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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
20.シン・ジゴク
359/683

3.地獄の城

 寒い。実際寒い。


 雪が降ってきたことでさらに一段と寒くなった。


「ハフゥ」


 エンドローゼが両手に息を吐きかけて揉みこんだ。ズズと鼻を啜る。


「どっかで天気が良くなるのを待ちましょう」


「それがいい。どこか休める場所はないか?」


 アストロが自信の肩を抱きながら舌打ちした。レイドは腕を擦って周りを見渡す。コストイラは白い息を吐きながら振り返る。


「そうだな。オレ達も結構歩いてきたからな。どっかで休もう」


「見つかったらな。この雪山に建物なんかあんのかよ」


「あるとしたら雪山探索者用のペンションくらいだろうな」


 コストイラがアストロ、レイドの提案を受け入れるが、アシドが気温と同じくらい冷めたことを言った。実は山に数か月住んだことのあるレイドが予測を立てる。


 シキが樹霜の咲く樹木を軽やかに登っていく。女子に対する評価ではないかもしれないが、きっと猿よりも早く登っていった。一瞬にして頂上まで辿り着くと、360度確認する。シキはすぐに手を離し、10mを落下する。着地に一切のブレがない。体幹がかなり強いのだろう。


 シキが指である一方向を指した。


「城があった」


「城?いいねェ。分かりやすい目印だ。行こう!」


 コストイラが一番テンションをあげた。そしてコストイラはシキが指さした丘に向かって歩き出した。吹雪が始まっているので早めに城に着きたい。コストイラが早歩きで丘を登る。


 コストイラが先に丘の上からその先を見る。コストイラが来るようにハンドジェスチャーを送ってくる。エンドローゼが肺を痛めながら丘を登り、アレンは体を冷やしながら歩いた。寒いはずなのに汗が噴き出てくる。


 アレンが丘の上に着くと、木に手を当てて、眼下の光景を見る。石造りの城があった。始まりの郷でもよく見かけることができるタイプの城だ。寒さが中にも貫いていそうだ。


 その石造りの城が氷に包まれていた。日が出ていないので暗い印象を受ける。もし出ていたらキラキラと光を反射しているだろう。氷に包まれているせいでどこから入ればいいのか分からない。近づけば分かるのだろうか。


 アレンが一歩踏み出す。足元が予想以上に沈んだ。雪が深くなっており、アレンの肝が冷えた。そのままゴロゴロと転がり、下にあった木にぶつかった。その木に積もっていた雪が降ってアレンを隠した。


「あっちゃ~」


「いったそ~」


「だ、だ、大丈ブッ!?」


「あっ!?」


 コストイラとアシドが額を手で覆ってアレンに呆れた。もしかしたらエンドローゼよりも…………。いや、止めておこう。


 エンドローゼがアレンを助けようと一歩踏み出すと、淡紫色の少女もゴロゴロと転がった。アストロが思わず声を出して手を伸ばすが届かず、エンドローゼはアレンを隠した雪に突っ込んだ。


 レイドが踵で滑りながら丘を下りる。少女の足を掴んで頭を抜く。エンドローゼが犬のように頭を振って雪を落とす。アシドが雪の中に腕を突っ込んでアレンを探す。


「あれ?」


 全然見つからない。アシドの眉間に皺が刻まれる。


 約1分後。ようやくアレンの脚を掴むことに成功した。アシドが一気に引き抜く。アシドに逆さ吊りされた状態で、更に白目を剥いている。アレンは気絶したようだ。アシドが丁寧に雪に横たえて、頬を叩く。


「アシド、雪の上じゃ寒いだろう。城に行こう」


「よし」


 エンドローゼを背負ったレイドがアシドの肩を叩く。アシドは失神した状態のアレンを背負い、レイドの後を追って城に向かう。コストイラがゆっくりと扉を開ける。中を窺いながらそろりと中に入っていく。


 中は暗い。明かりが点いていないので当然である。コストイラは目に頼らない。アイケルスと過ごしていたコストイラは、目では戦えなかったので気配で戦うようになったのだ。


 何も感じない。誰もいないわけではない。感覚的に生きているのは3体か。死体は結構ありそうだ。戦いになりそうだな、出会ったら。


 エンドローゼが欠けている状態で戦うのはきついだろう。コストイラは火を点けずに、仲間を中に呼び寄せる。アシドがアレンを、レイドがエンドローゼを壁に凭れさせる。


「何で火を点けないの?」


「敵が多い。エンドローゼの回復が欲しい、ね」


「アレンは?」


「アレンは、まぁ、うん」


 コストイラは目を逸らした。








 金のランプがカタンと動いた。注ぎ口からモワモワと煙が出てくる。白灰色の煙は徐々に女の形を取り始めた。端整な顔立ちに纏まり、髪は一房に纏め上げられ、後ろに流れていく。


 美しい睫毛が流暢に開き、オレンジと水色の2色からなる瞳が世界を観測する。美しい口が静かに開かれた。


『一酸化炭素。そう。それがあれば免許なんかなくても、回復魔法がなくても可能。そう。そうね』


 煙の浮遊体が静かに腕が伸ばされ、一酸化炭素が入った瓶を取り出す。


『ネチャリャンドゥ』


『はい』


 向かいの席にいる者に話しかけるほどの声で人を呼ぶ。氷の女王が白灰色の煙の女の元まで歩く。


『試させて?』


『はい』

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