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第六章 烈火 6

 ウェディング・ワールドからの決定事項は何も降りてこないまま、二日が過ぎた。

「会社が弁護士を付けて対処するから」と高橋は言うが、特に何の変化も起こらない。耳と目に入らないよう注意しているが、ひかるへの罵詈雑言は、未だ止まっていないようだった。

「お偉いさんたちが集まって、記者会見には誰が出る、何を話す、と話し合ってるけど、結局何も決まらなかったらしい」

 向井が、ウェディング・ワールド東京本社の総務課・情報処理担当の友人から仕入れた情報だった。会議の後、西山本部長が悔し涙を流していた、という目撃談もある。


 一方、ハルモニアには改めて仙台中央署の玉村が来訪していた。

「刑事事件ではないから何も言えないのですが、記者会見で事態の収集を図るべきですよ。その後、どうなりましたか」

 高橋は最後まで煮え切らない。

「そこは、弁護士先生と相談して。それに東京本社の決定も待たなければならんわけでして」

「早めに対応してくださいね。それが一番です。今現在、私たちにできるのは、青山さん宅とご実家のパトロール程度です。何も起こってないうちに。よろしいですね」

 刑事事件ではないにもかかわらず、わざわざ刑事がやってきた……その重みを高橋はどこまで理解していただろうか。


「あたしの名誉回復はどうなるんでしょうか」

「警察にも言われた通り、すぐに記者会見を開くのがいいんだろうけどね。美濃の名前を出す出さないは別としても『現在SNSで、無関係の社員の名前が上がるなど……』というのを出すだけでもいいのに、何か動きが鈍い。ここまで美濃をかばう必要が果たしてあるのか」

 炎上が始まってからすでに三日目。向井が常時ツイッターなどの様子を見てくれている。はっきりとは言わないが、未だに首謀者はひかるへの攻撃ツイートをやめないようだ。

 社への苦情電話なども続き、ひかるとしては心苦しい二日間だった。一方の美濃はというと大森からの聞き取り調査も終わり、すでに「済んだこと」とでも感じているのか、普段と全く変化のない飄々とした態度で業務に当たっていた。

「一体何なんだ、この人は」。ひかるは腹立たしさは当然のこと、それ以上に美濃の人格がもはや理解できず、恐ろしさとおかしさが混ざった奇妙な感情を処理できずにいた。

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