第九章 モメンタム 1
野島弁護士事務所編
「間違いないんだよね」
理恵は修平にLINEを送った。嘘か真か、ネットでよくあるハッタリなのか。青山サイドから弁護士というフレーズが出てきた。理恵としては、不安を抑えるためにも修平に確認を取りたかった。
数時間後、仕事が終わったのか、ようやく修平から返信が入った。
「俺も詩絵里さんも嘘は言ってないよ。青山の嫌がらせもハルモニアの落ち度も、全部本当だよ。理恵さんも披露宴に来たし、話し合いの場にもいたから分かるでしょ。花も少なかったしダブルブッキングもあった。そのせいで披露宴会場の飾り付けもほとんどさせてもらえなかったんだ」
確かに、修平に見せてもらった。披露宴の数日前、美濃から修平にメールが来ていたのだ。その内容は次のようなものだった。
「私も青山も、肥後さん夫婦の『お式・披露宴にかける思い』は理解しているつもりです。ですので会社と掛け合って、何とか飾り付けの時間を三時間確保しました」
こんなメールを送ってくるぐらいなのだから、本来はもっと自由に飾り付けをさせてもらえたはずだ。理恵は自分を納得させた。
「そうだよね。あいつらのせいで詩絵里も会社に行けてないんだもんね」
「テレビで花嫁さんとかが映ると、もう駄目。気分が悪くなった、って」
だから青山もハルモニアも非難されてしかるべきだ、これからも頼むよ、と修平のメッセージはそこで途絶えた。
やはり私たちは悪くない、正しい。正しいけれど「弁護士を雇った」という、アリスとやらのあの言葉は本当なのだろうか。
一方的に殴っていいはずだった。そう修平に言われて殴り続けているつもりだった。弁護士……? うん、嘘だ。きっとネット上での強がりだ、そうに決まっている。




