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転生  作者: まつ
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03

魔法のない世界に転生して03


 砦の外の景色が凄いことになっている。ぞくぞくと増える敵軍に、隊長は士気を維持するのに夢中だ。夜明けとともに銅鑼の音が響き渡る。敵軍から矢がはなたれた。それが合図のように矢の雨がふりそそぐ。その間に盾に守られた梯子を持った兵士が城壁に近づく。大型の柱材とパネルを運んで、仮設の陣地を作る。パネルを組み立てた陣地は、すぐに砦側の矢の攻撃によって、針ネズミのようになる。しかし矢は敵兵にとどかない。


 とつぜん砦の門が開かれた。しかし敵軍によって門の前には障害物が積み上げられて、飛び出そうとした兵士の足を止めた。城壁には複数のはしごがすでに設置されている。敵軍の銅鑼の音が変化した。総攻撃だ。梯子を昇って敵軍が攻めてくる。「姉さん、敵軍が城壁を登り始めました。」「しかし怪我人をほおってはおけない。」エリカの前にも矢が突き刺さった。トムが剣で矢をなぎはらう。


 夜になった。すでに砦の人間は、半死半生のていらくである。夜になって敵軍の攻撃はやんだ。夜のしじまのなか、志願者によって奇襲部隊が組織された。砦の裏側の抜け穴から50名が敵軍に打って出た。暗闇のなかの死闘は効果を最大限に発揮した。敵軍が裏手に意識を向けたとき、大手門を開けて、全兵力が打って出た。攻撃というよりは脱出である。トムも馬車にエリカと自動人形をのせて、全力で逃げた。


 敵は深追いをしなかった。むしろ砦側の逃亡を助けたともいえる。大勢の負傷兵をかかえた敗残の軍隊は、存在するだけで迷惑である。逃亡はゆっくりであった。エリカも負傷兵を見殺しにすることに、しのびず、隊長と行動をともにした。血の臭いをかいだ魔獸が昼夜別なく、襲い掛かってくる。この行軍の間、トムも魔獸退治の経験を積んだ。


 絶え間ない敵軍の攻撃と、魔獸の攻撃によって負傷兵の多くが、行軍のあいだに死んだ。味方のもとに帰り着いたのは、わずかであった。エリカたちは、この砦で10日間、滞在した。最後の治療が終わって、隊長とわかれた。来たときと同じように馬車と牛にエリカとトムと自動人形の一行は兵隊たちとわかれた。ただひとつ違うのは、砦より感謝状と手形が渡された。


 ゆく道の状況はあまり変わらなかった。魔獸が多く、さぎ、おいはぎが、相変わらず多かった。トムは魔獸の退治と下処理の仕方に熟練してきた。魔獸の肉も食べることができる。素材も加工すれば有効活用できる。加工の可能性については、エリカと自動人形に教わりながら、試行錯誤するのもおもしろい。鉱山を発見すると、しばらく滞在して、鉱物採取にいそしむ。


 加工の簡単な金属を採取して、精錬して工作物を鍛造で作ってみる。姉も自動人形も手伝ってくれる。最初は矢じりや小刀を作ってみる。鍛冶の技術を持っていれば、この世界では役に立つ。かなり長期にこの地に住み着いて、薬草採取、鍛冶と頑張った。もちろん日常的に魔獸退治に、素材加工、食料確保、調理に頑張る。馬車のなかには外部からは確認できないが、多くの加工品が積み込まれた。


 しばらくこの鍛冶場を不在にして、町に加工品を販売しに行く。往復で二週間の行程である。街道は治安がわるく、魔獸も頻繁にでる。ゆくかう人々は護衛を雇い、ある程度の集団となって移動する。トムたちの馬車もこのような集団に合流して町へむかう。


 町の入場はむずかしくなかった。砦で書いてもらった手形と感謝状がどこでも威力を発揮した。トムが作った剣や金物は、かなりの値段で売れた。医師としての仕事も、一度手をつけると、ひっきりなしに舞い込む。トムは鍛冶工場に雇われて技術を学ぶ。もちろんトムの技術も我流ではない。しかしこの世界における鍛冶の実際を見ときたいと思うのは、あたりまえだ。技術に大差がないのが、少しさびしい。


 「この町に住んでもいいですね。」姉の言葉に、トムは少し複雑そうな顔をする。鉱石採取に興味を持ってきたところだ。

 


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