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第二章 組織 1

 ハルモニアは、ギリシャ語の表現で「調和」を表す。ギリシャ神話では調和を表す女神の名でもある。

 その名を取った「ハルモニア」グループは、日本郵政が土地・施設を保有し、運営はハルモニア株式会社へ委託されているホテル等の総称だ。 全国十二都市に展開している。国営事業だった郵便貯金に関連した施設として建設されたもので、郵政民営化に際してハルモニアが正式名称となった(ネット検索より)。


 二〇一八年七月、肥後修平・詩絵里夫妻と美濃による最初の打ち合わせが行われた。修平は、車で片道三時間以上かかった、と苦笑いしていた。

 この日もひかるは形式上、美濃の後ろに控えていた。今回が、打ち合わせに同席する最後だ。

「来年五月ですね……披露宴のお招きが百名さま前後ですと『エリシオン』の間がいいと思います。白を基調とした明るく華やかなイメージですよ」

 美濃が提示する「エリシオン」のパンフレット、次いで書類、自分たちの名前に目をやった夫妻は、二人で目配せをして小さく息をついた。

 意に介することなく、美濃は話を進める。

「もう少し小さめの『ミノア』もすてきですよ。落ち着いたブラウンの色合いが人気なんです。ここは主役である新婦さんのお好きな方を優先していきましょう。どうですか、修平さん」

「詩絵里は、どっちが好き?」

「詩絵理さん最優先です!」

 まだ緊張の残っているらしい詩絵里に明るく話し掛けるのは、美濃なりの配慮だろう。

「まだすぐには決められないけど、エリシオンはきれいですね」

 急ぎ過ぎず、じっくりと一歩一歩。肥後夫妻のマラソンは始まったばかりだ。

「実際に各会場をご覧いただいて、一番お好みのところに決めましょう。これからでしたら、エリシオンもミノアもご覧いただけますよ」

 エリシオンはハルモニア仙台が誇る大会場で、所属のウェディングプランナーたちにとっては、美しさの面でも売上の面でもインセンティブの面でも、ぜひともお勧めしたい会場だった。

 両の間の写真を、詩絵里はいつまでも見比べていた。その様子に「なかなか決まらないだろうな」と、男性陣二人は笑顔で目を見合わせた。

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