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第二章 組織 2

 ハルモニア仙台の支配人室には、二人の男性の姿があった。一人は支配人の高橋圭一、もう一人は婚礼部の親会社「ウェディング・ワールド」の西川忠志、東日本統括本部長だ。アイスコーヒーを運んできた総務の女性社員に「やあ、どうもありがとう」とソファーの上で姿勢を正し、礼を言った。

 高橋は日本郵政が「ハルモニア」を創立する際に他のホテルチェーンから引き抜かれた男で、実際のところ、ブライダルの現場に詳しいわけではない。経営者として鎮座するタイプだ。その高橋に、西川が言う。

「人事、気を付けてくださいね。特定の女性を恣意的に異動させている、という話がこちらにも聞こえてきていますよ」

 時代が時代だ、妙な噂はすぐにネットの風に乗る。高橋の場合、ある「見た目の良い女性社員」との距離感の近さが、社内ではすっかり噂になっていた。レストラン部に所属し、決して評判が良いわけでもない彼女に新しい役職名が付くたび、社内の「温度」が少し下がる、というありさまだった。

「適切な配置を考えているつもりですがね。人の見方はいろいろありますから、気を付けます」

 釘を刺した西川はウェディング・ワールドの幹部で、次期社長とも目されている。はつらつとした雰囲気で、社内での評判も悪くない。

「この度『プレミアム』とうちで共同プロジェクトを張ることになりました」

 ウェディング・ワールドは、ホテルウェディング部門のハルモニアとは別に、ハウスウェディングを得意とする「プレミアム」グループを持っている。そのプレミアムとウェディング・ワールドが「ブルックリン・ハウス」という共同プロジェクトを立ち上げたのだ。「若いカップルに低コストで海外挙式を提供する」ための新規ブランドである。ブランド名の由来は「ニューヨークのブルックリンは、古いレンガの倉庫がリノベーションされおしゃれな古着屋やカフェになっている。結婚式場も、外見より中身に手をかけ自分たちの思うままに」ということらしい。

 このプロジェクトの責任者こそ、西川だ。成功させれば、社長への道は確かなものになるだろう。

 人材はウェディング・ワールドとプレミアムのほか、ハルモニアからも登用がある。その挨拶も兼ねて、西川は現在、全国のハルモニアを回っているところだった。

「仙台の婚礼部は去年、初めて契約数目標を達成しましたね。ありがとうございます。よく頑張ってくれています」

 契約数や販売数を競う業界では、普通、目標数値は高く設定されている。ハルモニアグループも同様で、仙台は年次目標を達成できたことがなかった。ところが、異様に数字を上げる女の活躍で、昨年初めて目標数に到達したのだった。

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