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第5話『たたかう、にげる、それとも』

 険しい顔をした村人が、小型の弓を引き(しぼ)り、真人(まこと)に狙いをつけている。

「な、なんで狙われてるんだ?」

 返事がない。

 振り返ると、リーファは既に姿を消していた。

「あいつ……!」

「トゥウェイ ヨゥ!」

 何を言っているのか分からないが、こちらを威嚇(いかく)しているのは分かる。

 戦うつもりがないことを示すために、真人が地面に剣を置こうとした瞬間、矢が飛んできた。

「あっぶな!」

 間一髪(かんいっぱつ)で避けると、矢は地面に突き刺さった。

「まてまてまて! 剣を捨てるから、ホラ捨てた! ね、ただの無害な高校生だって!」

 真人の必死な弁明(べんめい)もむなしく、第二の矢が放たれる。

「だー! 死ぬ、死ぬってそれ!」

 頭上を矢が飛び越えていく。

「リュハ ティオン ヨゥ ターヒュ ウヅ!」

「わ、分からん」

 相手との共通言語を持たなければ、多くのコミュニケーションが失われる。

 真人が村人の言葉を理解できないのであれば、村人からしても真人の言葉を理解していない可能性が高い。

 そうであれば、必死の弁明、命乞いも相手には伝わっていない、むしろ挑発的だったり好戦的な発言だと受け止められても仕方がない。

 村人は険しい顔をしたまま3本目の矢を構えた。

 もう避けきる体力もない。

 そもそも、ラッキーが続いて避けられただけで、弓の飛び先が見えていたわけではない。

 真人は思考する。

 逃げるか?

 村人に背を向けて逃げる。

 その背中に、村人の放った弓矢が吸い込まれ、真人は血しぶきをあげて崩れ落ちる。

 だめだ、背を向けるのは致命的(ちめいてき)

 それなら。

 真人は前方に向かって駆け出した。

 その先にいるのは弓を構えた村人。

 決死の特攻。

 村人が驚いた顔を浮かべる。弓を構える手に動揺(どうよう)が伝わり、狙いが甘くなる。

 相手を驚かせること、これが狙いの一つ。

 しかし、相手に近づくほど命中範囲が広がり、矢で射抜かれる可能性も高まる。

 村人もそれに気がついたのか、今は落ち着き弓を引き絞り、真人の胴体(どうたい)に向けていた。

 もう一つの狙いも成功した。

 避けることを諦めれば、あとはタイミングを見切るだけ。

 遠くからでは相手の動作、呼吸が(つか)めない。

 近づけば、よりよく見えるようになる。

 それに――、

 村人の顔がよく見える。

 思ったよりも距離を詰められたことで、(あせ)りの表情が浮かびつつある。

 弓を持つ者は相手が近づくことを恐れている。

 ある程度の距離から放ちたいに決まっているのだ。

 我慢(がまん)の限界の距離、それがここだ。

 最終的には(かん)だった。

 だが、村人が矢を放った瞬間、真人は横にステップ、矢は真人がいた場所を通り過ぎていく。

 真人はさらに村人との距離を詰め、弓矢を(うば)おうと飛びかかった。

 武器を奪おうとする者、奪われまいとする者が必死の形相(ぎょうそう)で転げまわる。

 巻き上がった土煙(つちけむり)が晴れた後、真人は村人を押さえつけていた。

「はぁはぁ……」

「ウトゥヌ デライ ヨゥ!」

 村人が真人を押しのけようと、腕の下でもがく。

「だから、何言ってんのか分から……な……い?」

 距離が近づくほど相手の顔がよく見える。

 少女だった。

 怒りに顔を紅潮(こうちょう)させ、射抜くような(ひとみ)で真人を(にら)みつけている。

 思わぬ事実に真人の気が(ゆる)んだ(すき)に、少女は思い切り真人の股間(こかん)を蹴り上げた。

「……ぐはっ」

 真人は短くうめき声をあげ、少女の上に崩れ落ちる。

「ウ、ウヌ!」

 (おそ)われたのかと誤解した少女が悲鳴をあげる。

 必死になって押しのけて、ようやく相手が気を失っていることに気がつく。

 もぞもぞと(おお)いかぶさる真人から抜け出し、立ち上がって乱れた衣服を整える。

 気を失っていることを確認すると、落ちていた弓矢を拾いあげ、そして――。

危機を脱したかと思いきや、思わぬ攻撃に一転、絶体絶命のピンチに!


真人の冒険はここで終わってしまうのでしょうか?(それは困る)

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