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魔法のない世界に転生して11
魔獸の暴走は過去になんどもあった。そのたびに人間は、魔獸と果敢に戦い、領土を守ってきた。しかしいまは頼みとする国家が崩壊しようとしている。国家間の争いに多くの失敗が重なり、地方領主の力が強く成りすぎている。エリカやトムも辺境候騎士団の医師である。しかしそんな国であっても、直接対峙する敵がいるかぎり、国王を中心に国はまとまる。かりそめであれ、だれもが認めるみこしが必要だった。
失った土地をこのままにしておくわけにいかない。王国は調査隊を要塞都市に派遣した。辺境候要塞都市騎士団が派遣された。トムが医師として、同行した。
「まだ、半年も立っていませんね。魔獸の進行がどうなっているのか、調べなければ。」「このまま、王都に留まることは出来ない。いずれ居ずらくなる。」魔獸の発生が一時的ならば、良い。そうでなければ駆逐することは難しい。だれもがそう思っている。トムが狼をなぜる。狼も完全に騎士団になじんでいる。しかし狼と念話で話せるのはトムだけだ。
トムが狼と斥候の役に立候補してから、騎士団の危険は無くなったため、かなりの距離を稼ぐことが出来た。「がうう、敵が来るぞ」狼がトムに警告する。トムがのろしをあげる。のろしの色でいくつかの内容を伝達できる。トムはナイフを抜いて魔獸の横を通りすぎる。魔獸はトムが見えているのにかかわらず、あまりにトムの動きが自然すぎるため、見過ごした。手品がうまくいった。内心トムはびくびくであった。しかし魔獸相手にひとつひとつのわざが決まるとうれしかった。
トムは先を急ぐ、この状態の魔獸の遭遇率なら普通といっても良い。いま程度なら、騎士団数人で退治出来るだろう。すでにのろしで位置を知らせている。トムは狼と共同の、狩りや斥候の役割を、気に入っている。ときどき道路に合図を残しながら進む。
湖が見えた。このあたりは、まだ辺境候の領地ではない。しかしここも、避難の時には魔獸の大量発生した場所だ。湖を一回りしてから、魔獸が許容範囲しかいないことを確認して、合図を送る。今夜の野営地だ。テントを設営して、今夜の食事のため、狼と狩りを楽しむ。トムにとって守る旅より、狩る旅の方が好きだ。




