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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
20.シン・ジゴク
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6.血も凍る森

 コストイラ達がレイド達と合流する頃には、外の天気は回復していた。


「行こうぜ」


 その声がどこか冷酷で冷血で。何があったのかを聞きたかったが、雰囲気的にも憚られた。レイドもアレンもシキも何も言わずに従った。


 サクサクと小気味良い音を立てながら進んでいく。先頭はいつも通りコストイラだが、いつもと違う空気だ。重々しすぎてアシドが頭を掻いた。


 雪は止んだのだが、寒さはどうにもなっていない。アシドやアレンは寒さに身を震わせて体を擦っているが、コストイラとアストロ、エンドローゼの3名はそれすらしない。


 シキは元から一切身動ぎしない怖い奴だったが、いつも震えている印象のあるエンドローゼもとなると話は別だ。


 あの城の中で何かがあったのだ。アシドは、オレもついていれば、と後悔しているが、同時に行かなくて良かったのかもしれないという安堵もある。


 コストイラがピタリと足を止めた。


「どうした?」


「森がある。突っ切るか?」


 前には2つの選択肢が存在していた。片や何があるか分からない森の道。片や何もないのが目視できてしまう、平坦で退屈で景色の変わらない雪の道。


 どちらを選ぶか?そんなの最初から決まっている。アシドは寸分の迷いなく答えた。


「森だろ」








 森の中は一段と冷えた。日射がない分、気温が下がるのだろう。理屈が分かったところで、どうにかできるものではない。


 血が沸騰するような暑さ、という表現が存在するならば、その逆である血が凍結するような寒さもあるのではないだろうか。あるとするならばそれは、今のアレン達を襲う寒さのことをいうのだろう。今まで震えていなかったエンドローゼが震え始めた。


「寒っ。寒すぎて魔物も凍ってんじゃん」


 アシドが無理矢理雰囲気を明るくしようと冗談を言う。寒いという部分には賛同するが、まさか魔物が凍るわけ。


 アレンがチラと横に視線を送ると、本当に魔物が凍っていた。


「えっ!?」


 アレンがびっくりして後ろにあった木に後頭部をぶつける。その衝撃により、皆が同じ方向に視線を動かした。アレンの方ではなく、アシドの視線の先を見つめる。


「マジで魔物が凍ってんだけど」


「何の魔物?オルトロス?」


「そうみたいだな」


 コストイラ達がオルトロスの死体に近づく。死体が凍っており、周りの色が少し薄くなっている。囲っている氷が少しオレンジ色となっている。この氷が割れたらオレンジと黒の混じった煙が噴き出してくるだろう。


「石?」


 コストイラが氷に少し触れて、中をじっくりと見る。オルトロスは青い毛をしているはずだが、灰色をしているように見える。コストイラは灰色の毛の個体かと思ったが、どうやら違うらしい。石化している。何があったのか分からないが、石化している。


 この先に石化させてくる魔物がいるのだろう。コストイラが刀に手を伸ばす。7人の間に緊張感が走る。どこに魔物がいる?


 何かに気付いたレイドがバッと体の向きを変えた。黒い蛇の下半身に、女の上半身。女の上半身は緑色をしており、髪は紫色の蛇になっている。


 レイドが何か行動しようとした時、女の眼と蛇の眼が総てレイドに向く。それだけか、その眼の総てが光を放った。その瞬間、レイドが石に変わった。


 コストイラとシキも光と目を目撃したが、石に変わらなかった。きっと条件は目で見られていることだろう。


 コストイラとシキが爆発的な速度でゴルゴ―ンに肉薄した。

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