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第9話『もりへのあんない』

 村長が盗賊の死体調査を命じた後は、各々が席を立ち、小屋を後にした。

 ジョランは準備がある、と言って一人でどこかに行ってしまった。

 シャンメルは積み荷を村長に預けに行く、他のヤツに預けて商品をくすねられたらたまったもんじゃないからな、と言い残して小屋の中に戻ってしまった。

 小屋に戻る前、商品を運ぶ馬車を見せてもらった。

 想像していた通りの馬車で、荷台に車輪がついた簡素なものだ。ほろはなく、雨が降った際は商品を厚手の布で覆い隠すらしい。食品を運ぶことは少ないから雨が降っても困らないそうだ。

 想像と違ったのはゼホーだった。

 リーファの翻訳ほんやくによれば馬だったはずだが、実際目にしてみると、馬とはかなり違った生き物だった。

 全体的なシルエットはまさに馬で、村を見つけた際、遠くから眺めた時の印象と一致している。足も4本、頭はひとつで、化物というわけじゃない。

 馬と違うのは頭、それも額と頭頂だった。

 額には鉄板てっぱんを埋め込んだような黒色の骨が露出ろしゅつしていた。

 最初は簡易的なかぶととして鉄を埋め込んでいるのかと思ったが、シャンメルに聞いたところでは骨らしい。

 頭頂部には左右等しくつのが生えていた。鹿しかのような樹木めいた茶色で折れ曲がったものではなく、額と同じく黒色で、鋭く(とが)っていた。

 当然こちらも骨で出来ており、(たけ)り狂ったゼホーは人を容易(ようい)に突き殺すのだとシャンメルが言っていた。

「リーファ、ゼホーは馬じゃないね。ゼホーで更新してもらえる?」

≪ん、わかった。≫

 こうして、ゼホーはゼホーとして単語登録された。

 牛を馬と言うと違和感があるように、やはり単語はある程度正しい状態にしておきたい。

 そんなわけで、ジョランとシャンメルが立ち去った今、なぜかマコトはエドラと二人きりになっていた。

「なんで君がここに?」

「ばか。危険人物を一人にしておけるか」

 ぎろりと(にら)みつけられる。おお怖い。

 おどけた表情をしたら、弓を向けられた。前言撤回、本当に怖い。

 ジョランやシャンメルに比べて、マコトは武器を取り上げられていることもあって、手持ち無沙汰だった。どうせだから村の案内でもしてもらおうと口を開きかけた時、エドラのほうから声をかけてきた。

「腕は」

「え?」

「……腕は、大丈夫か。傷、開いただろ」

 包帯の巻かれた腕を見る。

 そういえば、さっきの尋問中に傷口が開いたんだった。じんわりと血が滲んでいる。

「ついてこい。新しい包帯にかえてやる」

 ずんずんと先を行くエドラについていくと、こじんまりとした小屋が見えてきた。

 中に入ると、薄暗くなるが、大きく開け放たれた窓から入る光が、思ったよりも中を明るく照らしていた。

「へえ……」

 壁には様々な形の弓矢がかけてあった。

 大きいもの、小さいもの、少し曲がったもの、大きく曲がったもの……弓には詳しくないが、エドラが弓にこだわりがあることは伝わってきた。

「あまりキョロキョロするな。そこに座れ」

 仏頂面のエドラに言われ、マコトは慌てて椅子に座った。

 エドラは別の椅子をマコトの側に置いた後、今度は木箱を持ってきた。

 鍵のかかっていない木箱を開けると、中には小さな(びん)がいくつか入っていた。

 瓶の中には紫やら緑やら、飲んだら苦そうな色の液体が入っている。

「腕を出せ」

 正面に座ったエドラに言われ、包帯を巻いたほうの腕を差し出す。

 エドラは無造作に包帯をはぎ取ると、傷口をじっと見つめた。

「悪くない。もうじき治るだろう」

「君の薬草のおかげだね。ありがとう」

 ふいな感謝の言葉に、エドラが顔を上げる。

 (きょ)を突かれたからだろうか、いつもの険のある表情ではない、歳相応(としそうおう)素朴(そぼく)な表情が浮かんでいた。

 なんだ、こんな顔もできるんだ。

 マコトがそう思ったことが伝わったのか、エドラは怒った顔になり、乱暴に包帯を巻き始めた。


 ◆


 エドラに包帯をかえてもらった後、村の入り口まで行くとシャンメルが待っていた。

「お、新しくしてもらったのか。エドラの薬草はよく効くって評判だぜ」

 さすが商人だけあって目ざとい。よく気がつくものだ。

「まったく、エドラは優しいねえ」

「うるさい、腕が腐って臭うのがイヤなだけ」

「わはは、そうだな」

 シャンメルが頭を撫でようとするのをエドラが避ける。

 まるで仲のいい兄弟のようだった。

「なんだお前ら、子どもの遊びじゃねえんだぞ」

 微笑ましい光景に冷水を浴びせるが如く、大ぶりの弓を携えたジョランがやってきた。

「村一番の弓使いって言っても、エドラちゃんはまだ子どもだもんねえ?」

 ジョランの挑発は聞き慣れているのか、エドラはすました顔で、

「その子どもに弓の腕で負けてるのは誰?」

「だまれ! この……ちっ」

 弓と同じく的確に相手の急所を点くことで、見事カウンターを決めた。

「お前ら、準備は出来ただろうな? 出発するぞ! 坊主、先頭はお前だ、死体まで案内しろ。妙な真似すんなよ?」

 うさを晴らすように、弓でマコトの背中を小突く。

 村出てから一度だけ振り返ると、エドラが険しい顔をしてマコトたちを見下ろしていた。

 ジョランに見咎(みとが)められ、背中を強く小突かれる。

 こうして、死体への案内が始まった。

この世界の技術力に影響するため、瓶を出すか迷いました。

でも、やっぱり薬は瓶!


か、感想が欲しいです(内容が面白くないとダメか……)

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