表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
10.境目果て
181/683

8.白銀の霊峰

 アレン達がしているのは登山ではなく、トレッキングだ。同じ高さの山の麓を歩いていた。今は風が少し止んでいた。山頂側に小槍があり、それが風を遮ってくれていた。それも数mで終わってしまうので本当に短い間の無風状態だ。ほんの数秒だったとしても体力の温存ができるのはありがたい。


 ちらりとコストイラを見る。寒さへの苛立ちを抑え込もうとしているが、漏れだしているので今は話しかけない方がいいだろう。次いでエンドローゼを見る。今朝はすごく張り切っていたが、今は落ち込んでいる。また足を引っ張ってしまうと心配しているらしい。正直、その心配は今更な気もする。


 先頭を歩いているアシドが振り返る。


「どこまで歩きゃいい?」


「山を下るまでです。真っ直ぐ行ってください。お願いします」


 アシドは軽く頷くと歩き始めようとする。その時、風が吹いた。この場所はまだ小槍が風を防いでくれるはずだ。


 視線を小槍の方に移す。


 小槍には、足が生えていた。8mはある高さを惜しげもなく晒す小槍、もといジャイアントイエティは雄叫び上げた。小槍から発せられた大音量の声に当てられ、エンドローゼは尻餅をついてしまう。


 アシドは焦っていた。


 相手が強そう、だからではない。ジャイアントイエティの声が予想以上に大きかったからだ。この大きさはマズイ。


 ゴゴゴ、と山が揺れる。


 ほらきた。アシドは咄嗟にアストロを引き寄せ、胸に抱きとめる。レイドはエンドローゼを庇うように覆い被さる。アレンはシキを護り、コストイラは一人、心を燃やした。


 次の瞬間、勇者一行は雪崩に呑まれた。飲み込まれた勇者たちは簡単に運ばれた。仲間同士、散り散りにされながら。


 ジャイアントイエティは流されていない。この雪崩は8mの巨体を動かすには足らなかった。表層雪崩だ。ジャイアントイエティが動き出す。この巨体が動くたびに雪崩の危険性を孕んでいた。一歩一歩動くたびに雪が動く。


 その姿はまさに絶望。


 ジャイアントイエティは再び鳴いた。


 今度は雪崩が起きない。ランダムのようだが、鳴くたびに雪が緩み、雪崩が起きやすくなる。


 ジャイアントイエティは再び鳴く。どこか哀しみを含みながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ