悲惨なバイト
俺が実際に、経験した実話です。
「魂の叫び」
それは、俺が同僚と東北へ出張に行った時に体験した、可笑しくも哀れな出来事だった。
出張費を浮かすため、安いビジネスホテルに素泊まりで泊まった俺たち2人。
2日酔いの頭を抱えて、朝定を食べに福島駅前の某牛丼チェーンのドアをくぐる。
そのチェーンは、食券販売機は無く、対面注文方式で、朝定以外のメニューも豊富だ。
俺達は、カウンターに並んで座る。
店内には先客が2人だけ、既に食事中だ。
「いらっしゃいませ」
20歳位か、愛想のいい若い男性が水を置く。
「朝定の、卵かけご飯に納豆、2人共」
数分で俺達の前に定食が運ばれてくる。
「これで350円だもんなぁ、安いよ」
「でも、客4人で、人件費でんのか?」
その時、自動ドアが開き若い男が4人。
「いらっしゃいませ・・」
奥のテーブル席に、素早く水を運ぶ店員。
「俺、カルビ焼き定食、豚汁に変更で」
「カレーの大盛りにサラダ」
「牛丼特盛をつゆだくにして・・」
「朝定、ご飯は少なめでいいや」
「はい、かしこまりました・・」
そこへ、新たなカップルが入って来た。
「あっ、いらっしゃいませ・・」
「良かったな、タッチの差で早く来て・・」
「ああ、でも、俺達って招き猫?」
のんびりと食べながら、余裕の会話。
駐車場に2台のバンが止まる。
工事に行く途中か、工員姿の客が8人来た。
「い、いらっしゃいませ、只今・・」
厨房の奥から店員の大きな声。
ぞろぞろと勝手に陣取る工員達が注文する。
「あっ、俺、おろしポン酢、ご飯大盛り」
「カレー大盛りに、サラダ、牛皿」
「カルビ焼き単品に、ビールとお新香」
「兄さん、お茶、熱いの、あと、牛丼並」
それぞれが、勝手なバラバラの注文。
「すげぇな、こんなの覚えられ無いぜ」
「平気じゃねぇ、慣れてるよ」
「こんな仕事、俺、絶対無理・・」
「そろそろ、行こうゼ、すみません会計」
「あっ、僕達も会計」
「ねぇ、こっちの、まだなの?」
「注文、変更ってできるよなぁ、まだ」
「早くしろよ、時間無いんだから・・」
「熱いお茶、まだかよっ?」
そこへ、更に3人の新客が入って来た。
その時・・
ガッシャ〜ン・・
厨房から大きな音が・・
「う、うおおぉ〜」
「あっ、切れた・・」
魂の叫び・・