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【完結済み】メグルユメ  作者: sugar
6.紅い館
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19.冷気が満ちる地下道

 指先の感覚がなくなっていく。防寒具のありがたみがしみじみと身に染みる。ないものねだりをしてしまう。防寒具が欲しい。


 そう発言するとコストイラに怒られた。あるものをねだってどうすんだよ、そんなやついねェだろ、と。確かにそうだ。ないものだからねだるのだ。そういうことを言ってしまうほど寒さにやられてしまっているらしい。エンドローゼのくしょみが止まっている。寒すぎて出ないらしい。


 そこでふと凍った何かが目に入った。


「凍ってる」


「死体だな」


 ぽつりと落とされた独り言にコストイラが返答する。それは発言通り死体だった。暖かそうなコートをしているが分厚い氷に阻まれ、身ぐるみを剥ぐことすらできない。1人だけ他の死体と違い、黒いバンダナをしている。この集団の隊長だろうか。


 無造作に放置された死体は切り傷があり、コストイラ曰く、綺麗で自分とは段違いで達人の領域ということらしい。アストロとエンドローゼは死んですぐに凍り始めたのだろうと予測した。


 この死体は地下道に蔓延する寒さの厳しさを教えてくれた。








 この地下道にはいくつかの横道が存在している。その全てが1本の道に通じていた。今、アレン達が歩いているのはその道だ。アレンは壁の岩肌に触れる。分かりやすい入口があったので抜け道というわけではあるまい。裏口?そうだとしてももう少し整備していてもいいはずだ。この道はどこに続いているのだろうか。


「何かめっちゃこっち見ている奴がいんぞ」


 言われて気付いた。前の方の横道から片目しか見えないぐらいに顔を出した男の子がいた。男の子といってもいいのか悩む。男の子っぽいと言えばそうだし女の子っぽいと言えばそうだ。顔半分しか見えていないが。壁を摑む指も成長期のきていない子供の指で、男女の区別がつかない。


 極めつけは身長だ。覗き込んでいるとはいえ、背が低い。それを考慮してもアレンの半分ほどしかない。アレンだって身長は高い方ではない。シキにだって負けている。


『お兄さんたちも敵ですか?』


 声も男女どっちともとれる。声変わりしていないのだろう。それよりも今、”も”と言った。先程の死体となっていた男たちのことだろうか。だとしたら、あの死体を作ったのはこの子だろうか。ふと、子供の視線が何かに固定されているのに気付いた。見ているのはコストイラ?


『………お兄さんたちも敵なんだね』


 少し悲しそうな怒気を孕んだ声音だった。子供は横道から体全体を出す。何を見て判断したのか分からないが敵だと認定されてしまった。決意・覚悟の眼。変えるのは困難だろう。


 この子供は男の子だった。


 男の子は1つの石を拾うとそれを投げつけてくる。石は氷に包まれていた。コストイラは居合でもって切り落とす。子はすでに跳んでおり、その足は氷に包まれていた。コストイラを蹴飛ばす。氷は砕け、蹴られた頬は裂けた。


 コストイラは倒れることなく踏ん張り、刀の柄で男の子の腹を殴る。頬の傷を淡い光が舐めた。

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