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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
12.世界樹
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1.端の森

 河童の里を出発する際、世界樹のある方角を教えてもらった。東にまっすぐ進めばいいらしい。途中には古代の遺跡があるらしい。なんか面倒事の臭いがするが、遺跡と聞いてコストイラとアシドが目を輝かせていた。きっと寄ることになるだろう。


「世界樹か」


 コストイラが少し上を向き、考えるような姿勢を見せる。何か心当たりがあるのだろうか。


「知らんなァ」


 知らないんかいとアレンが心の中でツッコミを入れる。


「誰か知っている人いるか?」


「えっと、え、せ、せ、世界樹は天を、そ、そ、空を支えている巨大なじゅ―樹木です。そ、そ、その根はめ、めい、め、冥界に通じているとき、聞いたことがあります」


 回答がアストロから来ると思っていたコストイラは、エンドローゼから来たことに驚いた。


「あら、エンドローゼも知っているのね」


「こ、こ、子供の頃に、よ、読んだことがあったんです」


 そういえば、皆が15年以上生きているのに、誰の過去も知らない。8年の付き合いのあるコストイラ、アシド、アストロも互いのことを出会う前は一切知らない。誰も触れようともしていない。繊細なものでもかかわるかのように、扱わない。


「天を支えるってこったぁ、天まで届いてるってことだろ?こっから見えてもおかしくないんじゃね?」


 コストイラの疑問ももっともだ。それについてはどう説明されているのだろう。皆の視線がエンドローゼに向く。


「え、あ、え、えっと、えっと」


 急に視線が集まり、慣れないエンドローゼは慌ててしまう。


「何も書いてないわ。遠くから見た描写は載ってないわよ」


「じゃ、オマエでも分かんねェんだな」


「お前って言うな。まぁ、案外魔力か何かで光が屈折して、見えないようになっているのかもしれないわね」


「もっと見てみたくなったわ」


 コストイラがわくわくした足取りで歩く。


「つか、無視しちゃったけど、根っこは冥界につながってんの?」


 コストイラは想像できず、首を傾げてしまう。アレンも分かっていない。根がトンネルのようになっているのだろうか。それとも、数千mの幹に対応して数百mの根っこがあるのだろうか。


「見えてきたぞ、森だ」


 東方の地域、妖怪の山の端の森に辿り着く。山にあった森の様子とは少し違うものとなっていた。山の森は生い茂る紅葉の樹木の森だったが、ここは緑々した森だ。木漏れ日の溢れている様子は幻想的に見えた。


「どんな魔物が出ると思う?」


 すでに魔物が出ることが前提になっているが、誰も突っ込まない。当たり前になっているからだ。


「明るめな森だからな、植物系、アルラウネだな」


「鳥系もね。シーグルかアックスビークかな」


「妖精も住んでいそうだな。フェアリーアーチャー」


 アシド、アストロ、レイドが思い思いに予想する。正直全部ありそうだ。


「答え合わせといこう。行くぜ」








 結論から言おう。


 魔物が出てこなかった。滅茶苦茶に身構え、意気揚々と臨んだにもかかわらず、出てこなかった。


 最初は、オルトロスのようにどこからか観察しているのだと思っていた。警戒を解かず、慎重に歩み、奥へと進んでいった。すると、どういうことだろう。森の奥の洞窟に辿り着いてしまったではないか。洞窟に入ったら後ろから奇襲のパターンへの警戒にシフトした。後ろからへの警戒を絶やさず、洞窟を見る。


 でかい。万年氷洞よりもでかい。高さは8mはあるのではないだろうか。人工的な洞窟ではないが、ここまで大きな洞窟ができるものなのか。


「どうする。また予想するか?」


「やめとこう。悲惨な結末が見える」


 コストイラが、そろーっと後ろを見る。魔物の気配はない。がっくりと肩を落とし、洞窟内に入っていく。


 結局、この森には魔物はいなかった。

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