表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
18.最果ての孤島
327/683

3.孤島の樹海

 魔力の矢に気を取られている隙にコストイラ達が肉薄する。


 コストイラがハイオーガのふくらはぎを斬りつける。1本の線ができるが、切断には至らない。手応え的にも腱すら知れていないだろう。


 アシドが槍を刺そうとするが、脛には穂先1㎝すら入っていなかった。え、いや、硬すぎない?


 サイクロプスの二の舞を踏まないようにすぐに離脱する。目の前を拳が通過する。巻き込まれた風に煽られて飛ばされる。手をついて何回かバク転して止まる。


 ナックルウォークのような四つ足で駆け出す。そこで力一杯に背を反らして跳び上がった。着地点にいるアストロ達が散り散りになった。ハンマーのように振り下ろされた拳が大きく地面を割る。アレンたちはギョッとした。崩落の危険性について考えたのだ。


 そのようなことを考える知性すらないハイオーガは無造作に拳を振るう。アストロが炎を浴びせるが、ハイオーガの肌が焦げるだけで焼かれない。単純なハイオーガは攻撃されたらやり返す。ゆえに次はアストロを狙った。


 間にレイドが割り込み、楯で受け流そうとする。しかし、ハイオーガの打撃は受け流せるほどの威力ではなかった。レイドの体は浮き上がり、きりもみ回転しながら壁に激突する。しかし、レイドは威力を半分も往なすことに成功していた。だからこそ子鹿のようにプルプルしながらも立ち上がれた。


 目がゴロゴロしている。目玉が飛び出してしまいそうだ。心臓の鼓動がうるさい。全身の血液も沸騰しそうだ。鼻血がビチャビチャと落ちているが、落としている感覚がない。


『オオオオオッ!!』


 立ち上がったレイドを明確な敵を認め、ハイオーガは全力を賭して潰しにかかる。大きく振りかぶったハイオーガに足が竦みそうになるが、止まっていては風前の灯火。レイドは全力で前に出た。


 拳はレイドの頭上を通り、壁を思い切りブッ叩いた。壁は大きく罅割れ、洞窟内が揺れた。股下を通るレイドは大剣で傷付けるが、足機能に支障がない。


 手に返ってくる感覚が、頑張れば切れる岩石のようだ。拳の近くでアストロが腰を抜かしそうになる。ハイオーガがギョロリと視線を向けるが、すぐにアストロの姿が消えた。


 最高速のアシドが回収したのだ。それを見届けたコストイラが足に無数の斬撃を浴びせる。ほとんど深くまで傷がつかない。


 ハイオーガが鬱陶しそうに腕を振るう。コストイラは跳躍して、ハイオーガの腕を飛び越える。風で巻き上げられて、壁面に掴まる。ハイオーガの動きが止まった時、シキが動いた。上空から落ちて、ハイオーガの腕を切り裂いた。ハイオーガの前腕の腱が斬られ、もう動かなくなる。


 コストイラは嫉妬した。自分の切れないものをいともたやすく切ってみせるなんて。


 シキは直地をした直後に動きだす。今度は足を切られ、ハイオーガは膝を着いた。潰れた右目もかっ開き、シキを見極めようとする。銀の風が動いているのは分かるが、動きに追いつくことができない。


 捕まえようとして伸ばした腕に乗り、切りながら進む。あまりにも早すぎてハイオーガでは捕まえられない。シキはそのままハイオーガの首裏に回って、項を削いだ。神経を傷付けられたハイオーガは俯せに倒れた。








「レベル上げどころじゃなかったですね」


「あんな強いとは思わなかった。鍛え上げた筋肉とはあそこまでの硬度になるものなのだな」


 レイドが力こぶをつくり、自身で触っている。


「おい、出口だ」


 コストイラが指さす先に光が見えた。光さす方に走ると、ある程度の傾斜がついており、余計に体力を使ったことを後悔する。


 外に出ると強い日差しに目を傷める。むわと湿度を持った風が吹く。先ほどまでの過ごしやすい環境と違い、ジメジメしていて汗ばんでくる。


 風の中に潮の匂いを嗅ぎ取った。アシドは一瞬にして海が恋しくなった。彼岸の海はヘドロであって海なんかでは決してなかった。フレストレーションの溜まっているアシドは海を求めた。


「海行こう!」


「どこよ、海」


「スンスン。この感じ。あっちだ!!」


 アシドを先頭にして、勇者一行は海を目指した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ