表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
8.魔王インサーニアを討て
150/683

24.紫魂の塔

 淡い紫色の塔なのだが、という印象があまりない塔に辿り着いた。印象が薄くなる理由は明白だ。辺りには魔物の牙や爪に、剣から翼が6枚生えた紋章のようなものが彫られている。それが塔を中心に数百個も飾られているのだ。囲いがないのに、まるで囲いのようで結界のようでもあった。


「気味が悪いわね」


 アストロが紋章のようなものが刻まれた爪を摘まみ、まじまじと見ている。アレンも見ているが、見たことのない紋章だ。いや、見たことがある。癒院や要塞、魔王軍の兵士と戦った時、あの場所にもこの紋章を見た気がする。これは魔王軍の印なのか。細かい意匠が施されており、魔王軍の技術力の高さがうかがえる。


「美しい彫りこみだ。いくつか持って帰りたいな」


 レイドは創作意欲が刺激されたのか、紋章をなぞりながら見ている。


『コレノ良サガワカルノカ』


 皺嗄れた声がし、そちらを向くと、老いたゴブリンがいた。杖を持ち、ローブを着こんでいる風采容貌から、ゴブリンウィザードであることは確かだ。


『コノ良サガワカルノハ熟練ノ技術者カ宗教ニ精通シタ者ダ。オマエハドチラダ』


「…………」


 レイドは答えてもいいのか迷う。相手は魔物だ。下手に気持ちを激しく揺らし機嫌を悪くさせるのも悪手だ。


「…………技術者だ。熟練者ではないがな」


『フム、ソウカ。謙虚ナノハ良イコトダ。ダガ、今ノ世ハ自分ヲアピールデキナケレバ生キ残レナイノモマタ事実ダ。謙虚デアルト同時ニ傲慢デモアルベキダ』


 魔物に諭されてしまった。レイドは汗を垂らす。大丈夫だ。相手はまだ敵ではない。


『持ッテ行クト良イ。インサーニア様ノ加護ヲ得ルコトガ出来ヨウ。コレデ我々ハ仲間ダ』


 欲しいには欲しいが仲間になりたいわけではない。ここが限界なような気もしてくる。


『スグッ!?』


 首から刃が生える。シキはいつの間にかゴブリンウィザードの影に移動しており、暗殺していた。

 レイドやアストロ、シキまでもが爪や牙を懐にしまっていく。そんなに欲しかったのだろうか。自分も懐に入れるアレンは自身を棚に上げてそんなことを思っていた。


 シキの眉がピクリと動く。横の森から魔力の塊が出現する。シキは体を回転させ魔力の塊を切断する。直後爆発して、シキが吹き飛ばされる。


『カタカタカタ』


 森の中から5メートルはあろう身長のローブ姿の何かが出てきた。ローブに隠れていない所には白く骸骨のようなものが見えた。ローブは大きく、体全体が覆われており、手先は手袋、腕は袖で、頭はフードと垂れた幕のようなもので隠されている。魔物であることを隠しているような装いだ。魔物の首元には紋章の描かれた爪や牙を使ったネックレスがかかっている。


『カタカタカタカタ』


 ローブの隙間からスルルルルルとカードが宙を舞う。規則正しく並んだカードたちは2つの輪を描くように動き、×の字を描くように魔物の体を取り巻く。


 魔物は右手を突き出すと、それに合わせてカードが1枚右手の前に止まる。


『カタカタカタカタ』


 カードから紫色の霧が噴出され、吐き出し終わるとカードが消える。


 霧が絡みつくように手足に纏わりつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ