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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
17.彼岸
311/683

14.重罪人が逝く強深瀬

 川上から巌石が流れてくるなど完全に予想外だ。


 木に乗る時に下ろされていたエンドローゼが、必死に木にしがみつく。レイドやアストロが腰を落とし、何とか耐えようとする。アレンはすでにバランスを崩しており、腕をバタバタと動かして耐えようとしている。


 ドゴンと巌石がぶつかった。衝撃で体が浮く。脆くなっていたのか、巌石が砕けた。


 アレンは河に落っこちた。川の中に入った時、見たくなかった光景を見た。川底に地面が見えないほどに蛇が埋め尽くされていた。蛇はこっちを睨みつけているが、襲ってこない。この位置は縄張りではないらしい。


 川上からはまた巌石が流れてきた。このままでは潰されかねないので何とか木の上に乗ろうとする。バシャンと数m級の波ができる。コストイラ達が木を倒したようだ。シキはアストロの腕を取り、新しい木に乗り移させる。


 続いてシキがエンドローゼの腕を取った時、クジラの魔物が辿り着いてしまった。レイドが2人を纏めて抱きかかえ、コストイラ達が切り倒した木に向けて投げ飛ばした。


「ぴぇええええええ!?」


 空中散歩することになったエンドローゼが悲鳴を漏らす。シキは上手く空中で体勢を変え、木の上に着地する。バランスが崩れる前に即座に跳躍して岸までエンドローゼを投げた。エンドローゼは空中でバタつかせていた手が偶々アシドの側頭部に当たった。


「あ、あ、あ、ごめんなさい」


「構わんよ」


 シキが踏み切ったことで木が少し動いたので、アストロがバランスを崩して落ちそうになる。着地したシキが手を取り、落ちないようにした。


 レイドはネイビーブルーの突進を受け、河の中に飛び込む。レイドはアレンを抱え、バタ足をする。ネイビーブルーがバキリと木を噛み砕く。巌石がネイビーブルーの鼻頭にぶつかる。


 ネイビーブルーは鼻頭を少し曲げながら、河の中に沈んでいく。その衝撃で起きた波に攫われ、レイドとアレンが川上の方に流されそうになるが、川上からの流れもあり、その場に留まる。


 シキが自分から水の中に入っていく。アストロはすでに岸に辿り着いている。シキがナイフを抜き、魔力を込める。シキは水中だというのに上手く手足を動かし、その場に留まる。レイドもアレンも羨ましそうに見ている。


 シキはそんな視線に目もくれず、身を捻ってナイフを振るう。水中でできた斬撃は見事に形を作り、ネイビーブルーの鰭に当たる。ザックリと大きな切れ込みが入り、片方の鰭が機能しなくなる。


 水中でのバランスが取れなくなったクジラは川底に沈んでいく。そこでシキも大量の蛇を見た。シキは一切の表情を変えず、それでもいつもより早く浮上していった。


「おぉ、上がってきた」


 コストイラがいっそ間抜けた声で言った。死にかけたアレンは少しイラッとしたが、仲間の不和に繋がりそうなので、止めておく。


「ほれ、今のうちに上がれ。水中じゃ戦いづらいだろ」


 コストイラが手を差し出してくる。シキは助走なく、コストイラを超えるほどの高さまで飛び上がった。レイドは己の長身を活かし、岸に手をかけて、腕力だけで上がっていった。


 アレンはどうしようかと考えたが、そこで巌石が流れてきた。川の水を分けるように流れてくる巌石が、アレンの後ろを通り過ぎた。押し上げられた水に乗っかり、岸に上がった。


 コストイラは手を差し出した状態で固まっている。


「あ、えっと」


「放っておきましょ」


 アレンが何か言おうとすると、アストロが肩を叩いて冷酷なことを言ってきた。


「惨め!」


 コストイラが差し出していた手で額を叩き、大いに笑った。








 パチリと松明の火が跳ねた。


 水色の触手を動かし、何かを探り始める影があった。8枚の翅を持つ蝶が尾をくねらせて上を見た。美しい空の中に少し黒い雲があった。


『どうかされましたか?』


 足のない蝶が聞いてくる。8枚翅の蝶が複眼の中のいくつかの目を向けた。


『空が荒れています。ほら』


『本当だ』


 8枚翅の蝶に促されるままに空へと視線を向けると、美しい空の中に黒い雲を見た。足のない蝶が不安げな顔をする。


『異分子が、この彼岸に来たのですね』


 パチリと松明の火が跳ねた。

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