自身の顔を覆った。顔も手も泥だらけなので気にしない。


「頑張れ」


 アストロが鼻で笑うと、コストイラは小さく息を吐き、近くにあった岩に体を預ける。


「休んでないで探すぞ」


 アシドに半笑いで言われ、コストイラはお前らも泥にまみれろと、怨嗟を心の中で漏らす。


「ぐぅふっ!」


 コストイラの体が吹き飛んだ。コストイラは顔面から着地する。コストイラの顔の泥が削れた。見ると、岩場が動いており、物理的に重い腰を上げていた。


『ゴアアアアアア!!』


 外部からの刺激を受けた岩石のような魔物、ボールダーは眠りから目覚め、邪魔されたことに怒り出す。怒らせたコストイラは全く見ていなかった。


「コストイラさんは僕が見ていますね」


「了解」


 アレンが告げると、アシドは槍を回しながら答える。アレンは叢を抜けると、コストイラが脇腹を押さえながら立っていた。


「またかよ」


 コストイラの目の前にはまたしてもマッドスライムがいた。








 夕方か夜かと言われると夜と答える人が多い時間帯。しかし、まだ太陽光が少しだけ照らしてある。これから徐々に暗くなっていく様に、ボールダーの姿が見えなくなっていた。


「とっととケリをつけなきゃ厳しいか」


「私の魔術で明かりをつけましょうか?」


「森を燃やそうとするな」


 アシドは、張り詰めた空気を緩めようとアストロがジョークを言ったので笑ってあげようとするが、うまく笑えない。さっき笑いすぎて表情筋が痛い。あのアストロが気を遣っている。アレンが少々失礼なことを考えていると、アシドがボールダーに突っ込む。


 ただの牽制のつもりで放った突きは、避けられることなく、無防備な腹に当たる。


「何!?」


 軽い突きだったとはいえ、傷が一切ついていない。


『ゴゥン』


 ボールダーはその岩の腕を横に薙ぐが、アシドは悠々と後ろへ飛び退き躱す。岩に炎も電気も通りにくいと考え、アストロは初めて水魔術を人前で披露する。


 アストロが両手を前に出し、魔法陣が出現し、濁流が飛び出してくる。


「うおっ!あっぶな!」


 アシドは巻き込まれるギリギリで木にしがみ付く。


『ゴゥン!!』


 ボールダーの前傾姿勢となり、流れに抗う。しかし、関節部の隙間に水が入り込み、体が崩れていく。


 アシドが木に摑まりながらギャーギャー言っているが、アストロの耳には届かない。水やら土砂やらの音にかき消されてしまった。まぁ、聞こえていたとしてもアストロに響いたかは別である。








 戦い方は先ほどと同じである。炎で固め、そして叩く。


 マッドスライムは必死に固まっていく泥を剥がし、抵抗するが間に合わない。


 アレンが僕必要ないなと思っているとは夢にも思わず、コストイラはマッドスライムを斬りにかかる。もちろん、先程と同じ結果になる。すなわち、泥が噴き出てくる。すでに泥にまみれているコストイラは気にしない。


「……え?」


 アレンは泥を被るハメになった。


「こっち来なきゃよかったな」


「…………そうですね」


 アレンとコストイラはアストロ達と合流すると笑われた。


 いつか報復してやりたいが、その仕返しが怖いのでやらないようにしよう。

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