3つの願いと3つの能力(1)
『それは、夢でもあるがお前の記憶だ』
!?!?聞こえた。あの声だ。いや、気のせいか?気のせいかもしれん。
『気のせいではない』
気のせいじゃなかったーーー!いや、不思議な感覚だ。脳内妄想のようだ。耳というより頭で響くというか、なんというか・・。
『みくから聞いたと思うが、わたしが神である』
みさと?あぁ、福夢さんって未空って名前だったな・・。本当に神様だったんだ。
『鷲野夏、お前にやってもらいたいことがある』
やってもらいたいこと?
『あぁ、一つはこの世の悪魔を退治してもらうこと』
お、異世界っぽいじゃん?
『二つ目は神の子であるソフィアを取り戻すこと』
ソフィア・・どこかにとらわれているのかな・・?神の子でも出られない場所ってどこなんだろう・・
『最後は私の力を取り戻すことだ』
神様の力を?どういうこと?というか、俺、そんなチートな能力ないんですけど。
『そこは心配しなくていい。3つの願いに合わせて、3つの能力をお前に与える。
一つは神の目を。
一つは神の耳を。
一つは神の羽を。
これらは、今後聖務を果たす上で必ず役に立つ。』
神がそう言った途端、俺の視界がまばゆい金色に光った。まぶしい・・!目を一瞬つぶり、次に目を開けたとき世界がいつもと違って見えた。
例えば、色、いつも赤や青だと思っていた色が違って見えた。窓の外から見える電線に止まっているカラスも緑に見える。
『神の目は真実を見通す。例えば、虫の目から見えるこの世界と人間がみるこの世界は見え方が違うだろう?神の目もまた、”違う世界”で見えている』
なるほどね。じゃあ、耳は?
『神の耳はあらゆるもののコエを聴くことができる。ただし、神と繋がっているもののみだが』
福夢さんも似たようなことを言っていたな・・。つまり、福夢さんも神の耳を持っているということかな?
『神の耳は勝手に聴こえてくることもあるが、基本的には意識して聴く。例えば、お前に家の庭にいる飼い犬に意識を向けて話しかけてみろ』
なるほどね~。じゃあっと、、なんとなく愛犬『コノハ』をイメージしてみる。そうすると、単なる記憶の掘り起こしではなく今実際に見ているような感覚を覚えた。これが神の目の力なのかな、と感心する。そしてまだ、眠っているコノハに向かって声をかけてみた。
《おはよう、コノハ》
すると、コノハはパッと立ち上がって窓を見上げ、『おはよう!夏くん!』と話しかけてきた。
正直感動。お前、俺のこと”夏くん”って呼んでたの?てか、ペットと話すことができるなんてもう最高じゃん!人類の夢じゃね!?
んじゃ、次は母親に・・ヤベ学校!!今何時!?ってあれ?全然時間が経ってない。
『時間という概念もまた、一つではないのだよ』
そうなんだ。安心した。とりあえず、神の耳の能力で母親に今日の朝ご飯聞いてみるわ!
え~っと。一階にいる母親を意識して・・。お!いたいた。神の目凄いな~覗き放題・・いやいや罰当たりなことはやめよう、うん。
とりあえず、母親に
《今日の朝ご飯なに?》
・・・・・・
《今日の朝ご飯なに?》
・・・・
ぜんっ全然反応ないんですけど。犬専用の神の耳なのか?それとも俺のやり方が違う?
『いや、お前は合っている。さっきも言っただろう。神の耳は神と繋がっているものしか聴こえることはできない、と』
どういうことだ?つまり、俺の母親は神様と繋がってないってことなのか?
『まぁ、そういうことになるな』
なんでだよ。パートしながら家計も支えて普通に家事やってるどこにでもいる母親だぜ?だいたい、人は神の子だろ?
『人は神の子ではない』
・・・・・は?
『基本人は悪魔の子で、神の子とは動物や自然たちだ』
いやいやちょっとまてよ。じゃあ、俺はどうなる
『人の中には一部神の子の魂を宿したものがいる。お前もその一人だ』
じゃあ、なんだよ?悪魔を退治するって、俺はこの世界の人間を殺すのか?大量殺人犯になれって?冗談じゃない。お前、本当に神か?
『殺戮をしろというわけではない。この説明をするためにも最後の能力の”神の羽”を実践してもらう』
身体から羽が生えているような感覚で浮いてみろ、と言われて正直無理だと思った。
とんだこともないし、感覚が全然分からない。見かねた神様が僕の意識から”飛ばして”くれた。
「う、うわぁああああああ!」
こ、こわい!普通に、ってあれ、あそこにいるの俺じゃん!
『神の羽で飛ぶとき、身体は幽体となり、実態から抜け出した状態になる。念じた場所へ瞬時にどこにでも行くことができる。が、いつまでもそうしていると”戻れなく”なるが』
こわいこというなよ~
『さて、ここからある場所に行く。意識をわたしに預けなさい』
返事をする間もなく、意識を乗っ取られ、いつの間にか、俺は宇宙にいた。
「すげーーーーーーーー!」
男心をくすぐられる。正直、テンションがめちゃくちゃ上がった。地球は青かった!やっぱり!
『ここで神の目を使いなさい』
へ?神の目?
俺は神の目で地球を見た。すると、その地球は俺が知っている地球の姿ではなかった。
「なんだ・・あれ・・・・」
『あれは呪いだ。地球は3次元の目では見ることができない呪いで覆われている』
なんだよそれ、、、神様ならなんとかしてくれよ
『何千年も試みている。そのくらいあの呪いは強力なのだ。そして地球の奥深くに聖ソフィアは閉じ込められている。悪魔は聖ソフィアを悪に染め、手中に収めようとしているのだ。』
神様でできないことが俺にできるのかよ・・・
『あぁ、力を貸してほしい神の魂を持つ子らよ。実際地球上でなにかをなしえようとするためには、3次元まで能力を落とさねばならないのだ。しかし、あの呪いは3次元以上の力・・呪いの力をどうしても受けてしまう。だから、お前のような目覚めたものたちの力がどうしても必要なのだ』
そうか、わかったよ。この世界の勇者目指しながら、呪いを解き放ち本当の世界にしてみせるよ。
『ありがとう。夏』
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「遅刻するよー!いつまで寝てるの!!」
「うわぁあ!」
びっくりした・・。急に戻ってくんだな、コレ。起きて、5分か。半日くらい経った気がする。損したのか、得したのかわからんな。
いつもと違う日々がこうして始まった。