表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
7.旧地獄
120/683

1.地獄の旧道

 ヂドルという街はすぐだと聞いていた。実際に近くにあった。しかし、問題があった。


「地面割れてんだけど」


「跳ぶのは現実的じゃないし、渡れる場所を探しましょう」


 地割れしていたのだ。20メートルはある地割れ、横には100メートル以上はありそうだ。アレン達は崖に沿って歩き始める。


 ふと岩の上に人形が置いてあるのに気付いたエンドローゼは気にはなったが、皆に置いていかれたくなかったのでそれ以上見ていられなかったのでやめた。きっと誰かの忘れ物だろう。


 暫く歩くと先程と同じ人形を見つけた。エンドローゼは後ろの方を確認する。しかし、そんなに視力がいいわけではないエンドローゼにはさっきのところまで見えなかった。何となくないような感じもするが確信が持てない。


 きっと気のせいだろう。自分に言い聞かせて皆の後をついていく。


 暫くするとまた人形があった。


 ………これも気のせい。


 またまた人形。


 ………………いっぱい落ちてるなぁ。


 またまたまた人形。


 ………………………そんなに落として、もっと物は大事にしなくちゃだめだよ。うん。


 に、人形。また人形が落ちている。


 ………………………限界です。もう私も無理だよ。自分に嘘を吐き続けて騙すのも限界。完全にキャパをオーバーしている。


「あ、あの」


「うん?」


 エンドローゼがアストロの裾を摘まむ。エンドローゼはアストロを頼ることにした。


「あ、あ、あの、に、人形なんですけど」


「人形?あぁあれね」


「ず、ず、ずっと追ってきている気がして」


「………」


 アストロからの返答がない。信じてもらえなかったか。そりゃそうだ。唐突な話だからな。信じてもらえなくても当然。


「ふっ」


 アストロは一切の躊躇逡巡もなく魔術を放つ。少しの間は単純に魔力を溜めていただけだ。


『~~~~~~~!!』


 叫んだ。確かに何かを叫んだ。


 それを掻き消す轟音にアレン達は肩をびくりと震わせる。


「何何何っ!!?」


「どうした!?」


「~ッ!?」


 思い思いの反応を示すが、アストロは髪を掻き上げるのみ。説明は一切しない。人形は灰になっていた。








「お、ロッド」


「ん?あぁカレトワか」


 眼の下に隈を作るロッドは欠伸を一つする。意識は半分が旅立っており、船を漕いでいる。しかし、魔王軍の幹部という立場からか、誰も指摘できないだろう。


「パンタレストさんから何か聞かれた?」


「あぁっ!あれアンタか」


 納得したように声を出すロッドは眠気を覚ますように冷水を喉に通す。


「眠ったら?」


 カレトワはロッドの前に置いてあったナッツを摘まむ。ぽりぽり。うん美味い。もう1粒。


「んあっ。別に食っていいぞ」


 ロッドに言われ、軽く感謝しつつ皿を自分の前に持ってくる。


「まぁ、確かに。ん、ふぁぁああ。眠るか」


 ロッドは大きく欠伸をして、伸びをする。そのまま目をシパシパさせ椅子から立った。もう一度大きく欠伸して立ち去る。


 ロッドは体調管理が魔王軍幹部内でも1、2を争うほど完璧な方だ。夜更かしして何していたんだろう。ナニかな?


 カレトワは健康的な脚を組み替え、頬杖をつく。さすがにナッツだけでは腹が満たない。何か頼もうかな?ここ食堂だし。最近できた新しいメニューのハンバーグでも頼もうかな。


『ここにいたのか、カレトワ』


 声の方を向くと、パンタレストがいた。カレトワはナッツを食べる手を止めない。


「今度は何です?」


『この前の礼だ。ほれ、アップルパイ』


 それは特選アップルパイ10個だった。


「ふぉぉおおおおおっ!!」


 食堂内にいた魔王軍たちが一斉にこちらを向く。驚愕の表情をしているが気にしない。今は特選アップルパイの方が重要だ。


「何だ今の声は」


 近付いてきたのはコウガイだった。魔王軍の中でも顔を知っている者が少ないと言われているほどレアな存在だ。


「特選のアップルパイだよ。貰ったんだ」


「あれは美味いからな」


 食い気味に肯定してくる。こいつもこれが好きなのか。親近感が一気に湧いてきた。だが、やらんぞ。これは私のものだ。


「アップルパイはいくらでも食べられるからね」


『本当か、それは』


「美味いからな。しょうがない」


 いつの間にかサンドウィッチを持ってきたコウガイがまたしても肯定する。今度いつか一緒に世界のアップルパイ巡りでもするかい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ