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えあののの短篇集

天井

作者: えあのの

 私は、ゴゴゴッという音で目を覚ました。


 気がつけばあたりは水浸しで、私はそのとても狭い空間に横たわっていた。  


 高さはおよそ30センチほどで、目と鼻の先がもう天井だ。床はどこまでもずっと続いている。


 まったく何が起こっているのかわからないが、どうやら私はピンチらしい。


 不思議とこれからどうしようだとか、逃げ出そうとかそういう気持ちにはならなかった。


 しばらく虚空を見つめていると目覚めた時と同じ音がする。


 天井が動きだした。


 ああ、このまま死ぬのか。私はそう悟った。


 すると、驚くことに天井はゆっくりと上昇し始めたのだ。


 最初のうちは上から針でも生えて再び落ちてくるのではないかと思ったが、一向にその様子はない。


 天井が2mほどまで上昇したので私は立ち上がった。


 気がつけば水浸しだった床はすっかり乾いており、さっきまで少し息苦しかったのが、まるで南アルプスの草原にいるかのように心地よい。


 天井が5mほどになったところで上昇は止まった。


 すると、ガタッという音を立てて、階段が降りてきた。


 よくわからないが、助かったのだろうか。


 私は、階段を登り上の階に到着する。


 そこには、山積みの金塊があった。


 その時私は思った。ああ、私は何かの試練を達成し、この金塊を得たのだと。


 私は、持てるだけの金塊を持ち外に繋がるだろう扉を開ける。


 私が扉に手をかけたころには、もう床はなかっただろう。


 私は、再びあの空間にいる。


 ゴゴゴっという音がした。


 私は非常に嫌な予感がした。


 そういう予感は案外当たるもので案の定天井は降下してきた。


 おまけに足元には少しずつ水が溜まってきている。


 今度こそおしまいだ。私はそう思った。


 私は横たわり覚悟を決めた。


 溜まり始めた水が冷たい。  


 私は、再び目を閉じ、意識はゆっくりと闇に溶けていった。




 私は、ゴゴゴッという音で目を覚ました。

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