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令和に生きる座敷童子~お気に入りはニートさん家~

作者: やまた

 こんにちわ、座敷童子です。

 お邪魔した家に幸福をピカ―っと降り注ぐ妖怪っぽい感じの存在です(ふわふわ)。

 ピカ―は一日一回までです。

 それ以上はお腹痛くなっちゃいます。


 そうそう、皆さん座敷童子ってどういうイメージですか?某有名妖怪アニメの二十五話を観たことがある人は、影から家人に幸福をもたらすが人に気付いて貰えなくて悲しい存在というイメージなんじゃないでしょうか?


 昔はそんな風に自分でも思ったことありました(しみじみ)。

 けど、時代は変わりました!


 相変わらず誰にも気づいて貰えないスケルトンライフですが、楽しみが増えました。

 ニートです!


 ニートは良いです。彼、彼女らは一日中家にいます。そしてテレビやネットなどを一日中つけてるんですよ!

 よく膝の上で一緒に観戦しています。


 お気に入りはガチャをやるときにピカ―っと幸福を降り注いでSSレアを当てることです。

 座敷童子の力を使ってやったぜ!感が出て達成感があります(ふんすっ)。


 特にお金に余裕がないニートの方はいいですね。ガチャを作業のように回し続けてSSレアが出るまでやっているようなお金に余裕がある方はピカ―やってもリアクションが薄いんですよ。


「確率偏ったわ」


 とかピカ損ですよ。その点無料でやれる機会に心血を注いでいる方はいいです。派手なガッツポーズはいいですよね。こちらも嬉しくなります。でも喜び過ぎて椅子からひっくり返るのは止めましょうね。


 後ですね、お気に入りは独り言が多いニートの方です。初めて観るゲームだと何が何やらよくわからないので、実況解説ばりに独り言を呟いて頂けると助かるんですよ。私もすぐにゲームの世界に没頭できるので。


 最近はニートの方のところを巡っているんですが、昔は小説家や漫画家などの物書きのところを巡っていました。


 ピカ―すると面白い話がリアルタイムで次々に生まれて来るんですよ。それで発行部数が伸びて印税が入ってくると続編を描くことになって、長く楽しめるんです。WIN-WINの関係でしたね。


 そんな感じで座敷童子的に美味しいので有名作家さんのところには座敷童子が既にいたりします。仲良く二人でピカ―してもいいですが、一人が長く、喋れる相手と一緒にいると疲れちゃうので私は先人がいるところにはお邪魔しないようにしています。


 無名時代から支えて有名なるまでご一緒するというのも良いですね。やったことあります。リアル成り上がりを身近で見るのも楽しいものです。


 ですが、長く一緒にいてピカ―を沢山やると、私が出て行った後で反動が来てガガーンなことになるので止めました。有名作家が非業の死を遂げたりしているのは、一緒にいた座敷童子が飽きて他のとこにいった反動だったりします。


 なので、二泊三日くらいでニートな方のお家を転々とするのがちょうど良いという結論に達しました。

 ちなみに家々を本当に転々としています。ワープです。お庭までは出れるんだけどお外には座敷童子は出れません。家と家を繋ぐワープホールがあってそこに入ると次の家にいけるんです。楽ちん楽ちん。


 あっニートじゃなくて専業主婦(主夫)がいるお家も中々いいですよ。テレビが付いてますし、でもリアクションが薄いんですよね。


 ニートの我武者羅に画面に齧りついている感じが好きなんですよ。画面の中が俺の世界みたいな。そこで一緒に画面の中に夢中になるのが楽しいんですよ。それでここだって時にピカ―ってするんです。やり甲斐あります。


 スマホやiPadなんかはちょっと苦手です。画面小さいですし、見ている体勢も無意識の内にコロコロ変えられるので夢中になって覗けないんですよね。PCがいいです。PCゲーが好きです。お金ないニートの方は是非無料のPCゲーをドンドンやって欲しいです。


 嫌いなニートの方はゲームのムービー画面をスキップする人です。初見なのにスキップするとか考えられません。制作者に謝った方がいいです。ストーリー性があるゲームでスキップするとか何を楽しんでいるのか分からないですよね。でもいるんですよ。一緒に観てる人がいるのを分かって欲しいです。


 世間ではニートは時間がたっぷりあるというイメージのようなのですが、結構時間に追われているニートの人多いです。複数のゲームをやっていてイベントに追われていたり、アニメを視聴してリアルタイムで掲示板に書き込みしたり、中には新規のゲームイベントの解説動画を作成してアップしている人とかいました。忙しくすることで達成感を味わうのと共にリアルを忘れるためにやっているんだと思います。苦行系ニートって呼んでます。


 苦行系ニートは初期はいいんですが、末期になると常にせかせかして落ち着きがなく攻撃的になる人が多くて困ります。ムービーは確実に飛ばします。飛ばせないと怒声が漏れます。判別方法はニヤッでもいいから笑うかどうかです。末期の方は笑わないんです。一緒にいる人は笑う人がいいです。


 あっそうそう引き籠りニートをニートと呼んでいます。アグレッシブに外に出るニートの方もいると思うのですが、家で待っている身としましては仕事行っているのか遊びに行っているのか分からないので引きこもりニートの方をニートと呼んでいます。一応補足です。


 ニートも色々な方がいます。生活リズムがきっちりしてたりバラバラだったり、食生活に気をつけていたりいなかったり、部屋を綺麗にしてたりしてなかったり、風情があっていいと思います。


 今まで色々なニートの方のお家に行きましたが、一番印象に残っているのは独り暮らしで残金が机の上にある千円のみという方でした。

 お札を見ながら彼は無表情で呟きました。


「ラスイチ……死ぬな」


 ビビッときました。マジだなと。心配になりその家に御厄介になることにしました。私のピカ―でどうにかしようと。夏の暑い日でした。ピカ―のタイミングを計るため彼の観察を始めました。


 身長は百六十五センチ程度、顔立ちは鼻が高く目は二重で整った印象です。しかし、目には大きな隈があり頬はこけていました。歳は顔立ちから二十代と思われるんですが白髪の量が多く三十代、もしくは四十代に届いているかもしれないと感じました。


 服装は白のTシャツに下はトランクス。

 部屋はワンルームで中央に布かと見間違うほど薄くなった布団が敷かれており、台所の前には元は白く美しかったと思われる黄ばんだバーカウンターのような机がありました。窓には常に黒の分厚いカーテンがかけられており、窓際にPCラックがあり起動したPCとその前に黒い大きな網状の椅子が置かれていました。そして、ゴミ箱をぶちまけたような、いや部屋自体が一つのゴミ箱のような、足の踏み場もない状態でした。


 彼は変わっていました。部屋には私しかいないのに、私のことは見えていないのに、ずっと誰かとお話しているんです。笑ったり怒ったり時には号泣したりしていました。彼には何かが聞こえていた、もしくは見えていたんだと思います。


 彼が見ているもの、聞いているものに興味が湧きました。残り千円で稼がなくては死ぬという状況なのにも関わらず彼は見えないものに夢中になっていました。薬は飲んでいませんでした。


「また世界線が移ったか……」


 彼はリアルにいませんでした。


「お前らが地球から俺を誘拐したんだろうが」


 異世界にいました。 


 彼は語りかけます。彼女らに。


「カタリナは守護を、リンネは遊撃、攻撃は俺とレンゲがやる。イツキは逃げとけ」


 彼はワンルームの部屋の中で幾度となく戦闘を繰り返していました。


「また来たか天上人の野郎」


 敵は天上人と呼ばれる存在とその軍勢です。彼の会話を聞くに天上人は神のようです。


「どうだ天の上の人、所詮お前も人だろが」


 戦闘にも種類がありました。

 彼が短い木刀を振り回し踊るように戦う戦い。


「死にたい奴から前に並べ叩きってやる!」


 座禅のように組み、目を瞑り彼女らに指示を出す戦い。


「イツキは情報の整理を、カタリナは拠点の防御、リンネは詠唱補助、レンゲ中央が手薄だ喰い破れ!」


 そして口撃が主な戦い。


「本当にお前らの世界は糞だ。素直にごめんなさいと言えない世界なんて滅んじまえ」


 彼が今いる世界は別の理で動いているようでした。


「ほら天上人ご・め・ん・な・さ・いだ。言えるものなら言ってみろ。何が全知全能の神だ、ごめんなさいも言えないのか幼児でも言えるぞ。お前は俺の生まれた世界の幼児以下の存在だ。また力が弱くなっただろザマ―みろ!」


 彼は椅子の上に立ち、エアコンに向かって叫びました。


「大方システムに別の意味の言葉として登録したんだろうが、俺に言わせたいということは『天上人には敵わない』とかそんな類いの意味だろ。そうすりや失った力を取り戻せるもんな!ワンパターンなんだよ単細胞野郎!」


 彼の怒声が止み部屋に静寂が訪れました。彼は風呂場に行き空の二リットルのペットボトルに水道水を詰め、浴びるように飲みます。これが繰り返されます。


「リンネ後は任した。少し落ちる」


 胡坐を組んだ状態で目を瞑り一時間程眠ります。

 ご飯は食べていないです。買い置きがあるか探したけどありませんでした。

 部屋には時計がなく、分厚いカーテンのせいで一日がわかりづらいです。

 私が来てから体感で三日たった頃、変化がありました。


「世界線移動か。よし、今ならコンビニ行けるな」


 初の外出です。彼はそこいらに落ちていたジーパンを履き、夏なのに長袖のコートを羽織り前までしっかり止め、帽子を被り、机の上に置かれた千円を握り締めました。


 私はずっとピカ―のタイミングを計っていました。彼の戦闘をピカ―で援護しようかと思ったのですが、どのタイミングでピカ―すれば彼がこの世界に帰って来られるか分からずピカれませんでした。しかし、外出です。このタイミングならば、ピカ―すればお金を拾えるチャンス!


 ピカ―!!!!


 私は祈りました。


「どうか幸運が訪れますように」


 コンビニ袋を手に彼が帰ってきました。コンビニ袋の中身を覗きこみました。中にあったのは、……のり弁、SOYJOI、たばこ……。


「ラッキーだったなクジが当たるなんて、これ結構腹に溜まるんだよな」


 上機嫌に彼はそういうと机の上にジャラジャラと小銭を置きました。


「クジに運使っちゃったかー」


 小銭を確認すると百八十一円でした。

 たばこは止めといた方が良かったんじゃないかな?


「豪華な食事もラストかな、のり弁まじ旨そう味わって食べないとなあ。いただきます!」


 とりあえずピカ―しようかな。そしたら何か幸運が舞い込んで来るかもしれないし、でもスマホの電源切ってるんだよね。何かあっても気づけないよね。玄関から来る幸運……懸賞が当たって届くとか。出してなかったら無理じゃないかな、間違いで配達されるかな。お腹痛くなるけど一日二回までならなんとかなるしやろうかな。でももっといいチャンスが訪れるかもしれないし。


「旨かったあ~ご馳走様でした。たばこ吸お、残りは……っと缶コーヒー買えんじゃん。この際だ豪勢に行くべ!」

「ダメメメメメメーーーーーーーーー!!」

 ピカ―ーーー!!!!

「どうしよ思わずピカっちゃった!」


 彼は百円玉を手に取ろうとしましたが、その百円玉は指から滑り落ちました。落ちた百円玉がゴミの中に埋まります。


「やべ、なけなしの百円が」


 ゴミを押しのけ探す彼。そして不意に固まる彼。次の瞬間……。


「うおおおおおおおおおおおーーーーーー千円見つけたあああああああーーーーーーー!!!!」

「やったあああああああーーーーーーーー!!!!」


 千円はデカイ!!やったピカったかいあった!!


「たばこもあるし、二食はいけるな!これ部屋掃除すれば埋蔵金まだあるんじゃね?」

「あるある!!でも明日にしよ今日は無理だから一日一回掃除しよ?」

「いやちょっと待て、リンネこの世界線どんな感じ?」


「OK。じゃあ暫くゆっくり出来るな……デート行かね?」

「デート?リンネちゃんと?会えるの?」

「そうそう皆でさ、せっかく初めて会うんだから何か良いところがいいよな。ちょっと待って検索してみる。」

「皆ってカタリナさんリンネちゃんレンゲちゃんイツキさんだよね。えっいるの?」


 椅子に座りPCを操作し夏のお勧めデートスポットやイベントを調べて行く彼。


「七景島シーパラダイスの花火大会だって、どう?」


「OK決定!!集合場所はどうする目印とか?」


「そっか俺たちならわかるか。じゃあ声かけるから冗談でも他人の振りとかやめてよな」


「アハッハ」


「どういうこと??会話聞きたい!あーもう、てか外とか付いて行きたいけど出れないからなあ」

「久しぶりに飯食ったら眠くなってきたわ。布団で寝るとかいつぶりだろ。じゃあ三日後シーパラで!三日もあれば歩いて着くだろ」

「歩くの!?残暑だよ倒れるよ、まともにご飯も食べてないのに。心配だ心配過ぎる。てか働こう?」

「ZZZZZ……」


 次の日の朝、彼は起きるとシャワーを浴び、洗濯機の中から服を取りだし着替えました。

 私はずっと考えていました彼が幸せになるにはどうしたらいいのか。


「じゃあ行ってくるとしますかね」

「彼が幸せになるにはこれしかない!」

 ピカーーーーーーーーー!!!!

「レンゲちゃんリンネちゃんカタリナさんイツキちゃんに会えますように!!」

「行ってきまーす」


 彼の背中を見送りゆっくりと閉じられる玄関を見つめました。

 その後、一カ月待ちましたが彼は帰って来ませんでした。

 毎日ピカ―して彼の幸福を祈ったのできっと幸せになっているだろうと思います。

 今頃、彼女たちに出会って冒険の続きをしてるんじゃないかな?

 これが私が今までの出会った中で一番印象に残っているニートの方のお話でした。

 ニートの方との生活は楽しくてやめられません。

 ニートの方へ、SSレアが当たったら私がいるかもムービーはスキップしないでね。


お読みいただきありがとうございました。

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