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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
17.彼岸
319/683

22.粘着質な湿地

 扉の向こうで世界が変わった。アレン達がいるのは彼岸で間違いない。景色も森の部分や崖の部分は鏡合わせかと思えるほど同じだ。しかし、他が違った。


 まず、森が粘液塗れだ。正直この森の中に入るのは嫌だ。どうせ強敵がいて、またコストイラがぬるぬるになるのだろう?分かるんだよ、そんなことぐらい。


 次に、森奥部が発行している。まるでチョウチンアンコウの疑似餌のようにこちらを誘っている。これに引っかかる奴なんて、と言いたいところだが、アレンは気になってしょうがない。


「絶対この先になんかある。じゃなきゃ門で区切ったりしないだろ」


「その通りね」


 口には出さずとも、コストイラの意見に同意した。門などという人工的な物が自然豊かなこの地にあるはずがない。


 先に出会った太陽信者達が扉を取り付けたのかもしれない。その場合は今から向かおうとしている方に、隔離した何かがあるということ。凶悪な魔物か、絶望的な自然現象か、何かは分からないが、何かがあったのだ。


 今から向かう先にいる何かが、太陽信者との間に壁を隔てたのか。どちらにしろ、向こう側には何かある。


 それにコストイラが目を輝かせている。アレンの発言力はかなり低い。このままでは危険地帯に挑むことになるが、止める手立てがない。


 エンドローゼは相手を立てるために意見しない。回復以外の場面ではほとんど意見しない。


 アストロは行く気満々だ。説得は不可能だろう。


 コストイラとアシドも行く気満々だ。もう手首や足首のストレッチをしている。


 レイドは説得を諦めている。もうすでに思考を、言ってもどうすれば怪我しないかしか考えていない。


 シキは無関心だ。行くか行かないかという次元の話ではない。今から何するの?という状態だ。


「分かりました。行きましょう」


 明らかにトーンが落ちているが、誰も何もしない。アレンが考えていることなんて単純明快なので皆分かっている。そしてそれが叶わないことなんて分かっているので、無駄なフォローもしないのだ。


 そのことをアレンも分かっているのがツラい。


 森に足を踏み入れると、靴の裏が取られてしまいそうになり、転びそうになってしまう。転ぶのを予想できていたコストイラは、歩幅を調整していた。案外こういうところは器用である。


 グチャグチャと粘液を踏み潰す音が聞こえた。明らかにこちらに何かが来ているが、隠れる気が微塵もない。出てきた瞬間に切るつもりだ。


 ぬるりと音もなくブラックドラゴンが現れた。粘液にすべての音が吸収されたようだ。


 凡庸なアレンは、目と耳で敵を判断しようとした。目で見えない角度から、耳に届かない大きさの音を出した現れた。


 気付いたとき、アレンは驚いた。嘘、いつの間に、などと思っていると、すでにコストイラの刀がブラックドラゴンの首に当たっていた


 コストイラはアレンと同じ方向を見ていたはずなのに、どうしてそこまで早く反応できたのか。成長が著しく、アレンは置いてけぼりだ。


 粘液で刀が滑りそうになるが、力でねじ込んでいく。刀は首の鱗を砕き、切り落とした。








『ヤア、アァ』


『どうされましたか?』


 8枚の翅を持つ蝶のような魔物が天を仰ぎ、涙を流している。脚のない蝶の魔物が心配して話しかける。


『我々の領地に異分子が入り込みました』


『何と!?排除してまいりましょうか?』


『いえ、あそこにはゼラチナスキューブがいます。様子見しましょう』


『そうですね』


 八枚翅の魔物が空を見つめて、もともと細い目がさらに細まり、空の向こうを見続けた。

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