表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生  作者: まつ
4/24

04

魔法のない世界に転生して04


 まちで店舗を借りて、女神と自動人形は治療院を開設する。トムは相変わらず鍛冶場に勤めている。トムは火を見るのが好きだ。鍛冶場で火花をはなって鍛造される、鉄の色はトムを落ち着かせる。トムの技術は女神が教えてくれたものだ。砂鉄を使い、たたら場で、三日間不眠不休で、たまはがねを作る。途中で中断することは出来ない。これを高温たんれんして、ただひたすら、たたいて、のばして、折り曲げて、重ね合わせて、また、たたいて一枚にする。研ぎの作業がトムの一番重要な作業だと思っている。刃物が完成するまでトムは寝ない。強靭な肉体をあたえられたトムだからこそ、できる仕事である。


 鍛冶場の仕事と同時に医師の仕事もトムは好きだ。戦場の血の臭い。野戦病院の敵をおそれながらの、負傷兵の手当て。だめだとあきらめかけた命が助けられたときの喜び。切迫する空気。膿の臭い、叫び、呻き、どろ、すべてがトムは好きだ。それは鍛冶場の空気とにている。


 野戦病院で負傷者の逃げる時間をかせぐため、敵と戦う自分もすきだ、自分より強い相手に死もかえりみず向かっていく自分がすきだ。本当は戦いそのものが、好きなのかもしれない。


 エリカは妊婦の中絶手術をしている。エリカには生まれてこようとする命を殺すことにためらいがある。女の子である。トムと同じようにけんぞく神にしようかとも考えた。まだ人間でないお腹の子がエリカに話しかけてくる。「いきたいの、お願い。」


 トムは姉に呼ばれた。「トム、あなたに妹が出来る。」エリカは昼間のことをトムに話した。「たのしみですね。」トムの答えに、女神は自分の腹部をいとしそうになぜる。


 トムと鍛冶の親方とは気が合う。互いに職人かたぎなのだろう。「最近は何を作っているんだ?」トムはだまって銅板を加工して作ったフィギア人形を見せた。「銅人形だよ。姉さんに贈る。」親方はその精巧さに感心する。若い母親がみどりごをいくつしんでいる姿は、鍛冶を越えた芸術である。街角に飾っても、評判になるだろう。「おまえは、すごいものを作るんだな。」トムは少し得意顔である。尊敬している親方に誉められるのはやはり嬉しい。」


 「トム、おれはお前が来てくれたことが、嬉しいんだ。」職人仕事は孤独な仕事だ。そこに信頼できる男が仲間になってくれたことは、親方にとってこれ以上ない幸運である。なにもいらない。ただとなりで仕事をしているだけで、親方は安心できるのだ。そこに仲間の体温を感じる。


 トムはとなりに来た親方にお茶をだす。薬草茶だ。こうばしいハーブの香りが心地よい。「トムは医者でもあるんだろう。」「このあいだまで、砦で医者をやっていた。砦が陥落して、逃げてきた。」「この間の戦だな。あれはひどかった。」少しトムは遠い目をする。「隊長も悩んでいたようだ。玉砕か降伏か。自分ひとりの問題でないからな。辛かったとおもう。」「俺はそういう選択をするような仕事をしたくない。自分の腕だけで出来る仕事が、一番よい。」「ぼくもそうだ。」トムは炉の炎に照りかえる男の顔を、好ましくみる。


 久しぶりに、鉱山の仮小屋にいってみる。今回は姉さん、自動人形の3人で来た。「トム、私たちは薬草採取しているから、夕食は頼みますよ。」姉さんに別れてトムは夕食の肉を得るために、狩りをする。自動人形がついているから、大丈夫だろう。トムはあまり離れないようにして、鹿や猪を刈る。すぐに血抜きして、解体する。「トム、こちらは終わった。いまからそちらを手伝う?」「いや、こちらも終わった。小屋にもどる。」超能力で互いに状態を確認しながら、連絡をかかさない。神と、神のけんぞくとのあいだの会話は、直接頭脳に働きかけ、事象のすべてをみせる。


 トムは解体した肉を、姉が採取してきた香辛料をくわえて調理する。街の市場から買ってきた野菜とともに香ばしい臭いがする。トムが姉のほうをみる。もうすぐ、あたらしい家族が増える。エリカもトムの視線を感じて、ほほえむ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ