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転生  作者: まつ
24/24

24

魔法の無い世界に転生して24


 ユイは定期的に魔獸の大陸に渡った女神エリカと念話で話し合っている。ユイは幼い。人類を簡単に全滅させることが出来る能力を自分が持っていることに、何の疑問もない。言葉をトムから教えられ、瞬く間に自動人形を操れるほどに成長した能力に、トムとスージーは恐怖を抱いた。武術はトムとスージーから習った。しかし単に武術の技を教えたに過ぎない。それでも初めてみる対人用の武術に興味を覚えた。人間社会の実務は老辺境候に習った。しかしそれは人間社会の均衡を崩した。辺境候の力は瞬く間に世界を隷属させた。その辺境候も最後にはユイの力に恐怖した。一番いて欲しいときにトムもエリカもいなかった。絶望のなかで老辺境候は死んだ。せめてトムがいれば、それが老人の最後の思いだった。

 瞬く間に世界は革命の嵐に飲み込まれた。いま人間の大陸は、人工の6割を失った。魔獸の勢いがつよくなり、人間は魔獸の食い物になり、狩りの対象に成り下がった。ユイはそれをただ面白がってみていた。ユイは人間に何の思い入れもない。姿、形が似ているだけだ。

 ユイもエリカとトム、スージーに会いたがっていた。ここには変化がない。自分と対等の者がいない。人間種が食い殺されるのも、見ていて飽きた。


 「ユイがここに来るかもしれない。」エリカの言葉にスージーが怯えた。トムは憮然としている。自動人形は自分を守るように自身を抱き締める。狼はなんと反応していいのか分からない。「向こうの世界はどうなっているのでしょう。」「人間は人工の6割を失っています。」誰も何も言わない。ユイが来るというなら誰も止められません。「ユイは飽きたのです。」エリカの言葉に、トムもそうだと思った。きっと人間の社会にも、魔獸にも、飽きたに違いない。すべてが死に絶えても、ユイは平然として、次のおもちゃを探すことだろう。それが俺たちだ。


 ルイはエリカに可愛がられた。トムもスージーも、ルイには特別の気持ちを持つようになっていた。ルイはエリカとちかしくなってから、スージーの無防備な姿にびっくりした。スージー、あなた幼児?エリカはそのまま瞳孔をおおきくひろげたまま、固まった。スージーは甘えるようにルイをみて、それから灰色狼の体毛のなかにからだを滑り込ませた。

 そのときトムがイァンと入ってきた。「イァン、」ルイは瞬間狼狽して、次にからだが真っ赤になった。スージーは面白そうにそれを見ている。人は恋の季節に恋をするものだ。イァンもルイの反応が伝播したようだ。えりもとまで真っ赤になる。ルイはスージーの、イァンはトムの右腕になりつつある。自動人形が食事を運んできた。ワインが食前酒として配られた。


 自動人形の知識とトムの実務経験によって、港の近くの鉄鉱山に大きな精練工場が作られた。最初の精練に成功したとき、イァンは感動した。同時期に石炭の掘削に成功した。良質の石炭からコークスが作られ、それが精練所の開発に結び付いた。産業革命の幕開けである。トムとイァンは鉄と石炭のもたらす未来に夢中になった。大学校に工業部門を増設して、イァンが責任者になった。まだ大学校といても、実質エリカとトムとスージーの研究機関である。各研究対象ごとに班を構成して、そのリーダーにイァンがなったぐらいに考えてもよい。


 鉱山部門の研究から、火薬の開発要望があがった。確かに火薬の開発は必要であるが、自動人形に聞いてみると、硝石、木炭、硫黄で作られるという。ただ硝石はアンモニアが関係するらしい。


 新しく生まれた国津神、ユイが人間の大陸から来た。エリカ、トム、スージー、灰色狼、自動人形がユイを迎えた。

 ユイは面白くなかった。外海を越えて新大陸に来たのに、相変わらずのトムの仏頂面。スージーなどは最初から喧嘩腰である。「私が何かした?」ユイも薄々解っている。何もしなっかた事が問題なのだ。ユイは無意識に防御するために魔獸を集めた。灰色狼がけんぞくを出現させた。すかさずエリカが介入する。「なにやっているの、あなたたちは!」

 ユイは心のなかで過去を思う、エリカやトムを中心にして老辺境候を助けたことは面白かった。一時は人間が魔獸を駆逐した。自分も一生懸命、働いた。辺境候も誉めてくれた。貴族や庶民も私を称賛してくれた。面映ゆかった。しかし人間たちは富の分配をめぐって、互いに殺し合うようになった。私は面白くなって人間たちを煽った。そうしたらエリカたちが逃げ出した。毎日毎日の貴族の処刑も見飽きた。気が付いたら人間は半分以下の数になっていた。そのとき貴族より、魔獸を使って対抗勢力を駆逐出来ないかと持ちかけられた。もっと刺激が欲しくなって、魔獸たちを呼び寄せる方法を教えた。阿鼻叫喚の地獄絵が始まった、美しかった。いまも人間たちは数を減らしながら生きている。エリカやトムやスージーがいれば、もっと面白かったのに。そしたら、また人間の社会を構築できる。


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