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転生  作者: まつ
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20

魔法のない世界に転生して20


 エリカは人間の大陸を逃げるように脱出した。大陸にいては、政治犯として処刑される人間たちも、一緒に連れ出した。あまりに理不尽な行為に、トムは義憤にかられたのだ。粛清に正義はない。狂気が血を求めるのだ。正義は悪を求める。悪がいなければ、つくれば良い。作られた悪者には、すべての罪を擦り付ければ良い。時代は生け贄を求めている。


 大型外洋帆船、3隻で人間の住まない大陸へ向かう。トムが水先案内人だ。トムの直勘はエリカが与えた強靭な肉体に由縁する。肉体と精神は別のものではない。不二のもの、


 入り江は水深は適度に深く、外海の荒い波を直接受けない地形になっていた。トムは早速、力士型自動人形10体に、湾岸設備の整備を指示した。造船所、桟橋など早急に必要とする設備から建設が始まった。しばらくは大型帆船を住居の一部にするしかない。なるべく、はしけを使わず、じかに桟橋に積み荷を、積み降ろししたい。


 ここが、この大陸における人間たちの、始まりの街である。すべての分野で、自給自足を実現しなければ、ならない。トムはすべての人間の適正をしらべた。衣類、食料、住居の専門家を短期間に作る積もりだ。誰もが自分の技術に誇りを持ち、自分の人生を誇れるものにするつもりだ。トムが最初にやったことは、住宅の建設である。男も女も、助けがあれば、独力で、住宅が出来るように、訓練した。自分達で設計図を起こし、自分達で宅地造成をして、ねぎりを行い、基礎コンクリートを打設した。

 コンクリートは別班が石灰を大量に含む山を発見。セメント工場を作った。

 また、木工所を作り、木材の加工を一手に担った。動力は水車を活用した。

 鉱山の開発も急ピッチで行われた。鉄材の製造が、これから大幅に増える。全員がすでに技術者である。


 開拓会議が頻繁に開かれる。おもに技術的なことである。「トムが教えてくれた方法で、鉄を作り出す方法は、確かに出来ますが、山がはげ山になります。」環境問題にうるさい連中が揃っている。「耐火煉瓦が、鉄の融解温度に耐えられません。」「たたらの製作はうまくいっています。煉瓦です。」

 ひとつの技術が確定するため、膨大な研究と試行錯誤がおこなわれる。トムも夢中になる。

 開拓民全員が研究課題をさがす。自動人形が過去の知識に基づいて方針をしめす。その方針に研究者が少しでも近づける。技術は相互に関連している場合がある。そんな場合、自動人形は指導する。アドバイスする。共同研究になる場合もある。


 村の敷地内を24時間、灰色狼と子分が見張っている。村の入り口には力士型自動人形が警備している。人間のいない魔獣の大陸だが、いずれ、城塞都市のように、強固な外壁を構築するつもりだ。

いまは時間がない。仮囲いで間に合わせている。


 魔獣の攻撃が頻繁になってきた。トムもここまで作り上げた街を手放すつもりもない。狼の偵察を何度も放って、魔獣の動向を常に把握している。魔獣の種類も見たことのない種類が多い。退治するごとに、食用部位を調べる。毒抜きのやり方を研究する。素材の活用方法を考える。いまの開拓村は完全自給自足である。魔獣の部位から、繊維を作り、衣類を作らねばならない。長期的には綿などの栽培を考える。


 トムは狼と念話で子分の戦力強化を提案した。トムの知る技をいくつか極めてもらう。エリカも話に加わる。「狼の家来さんの身体強化?」エリカが不思議そうな顔をする。「ほら、この間、大地にむかって、祝福を与えるとか、なんとか言って、豊作にしたじゃないか。」「だから?」「だから、狼の子分に同じことをして、」「無理です。」姉が言うことを聞いてくれない。トムはしょんぼりして、しかしすぐに次の目的を見定めた。


 狼を全部集めろ、トムは灰色狼に命令する。「これから特訓だ。訓練で生き残るか、落伍者になって死ぬか、お前たち次第だ。」トムは新兵たちを睨み付ける。


 「本格的な学校の建設はもっと後でもいいのではないか。」開拓会議で大学の建設をめぐって、激論が続いている。開拓民は教養のある人間が多い。国を第一線で率いてきた人間たちだ。生活の見通しがたった今、師弟の教育に力をそそぐ。彼らにも矜持がある。意地がある。理不尽な時代な流れにすべてを奪われた。生き別れになった人間も多い。自分を逃亡させるため多くの同士が犠牲になっている。


 「わがせこが、かえりきまさむ、ときのため、いのちのこさむ、わすれたまふな。」


 なき妻が、別れ際に送ってくれた古歌を見るたび、男は港で泣く。歌には妻が国で貴方のために、この命をながらえます、だから帰ってきて下さい。と歌っている。しかし妻はこの手紙を、男に渡した後、追いかけてきた兵に殺された。


 生活は苦しかった。しかし誰も愚痴をこぼさなかった。最初の1年目をのりこえれば、明るい未来が待っている。自分達の技術を誰もが、確かなものと信じた。


 「小型漁船の建設はどこまで進んだ。」ここは大学、様々な研究を行う場所。「すでに完成しています。漁具を積み込み、三日後にはテスト運転できます。」青年が凛とした声で報告する。

 大学の外には、養殖の実験生け簀が並んでいる。産卵期に魚をとらえて、ここでふ化させる。試行錯誤の成果だ。基本的なものは自動人形が指示した。

 様々な漁具も作られた。素材はおもに、魔獣の素材から作られた。


 スージー指導の農業技術も定着した。食中毒にならないジャガイモ。過酷な環境でも育つ穀類。野菜。化学肥料の製造。スージーがかって王国で作った遺伝子操作の作物は、時間を重ねるごとに、その特性を失い、いまは原種の特徴を残すのみになっている。遠くかって生活した大陸の農業事情に不安を感じるが、自分達は追い出された者、何も出来ない。

 大学の実験農場でふと立って辺りを見渡す。この広大な実験農場は、やがて開拓民の宝になる。隣には酪農研究所が作られた。有り余る土地を贅沢につかった各種実験所は、巨大な総合大学の姿を見せ始めている。


 大陸の革命の嵐は、人間の国を統合した。多くの避難民が辺境に逃れ、エリカは積極的に彼らを受け入れた。避難民を乗せた大型帆船は何度も人間の大陸と魔獣の大陸を往復して、やっと大型帆船はその役割を終えようとしている。当面エリカは鎖国を考えている。


 エリカの大陸は開発に追われ、人間の大陸どころではない。人間の大陸も革命の余波がやっとおさまり、再建の槌音が聞けるようになった。


 大陸探査のため、中型帆船、小型帆船が作られた。造船技師も技術に習熟して、調査船は満足いく物が出来た。大陸の地形図の作成。海図の作成。調査船は港を出た。


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