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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
10.境目果て
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6.万年氷洞

 翌日。


 アレン達は洞窟の奥に進んでいく。洞窟の中には氷で作られた結晶があちらこちらに生えていた。


 寒い。氷の結晶が生えてくるぐらいには寒い。しかし、外よりはマシだ。風が吹いていないから。エンドローゼは張り切っていた。昨日は不甲斐無い姿を見せたから、とても元気だ。寝癖で作られたアホ毛を指摘されると、あわててコートのフードを被った。


 直すのではなく誤魔化したエンドローゼを、アストロはニヤニヤしている。コストイラとシキはアシドと同じ長袖カーディガンのスタイルになっている。コストイラは動きづらかったのか脱いだようで、寒さは我慢すると大見栄切った。コストイラなら根性で何とかしそうだ。シキは慣れたのか一言しか返さない。ポーカーフェイスすぎて真偽は不明だ。


 洞窟内は結構広い。横幅が約3m。高さが約5mはある。奥行きは曲がっているためか100m以上先は見えない。


 地図を見る限りでは、川の下を進んでいる。地図ができていて、売られているくらいなので、崩落の危険性はないのだろうと信じたい。


 この洞窟は地元の人の話ではその昔、スリースという男が開通したらしい。伝承によれば一人で。もの凄い技術と力の持ち主なのか、単に手伝ってくれる友人がいなかったのか。真相は定かではないが、結果得られた洞窟は重要な経路になっている。


 この上に流れる河は、寒期になると表層が凍り、渡れるようになる。暖期は河が凍らないので渡れない。通年で渡れるようになったこの洞窟はまさしく偉業だろう。


『………ォォ………』


 どこからか鳴き声が響いた。いや、どこからかなど決まっている。なぜなら、この洞窟は一本道なのだから。


「聞いたことねェ声だったよな」


「いや、ちょっと、分からない」


 コストイラが確認するように後ろを向くが、アストロにとっとと前向けと言わんばかりに一蹴された。コストイラが哀しそうな眼をするが、アストロはどこ吹く風で、知らぬ存ぜぬを通した。


 明らかにこの先に何かいる。分かっているが、この先にしか道がないので仕方なくとも進まなくてはならない。


 最初行き止まりかと思った。洞窟内、アレン達の見る道の先に、灰青色の壁があった。この壁は温度があり、温かさがありがたい。


「これ、魔物です」


 アレンが言うと、全員がさっさと移動する。流石の速さを褒めるべきか、慣れるほどの危険に身を晒したことを嘆き悲しむべきか。アレンが遠い目をすると、遠慮なしに触り続けていた尻尾が動いた。


 一番近くにいたコストイラが当たりそうになるが、すんでのところで躱す。誰にも当たらなかった尻尾は本物の壁に当たり、洞窟内を揺らす。


 パラパラと小石が落ちてきたり、砂埃が舞ったりしているが洞窟が崩落しないか心配になる。瓦礫だけならまだしも、水まで落ちてくれば、対処できない。


 ゆらりという効果音が似合いそうな動きで壁が首を擡げた。


 その壁はドラゴンだった。








「ドラゴンが道塞いでるなんて聞いてねェぞ」


 コストイラの怒りはもっともだが、今は話している場合ではない。今まで背を見せていたドラゴンは窮屈そうに体を折り、こちらを前にしようとするが、失敗する。このドラゴンの体長は目算6mはある。勢いをつければ反転できるかもしれないが、この空間では怪しい。ドラゴンは必死に後ろを向こうと首を動かしているが、顔全体をこちらに向けられないので、こちらの動きを把握するのが難しそうだ。


「あれ?これ、楽勝なのでは?」


 コストイラがポツと呟いた。その呟きは皆に届き、今一度ドラゴンを見る。ドラゴンはこちらを体ごと向けることができない。全体像の状態を一回で確認できない。口内からでも存在感を放つ牙はこちらに届かない。移動は後ろ向きに歩くことになるので速度低下。武器は尻尾だけ。しかもコストイラがさっき躱せていた。


 あれ?これ、楽勝なのでは?


「どのみちこいつを何とかしなきゃいけねェんだ。倒すか、追い払うか。違いはあんまねェだろ」


 コストイラが刀を抜きながら走り始める。ドラゴンのオレンジの瞳がギラリとコストイラを捉えた。尻尾がうねる。咄嗟に刀を当て、ガードするが体ごと持ちあがり、壁に叩きつけられる。コストイラの口から血霧が舞う。

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