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転生  作者: まつ
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10

魔法の無い世界に転生して10


 魔獸の進行は止まることがなかった。騎士団全員に焦りが出てきた。どうすればいい?トムは怪我人を背負って逃げるのがやっとだった。トム、怪我人を安全な場所に移したらすぐに治療に移ってくれ。団長の声も緊迫感にふるえている。再度のもう反撃で、さすがに魔獸の攻撃もとまった。そのかわり、負傷者がごっそり増えた。


 トムは徹夜で治療にあたった。なんとか死者は出なかったが、状況は不味い。騎士団が全滅してもおかしくない。「一旦引いて、戦況を建て直そう。」団長が苦悩の表情でトムに告げる。「団長、ひとつだけやってみたい事があります。騎士団は先に逃げてください。」団長は不審な顔をする。「このままでは全滅です。うまくいけば、時間が稼げます。説明は出来ませんが、やる価値はあります。皆さんは距離を取って下さい。」トムの必死の懇願になにか手があるようだと信じて、トムひとり置いて、全員撤退した。「生きて帰りますから、安心してください。」


 さて、どうしたものか?トムも明らかな策が有るわけではない。ただ、前にイベントでやった集団催眠術のようなものが、魔獸相手でも、掛けられないかと思った。トムは草原にいくつもの火を用意した。怪物の影を魔獸の前に投影しようと思った。光源の位置と影の位置で、単純な仕掛けで多くの影を出現指す事が出来る。多くの影に殺気を込めて、怪物の集団が一瞬、魔獸を襲うと信じ込ませる事が出来れば、まだ僕たちが生き残るすべが、ある。


 魔獸の群れがトム目掛けて、一直線に攻めてきた。トムはすべての光源に火を放った。これは戦ではない。舞台のうえの手品だ!と強く思い込んだ。失敗すれば観客は嗤うだろう。嘲りと観客の憐れみの目、二度とこの舞台のうえに立つことはない。いくさと何が違うのだ。一世一代の手品を演じて見せる。魔獸がきた。トムが走る。魔獸の影と、トムの無数の影が交差する。頭上に無数の蝶が舞う。ぎんぷんを雪の様に、降らせながら。


 魔獸はトムの手品に乗せられた。影が走り魔獸を襲う、魔獸が、魔獸を食らう。トムも怪物の影となり、魔獸の急所に剣を叩きつける。何時間かの戦が終わったとき、魔獸は同士うちで、付近一帯が血の海となった。無事な魔獸は一匹もいない。十分な時間を稼げたのを確認してトムは引き上げた。


 トムは騎士団に追い付いた。団長は喜びを満面に浮かべてトムをむかえた。「良かった、生きていたか。本当によかった。」騎士団全員がトムの帰還をよろこんだ。


 トムにとってはふた番目の徹夜となった。改めて負傷者全員の治療を再開した。神のけんぞくたるトムだからこそ出来る仕事だ。団長より話があった。撤退を決めたらしい。周囲を見渡すと無事な人間のほうが少ない。いや、全員が何らかの傷をおっている。このままだと、多くの土地を、みすみす手離すことになる。みんなも思いは同じだが、いかんせん、戦力不足だ。


 撤退はみじめだ、魔獸に追われる恐怖に戦いながら、住民すべてに撤退命令を出す。弱いものの足は遅い。騎士団は住民をせかせる声をかろうじて呑み込み、魔獸に対し武器をかまえる。連携もままならない戦いで騎士団に勝ち目があるわけがない。


 トムは念話ねんわでエリカと現状について話し合う。このままでは街も壊滅的な被害をこうむる。「逃げてください。もう騎士団は機能していません。」トムは女神エリカに戦う力などないと思っている。まして妹スージーはまだあかちゃんである。自動人形ひとりでは、出来ることなどしれている。

 女神エリカはトムの報告を聞いて、ひとつの決断を迫られている。自分達だけなら結界を張って、生き残ることが出来る。もしかしたら、この城塞都市をすべておおう結界でも張れるかもしれない。しかしその場合生き残れるのは、この城塞都市だけだ。すぐに四方は魔獸のテオトリーとなる。人間はみじめにこの結界のなかからでることも出来ない。そして自分も永久に、ただ結界を張る為だけの道具になる。それはつらい。

 この城塞都市で魔獸と死ぬまで戦うのは?エリカやトム、スージー、自動人形は殺されても、神の領域に戻るだけ。記憶をリセットしなくても、してもどちらでも良い。すでに殺された段階で、エリカたちに選択肢はない。

 この城塞都市を捨てて、王都に向かうのは?すべての人々を王都まで避難させることなど、出来ない。いや待てよ?旅の途中、小規模な魔獸避けの結界ぐらいなら張り続けることが出来るかも知れない。自分が神だとあかさなくっても、魔法道具をみんなにしめして、この宝具ほうぐがあるかぎり、結界を維持できると、人々に納得させて、王都までつれていくことは、できるかもしれない。王都に着けば、ほうぐは崩壊したことにすればよい。


 エリカは、領主に面会を申し込んだ。エリカは過去何度も領主と会う機会があった。女神の神威をまとった言葉は、領主に現状認識を容易に信じ込ませる。この地に残れば、死以外の選択肢はない。全員が追われるように、王都にむかって、避難をする。エリカが大事にかかえるほうぐを中心にまじゅのうの森の真っ只中を、大勢の避難民はすすむ。


 トムは騎士団の団長と現状の確認と打破のための話をしている。そのとき領主から連絡があった。城塞都市の人員の王都までの避難である。騎士団もそれに合流するように命令がくだった。団長も、やむを得ない判断だと思った。


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