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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
2.癒の郷
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3.治癒院への入り口

 きっかけはダークトレントの叫びだった。


 すでに日の出が近づいている時間帯になっていたので、もうこのまま街まで向かうことにしたアレン達は歩き始めた。


「ふぉあ、寝み」


 コストイラが欠伸をする。アストロも目を擦り、涙を拭う。アシドは漁師の家系で朝が早かったのだが、それでも眠そうに欠伸を噛み殺している。その他も眠そうな反応を示す。エンドローゼだけは朝に強いようでしゃっきりしている。


 アレン達の後ろにキノコがいた。赤と白のどう見ても明らかすぎる毒キノコだ。


「朝の気付けには無理だな」


「つか、こんなところにキノコなんてあったか?」


 アシドは最近まともに食べていない腹を押さえ、コストイラは素直に疑問を呟いた。


「暗くて気付かなかったんじゃないの?」


「それもそうか??」


 アストロが素っ気なく答えると、コストイラは頭を掻いて首を捻る。言われてみれば確かにそうかもしれない。


「ま、気にしても仕方ねェか」


「どうしました?」


「何でもねェ」


 コストイラはすっかり忘れてしまおうと前に進む。しかし、赤と白のコントラストはインパクトが大きく、簡単には忘れることができない。そういう色合いなので仕方がない。




「あ?さっきのキノコじゃね?」


「同じ種なんでしょ。オンリーワンな種なんてなかなかないし」


「それもそっか」




「あ?またか」


「群生地なんじゃない?キノコなんだしそればっか生えてる場所だってあるでしょ」


「確かに。お前の言う通りだわ」




「ん?また」


「よく生えてるのね。ていうかあなたも良く見つけるわね」


「それ褒めてる?」




「まただぜ。何かよく目にすんなァ」


「意識してるからじゃない?人は意識するとそればっかり注目するようになるらしいわよ」


「へぇ」


「どうしたんですか?」


 コストイラとアストロの会話にアレンが入り込む。


「いや、あのキノコなんだけどよ、なんかずっと見えんだよな」


「蕩虫禍草?」


 コストイラの指す先のキノコを目にする。アレンは自身の眼に魔力を込め、見える名前を呟いた。そこからの反応は劇的だった。


「ふぁ!?オメッ!あれが蕩虫禍草かよ!図鑑で見たものとは何か違ェんだけど!?」


「ええ!?私ももうちょっと、なんていうか、こう、虫っぽい部分があった気がするわ。あれ?習ったことと違う」


 稀にも見れない慌てぶりだ。


「そんなに危ないやつなんですか?」


 相手の出方を窺いつつ、アレンの質問に答える。


「ええ、無知なあなたに教えてあげるわ。蕩虫禍草は毒キノコであり、その毒は散布されるのよ。その威力は小動物なんてイチコロよ」


 聞いたアレンは背筋がブルリと震えた。


「毒を出す前に燃やすぞ!」


「やれ!」


 蕩虫禍草は自ら動くことなく、ただただそこに存在している。動かない相手などコストイラの敵ではない。蕩虫禍草は少し胞子を出し始める。


 森林火災の恐れを一切考慮せず、遠慮なく燃やす。炎が立ち上り、毒と共に燃えていく。


「終わったし、もう行くわよ」


「うぃ」


 アストロの言葉にコストイラが親指を立てる。


「ところで」


 アストロはアレンの顔を見る。


「?」


「顔、凄いことになってるわよ」


 半笑いで言われた。コストイラも我慢している。え?僕の顔どうなってんの?


 今、自分の顔を見る手段がない。どうなってるんだろう。見る手段があっても見る勇気があるかといわれれば、分からない。








「おぉ、街だ」


 遠目に街の入り口の門が見える。あともう少しで街に着くと思うと、心が弾む。割と体力がきつい状況だが、頑張れそうだ。


「おや、冒険者かね」


 街道沿いに白髪の男が立っていた。剣を持っているところを見るとこの男も冒険者だろうか。それとも騎士か?鎧を着ていないし騎士ではないかもしれない。


「そうです」


「この先にある治癒院は冒険者御用達の回復どころの街だ。君達も怪我をしたのかね?いや、そういうわけではなさそうだな。別の目的かな?」


 男は片眼を閉じて、目的を見極め始める。


「ただの経験値稼ぎですよ」


 嘘ではない。嘘ではないが本当のことではない。旅の目的など人に話すようなことでもない。


 アレンが答えると、コストイラが前にでる。


「オレはコストイラって言うんだ。アンタは?」


「おっと。名乗るのを忘れていたな。私はヲルクィトゥ。未知を求め、探求し、旅をする冒険者だ。私はもう少しここに残る。もし、君達がもっと未知を求めるのであれば、私のとの再会は早いことだろう」








「えっと、アンタ大丈夫か?」


 街に入る際、門番に心配された。話しかけてきた門番の後ろにいた人々は笑いを堪えている。


「僕の顔はどうなっているんですか?」


「私の口からは説明しにくいな。自分の目で確かめると良い」


 通してはくれたが、気になってしまう。本当に僕の顔はどうなっているのだろう。


「僕の顔はどうなっているんですか?」


「昨日は顔を洗えなかっただろう?倒れたときの泥が顔についてんだよ」


「え?」


「言うなよ。面白かったのに」


 コストイラ達はわざと言わなかったようだ。どういう風についているのだろう。

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