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転生  作者: まつ
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21

魔法のない世界に転生して 21


 魔獣の大陸の開発のためには、大陸の地形図の作成が基礎になる。神の眷属神たるトムならば、地図化の能力を発揮すれば、地形図の作成は簡単である。しかし一般人である調査船のメンバーには、難しい。はじまりの街の大学では、自動人形の指導で測量器具を制作した。試行錯誤のすえ、光学レンズの作成に成功した。まだ未熟の技術と知識、しかし、まがいものの道具でも、そろばん、計算尺、水準器、トランシット、六分儀、メジャー、スタッフの作成に成功した。測量道具の精度を上げるには、まだまだ全体のレベルアップが必要である。しかし児技に等しい道具でも理屈を理解することは、出来る。


 調査船は常にコンパスと時計、六分儀で星を観測する。これから先、延々と続く天体観測で地形図、海図が完成していく。エリカの国では新しい暦も完成した。暦も天体観測の成果である。これから先、今の暦では何百年間の間に数日の誤差が生じる可能性がある。しかし取りあえず、良しとする。


 時間だけは十分にあった。若い世代が開拓を推し進める。リンは王族の末に生まれた。この開拓大陸に来たときは、まだ赤子。子どもたちが常にリンの周りに集い、あやしている。「リン、いいかげん、泣き止んで。」面倒見のいい少女が、リンを抱きしめて、途方にくれている。「ルイ、まだ泣き止まないか。」少し大きな少年が面白そうに、リンのほっぺたを人差し指でへっこます。少年の名はイァン、本来なら王国の皇太子となる生まれである。しかしこの開拓国に王政はない。いや、政治体制そのものが曖昧である。開拓国が急いだのは実用的な学問、技術であった。「ルイ、交代だ、今度は僕がおもりをする。」「大丈夫ですか?」少女は不安げに少年をみる。「なに言っているのだ、失礼だぞ。」「だって、」


 子どもたちの生活は、この大陸に逃れてから、まったく別のものにさまがわりした。しかし一様に明るかった。自分たちがこの大陸を開拓しているのだという自負がある。この大陸で遊んでいる者はいない。一人ひとりが目的を持って進んでいる。なにより自分たちを導いてくれた女神がいる。女神の眷属神がいる。自分たちの仕事を手伝ってくれる10人の巨人がいる。


 「イァン、この間の調査船、面白かったね。」ルイがリンをあやす少年に語りかける。近海の調査船は、子どもたちの視野を広げるために、積極的に海上学校を計画する。「海図を作る作業が面白かったね。海の中に錘をつけたロープを沈めて、深さを測ったね。」ルイはリンのミルクを準備しながら、楽しそうに語る。ときどき少年は眩しそうに少女を見つめる。少女の長いまつげが美しい。


  「ミルク、美味しそうに飲んでるね。」「うん。」開拓国の子どもたちは、孤立することを許されない。学校は半全寮制で、子どもたちが自主運営している。もちろん、大人が常時見守っている。食事の準備も子どもたちが行う。もちろん家族との絆は基本である。それでも個よりも集団の生活に慣れることに重きを置かれている。開拓という共同作業が集団と対等な個を認めず、あくまで集団の中の個に重きを置くのは仕方がないことだ。


 イァンは最近、ルイのことばかり考えている。他には何も考えられない。まだ少年と少女、しかし二人は互いを恋い焦がれる年齢に差し掛かろうとしている。今は春、桜吹雪の刹那の美しさに、イァンはルイの容姿を思い浮かべる。甘く切ない感情が、思い通りにならない苛立ちがイァンのすべてになる。


 「ルイ、聴いているの?」講師のスージーがルイを睨みつける。大学の特別授業である。受講生はスージーが選んだ学生10名、この10名にスージーは自分のすべてを叩き込むつもりだ。 前の大陸ではスージーの遺伝子組換え技術が人間の世界を破綻に導いたのかもしれない。しかし別の大陸に同等の技術を持った人間たちがいる以上、同じ技術を持たなければ、ここの人間は隷属するしか無い。スージーが選びぬいた生徒たちだ、落伍することは許されない。そして恐れるのは女神ユイの存在。


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