30行小説 その2
勇者アーレイドに命を救われた少女、タリッサ村のリーシャは、閉じ込められた牢の中で……思い出していた。あの日、目の前に現れたアーレイドは、村を焼こうとする中級魔族をいともたやすく退けたことを。そして、この世界の理不尽から君を救うと約束してくれたことを。
「だから……また、またきっと。助けてくれる……よね。勇者さま……」
リーシャの祈りに呼応するかのように、サリータ盗賊団の女団長、シーシャも声を漏らす。
「アーレイド。アンタが教えてくれたんだよ……希望を失うな、ってね。だから……」
一度はアーレイドの命を狙ったシーシャだが、王軍に見放された盗賊団をもアーレイドは魔族軍から救ってみせた。だから、彼は今回もやってくれる。不思議とシーシャは信じていた。
リッターシタ王家の姫であるサリターリ・サリ・リッターシタを捕らえ、牢に繋いだのは言うまでも無く魔王その人だ。古の言い伝え、王家の危機に現れるという勇者の存在を恐れ、魔王はリッターシタ国を攻め落とすと見せかけ、防衛に回ったアーレイドの裏をかき、見事サリターリを誘拐。以来、彼女は人質として幽閉され続けているが。アーレイドの気配を感じ、
「さらわれる時、私は貴方の表情を見ました……絶望。いいえ、希望を捨てていない目を」
魔王軍にも異端者というものは居る。一枚岩な組織など存在せず、牢には人間だけが押し込められているわけではない。魔王軍将軍、女でありながら武人として育てられた彼女は、サーシャリーはアーレイド討伐命令の際、一人の武人として誇りある戦いを望み、闇討ちを狙った部下を切り捨てた。謀反の嫌疑により、いずれ来る処刑を待つ身だが、不思議と恨みは無い。
「だからというわけではないが……アーレイド。死すならばせめて、お前との戦いで……」
和解と融和を訴え続けたリッターシャもまた反逆者として投獄されていた。アーレイドに光を見たリッターシャは、身の危険を顧みずに、今の魔王軍を真っ向から批判してみせた。だが、彼女は既に居ない。幼馴染だったサーシャリーの口から、彼女の最後の言葉がこぼれていた。
「ありがとう、サーシャ。あなたも認めてるんでしょう? アーレイドはいい人よ……私は間違っていない。だけど、彼の作る新しい世界が見られないのは……ちょっと残念かな」
牢に繋がれたリーシャ、シーシャ、サリターリ、サーシャリー。志半ばで牢の露と消えたリッターシャ。アーレイドの与えた希望は、この最果ての牢獄すらも明るく照らしている。
轟音。絶叫、あるいは断末魔か。数瞬の後、凍てついた牢に光が差し込んだ。そして、声。
「みんな……ただいま」
世界は救われた。勇者は魔王を打ち倒し、王家を救い、約束を果たし、盗賊に義を示し、そして魔族すら。みなが望んだ新世界が、これから始まっていくのだ。
【レギュレーション】
・30行以下
・異世界に行く
・ハーレムになる(2人以上)
・無双する
・世界を救う
・あらすじにはしない
【制限】
・42文字を1行とする。
・ヒロインをいっぱい出す。
・異世界に行く。
・世界を救う。
【問題点】
・あらすじやんけ