表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
18.最果ての孤島
338/683

14.古代遺跡の謎を追え!?

 落ちた穴の先には、柔らかい砂が坂を作っていた。そこに顔を突っ込んだかと思うと、坂に沿ってゴロゴロと転げていった。顔全体に砂が塗されて気持ち悪い。


 顔を何度も手で拭いながら、顔を振って立ち上がる。以前、ピラミッドに侵入した時を思い出す。あの時は魔物も落ちてきたが、今回は大丈夫なようだ。それなりに考える頭があるらしい。


「ぺっぺっ」


 必死に口の中の砂を吐き出すが、じゃりじゃりした感触が消えない。


「皆さん、大丈夫ですか?」


「大丈夫だ」


「こっちは平気よ」


「今回ははぐれねェし、埋まってもねェたァ優秀だな」


「あの時埋まったのはお前だろ」


 アレンの確認に、まずレイドが反応し、アストロは女子3人を纏めて返事する。コストイラが軽快に笑うと、アシドがツッコミを入れた。


「さて、あの時同様、この空間に出入り口は一つ。そして何かが来るのも一緒」


 コストイラが自信の腰に佩かれた刀に手をやる。シキももうすでにナイフを抜いていた。気付いていなかったアレンは咄嗟に魔眼を発動させる。


 出入り口の壁に手が置かれる。恋人の肩に置く手のような、ふわりと優しい手の置き方。


 しかし、手で掴んだ瞬間、ゴシャリと壁を握り潰した。マズイ。魔眼で見たせいで興奮状態に陥ったか?


「ミノタウロスか」


 鼻息を荒くしている相手に、コストイラが唇を舐める。


 まず動いたのはミノタウロス。


『ブモォオオオオオ!!』


 開戦を宣言するように大きく啼いた。エンドローゼは大声にビビってシキに抱き着いた。戦いに参加しようとしていたシキはグイーと頭を押すが、離れない。これ以上力を入れてはポキッと逝ってしまいそうなので、自然と離れるのを待つことにした。


 次に動いたのはアシドだった。最近できるようになった初速で最高速で、その上鉄さえ貫く突き。しかし、完成したばかりの組み合わせ技は、アシドの制御の範囲外にいる。


 腹に風穴を開けようとした槍の先端は僅かに逸れており、その差はどんどんと開いていく。最終的にアシドが辿り着いたのは、ミノタウロスの脇腹だった。ミノタウロスの脇腹が爆発した。胴回りの5分の1が消し飛び、中に納められていた贓物は空中へと弾け飛んだ。


 ミノタウロスは止まらない。持っていた血の固まった大剣を大きく振るった。普段であれば躱せたであろう一撃だが、今のアシドは技を放った後だ、すぐには躱せない。


 必死に槍を引き戻し、長い柄の先端で何とか防ぐ。しかし、そのまま止まることなく、圧倒的な膂力で持ち上げられ、天井に吹き飛ばされる。


 コストイラはレイドに合図を送り、ミノタウロスと相対する。コストイラから漏れ出る精錬された殺気に、ミノタウロスは一瞬にして敵と認識した。


 アシドにはだいぶ劣るが、ミノタウロスからしたら十分に速いスピードに肉薄し、刀を振るった。ミノタウロスの硬い腹筋が斬れる。内部が覗ける方の腹筋から斬ったからだろう。


 アシドの二の舞にならないよう、刀をすぐに胸元まで戻し、ミノタウロスの行動を観察する。ミノタウロスは大剣を振ろうと腕に力を込めていた。コストイラは余裕をもって回避しようとする。


『ブン!』


 しかし、力を込めていたのは腕だけではなかった。足に込められてた力は地面へと伝播し、コストイラの足元を爆ぜさせた。一切の傷がつくような攻撃ではない。しかし、僅かに足元が浮き、回避行動に移ることができなくなった。


 刀で何とかガードするが、アシドの二の舞となる。コストイラは人工的な壁を突き破り、その向こうに消えていった。


 レイドとエンドローゼはコストイラが対峙した時点でアシドの元に向かっている。アレンとアストロはコストイラの元へと向かおうとしている。アストロがシキの肩に手を置いた。


「頼んだわよ」


 それだけでシキには頑張る理由になった。








「イテテ」


 瓦礫から体を起こし、後頭部を擦る。まさか、あのタイミングで地面を隆起させるとは。あのミノタウロス闘い慣れていやがる。


 コストイラは楽しそうに唇を舐める。


 強くなりたければ、自分に嘘を吐き、体を動かせ。


 母に言われた言葉だ。こんなところで立ち止まっているわけにはいかない。体を動かせ。心を燃やせ。命を焼べろ。


「ぜってー美味しく頂いてやる」


 今晩の飯を筋肉質な牛肉にしてやろうと立ち上がり、ふと後ろを見た。


 そもそも触れてこなかったが、なぜここに人工的な史跡があるのだろうか。帝国歴何年の遺跡だろうか。歴前だとすれば歴史的大発見だ。


「これ、石像だよな」


 今、コストイラの目の前にはこの遺跡に取り残された石像があった。石というか、鉄というか。何というか、ボルトとかいう歴史的遺物が使われている。昔博物館で見た事がある。


 コストイラは嫌な予感がした。石像だろうが鉄像だろうが安心できないのを知っていた。動く像を知っているからだ。


 耐えきれず、口にしてしまう。


「ゴーレム?」


 その瞬間、ビカーと鉄像の眼の部分が光った。間違いない、これは動きだしている。


「コストイラ、アンタ」


 コストイラが作った穴から呆れた声が聞こえてきた。


「いや、これオレか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ