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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
6.紅い館
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20.局所的な大寒波

 氷の精霊は恐怖していた。1つのトラウマがそうさせていた。アレン達が来る少し前に我が物顔でこの道を闊歩していた者たちを殺した者。姉と慕う者は出会ってはいけないと横道の奥に引っ込んでしまったのに、氷の精霊は好奇心に負けてしまった。その結果、殺しの瞬間を目撃することになり、その男とも目が合ってしまった。白髪の悪魔。いや、氷の精霊の印象ではそれでも優しすぎるか。


 向こうがどういう気持ちで自分を見たのかは知らない。しかし、こちらは少なくとも恐怖を植え付けられた。トラウマの時間が経つほど増大していく。だから時間を開けずに克服した方が良い。氷の精霊はあの白い男と似た赤い男を自分のトラウマに捧げることにした。








 コストイラは濃密な人生を送っていた。たかだか18年の人生だが、3人分の人生は送っていた。アシド、アストロと出会ったのが10歳の時。2人はそれ以前を知らないし、聞いてはいけないのだろうと思えるオーラを放っていた。その2人と出会う前の齢1桁のころ。コストイラは精霊と遭ったことがある。その時はもう妖精だったのかもしれない。しかし、コストイラの前では精霊だった。


 その感じがある。それは目の前の存在が精霊だったからだろう。その思い出があるからだろう。コストイラはこの男の子を殺したくなかった。








 コストイラは誰かの介入を許さなかった。誰かがこの子を殺してしまうかもしれない。だからコストイラは通路いっぱいに使って戦った。いつもどこかにあったコストイラの笑顔がない。真剣だ。アシドは槍で道を塞ぐ。アストロはアレンとエンドローゼの前に立ち、邪魔をさせない。


 コストイラは刀を収めた。氷の精霊は意図が読めず動きが止まる。コストイラはそのまま回し蹴りを繰り出し、精霊を蹴飛ばす。静かに燃える炎を前に精霊は立ち上がれない。しかし、氷の精霊はコストイラに恐怖とは別の何かを見ていた。何か温かい感情が芽生え始めた時、割って入る影があった。


「カチムッ!」


 呆気にとられるコストイラの腹を蹴飛ばし、精霊から距離を取らせる。威力は腹筋を貫き内臓に刺さる。良い蹴りだ。じゃなくて誰だこいつ。


「カチムッ、下がって!」


『お姉ちゃん!』


 姉?いやそんなはずはない。精霊には発生段階のことから考えると兄弟どころか家族ができることな絶対にない。存在するのは、精神的な家族しかいない。血の繋がりがあるよりも絆が深い可能性が高い。こいつが死んだら。


 姉が地面を踏むと氷のリングが作られる。退路が断たれた。まぁ最初から引く気がないが。その時、姉から冷気が漏れた。吐く息はさらに白く、動きが鈍る。だが、これでいい。


「はぁあっ!」


 姉が殴りかかる。アシド達は手を出さない。なぜコストイラがそこまで意地を張るのか分からない。きっと出会う前にあった何かなのだろう。詳しくは聞かない。聞かれたくはなさそうだから。

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