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第一章 ウェディングプランナー 2

「ちょっとさあ、モヤモヤするんだけどさあ」

 夜、ひかるはモニターに向かってマイクでつぶやいた。ゲーム中で、いつものフレンドたちが相手だ。この日は五人ほどだっただろうか。フェイクを交えて個人情報の特定=身バレはさけつつ、それでも自分の日常を語る、これが彼女のトークスタイルだ。明かしているのは、職業、地方都市在住、平成の最初の方の生まれ、程度。ゲームの中の名前=IDは当然「ずんだ」だ。

「どうしたどうした」

「どうせ怒られたんだろ」

「あたしが契約を取ったお客さんの担当プランナーが決まったんだけど、ちょっと不安な人でさ。いい歳のおじさんなんだけど、どこか軽いんだよね。もちろんフォローには回るけど、それ以上のことはしちゃいけないしね」

「しゃーない」

「何か起これ!」

「ずんださんってブライダル関係の仕事だっけ?」

「私は味方だよ」

「じゃあオレは敵だよ」

 普段どおりのにぎやかさに触れて、ストレスを発散する。顔は知らないけれど、オンラインゲームやツイッターなどで五年以上交流しているフレンドも多い。身近すぎないからこそ(安全上、多少のウソは交えるとしても)気軽に話せる空間、それがひかるにとってのインターネットだった。

「あんたたちも、ほんと適当だねえ」

 笑って返す。

 しかし結婚式というのはカップルにとって人生で、もしかしたら一番のイベントだ。一方、プランナーというのは、日常の「仕事」だ。ボランティアではない。金を稼ぐ仕事なのだ。

 ひかるは思う。「どうせ同じ時間をかけるなら、同じ額をもらうなら、より大きな幸せを売りたいじゃん。次につながるかもしれないし、何よりインセンティブもあるしさ」と。


「誰か結婚したい人がいれば、メール送ってきてね、あたしが担当してあげるから」

「イヤ」

「いや」

「嫌」

 賑やかながら残念な腕前のゲームは、深夜一時まで続いた。

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