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Endagogue  作者: 42
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1<プロローグ>


 ――――アラームが、鳴る。一定間隔で繰り返す、単調な機械音。

 枕元にあるその音源、飾り気のない黒いスマホを手に取り、指先で操作し音を止める。画面に表示されている時刻は、午前6時…もうすぐ1分。――――いつも通りの朝。今日もまた、いつもと変わらず目が覚めたことに安堵し、そして落胆するのもいつも通り。


 上体を起こし、手を伸ばして届く高さの棚の上から半透明のケースを取り、中にあるシンプルな眼鏡を出して掛ける。ベッドから降り立ち窓辺へ歩き、左右開きのカーテンを思い切りよく開けると、清々しい朝の光が部屋いっぱいに満ちる。

 ・・・今日はどうやら、天気が良いらしい。学校に行く前に洗濯をして、今日の帰りは遅くならないはずだから、外に干したまま行けるだろう。


 ジーンズとシャツに着替えて、脱いだパジャマを持って洗面所へ向かう。それを洗濯機に放り込み、そばの洗濯カゴの中身も一緒に入れて、洗剤を投入し開始のスイッチを押す。それから歯を磨いて、眼鏡を一旦外して顔を洗って、匂いのあまり無い整髪料で、不快に思われないだろう程度に髪をセットしてからキッチンへ行く。

 ティーパックの紅茶を用意して電気ポットでお湯を沸かしつつ、トースターで食パンを焼き、冷蔵庫から出した卵を目玉焼きに。ついでにウインナーを焼いて、お皿の上に千切ったレタスの隣に盛り付ける。


 朝食が済んだら食器を洗い、出来上がった洗濯物をベランダに干して、それから部屋の掃除に取り掛かる。

 家具やその他高い所にモップを掛け、気になる所は雑巾で拭いて、近所迷惑にならないだろう時刻であることを確認してから、1LDKのたいして広くない部屋の床に掃除機を掛ける。


 一通りのことが終わって、学校に向かうのがだいたい8時。自転車で5分程度の距離の大学に行き、講義を受け、今日はコマ数が少ないのでお昼には、コマ数が多い日や、講義の後で買い物に行ったとしても19時頃には家に帰る。

 他の学生のように飲み会に参加したり、遊びに行ったりすることはない。規則正しく生活し、学生として必要以上の行動はしない。それが今日も、明日も、僕の日常。きっとこの先も、変わることのない毎日。



 「さて、そろそろ学校に行かないと」


 出掛ける前の一杯にと入れた濃い目の紅茶を飲み干し、僕は独りごちて、そういえば、この部屋で声を出すのはいつぶりだったろうか、と考え、苦く笑った。









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