第五章 戦端 5
「泣き寝入らないなんて、すごいね」
高橋、大森、美濃が帰った後、理恵と肥後夫妻は、そのまま一息ついていた。テーブルには三人分のグラスだけが置かれている。
「俺らは正義を果たしてるんだ。結婚式では詩絵里さんも泣かせてしまったし、こんな思いをするのは俺らだけで十分だよね」
うん、とグラスの表面に浮いた水滴の一つを見ながら、詩絵里は頷いた。
「こういうのさ、ネットで全部公開していくべきだと思うよ。向こうは逃げ切ろうとしてたよね。そういうのを許さないためにも、声を上げないと」
「ネットの式場レビューには、利用者として遠慮なく書いてやろうと思う。写真も掲載できるから、実際はこんなにショボかったぞ、って。思いっ切り」
私にも頼んでよ、いろいろできるよ、と自分からは言いたくない。どうか言ってきてほしい。「理恵さんにお願いしたい」と。
「ほかにも、理恵さんならSNSで何かできる?」
きた。
「うん、私で良ければ」
「理恵ちゃん、ツイッターとかやってるもんね。私たちの代わりにいろいろ言ってほしい」
「分かった、私にできることなら。どれだけ力になれるか分からないけど、やってみるね」
今日の話し合いで、理恵にもいろいろ分かった。しかし自分も当事者然として告発するなら、さらに情報が欲しいところだ。
遠慮はいらない。何しろ友人夫婦は、人生をめちゃくちゃにされたと泣いているのだ。それに、発言すれば私の居場所ができる。もちろん、あくまでこれは人助けだけれど。
夜になって修平から、ハルモニアにぶつけた苦情の一覧がLINEに送られてきた。ハルモニアとひかるに対する恨みつらみの言葉。修平も理恵も、高揚した気分を抑えきれなかった。




