君の時代
王権によって世界が成り立っていた時代。
「輝」というような名の小さい王家があった。
つい1ヶ月まで国をまたいだ大規模な戦争があり、
それがやっと最近収束したばかりで、
どこの国の軍隊も、民も、国家もボロボロであった。
そのような戦後間もない頃、輝王家に新しい王が即位した。
まだ若く、年端もいかない容姿で、
名は「闇」を意識せざるを得ない響きであった。
国民は不安がり、お互いに王家の現状を噂し合った。
王家も民の懸念をよく分かっていたが、
他の王位継承者は戦争で亡くなったり、
争いによって国外に逃亡していたり、
病気がちでとても公務が務まらなかったりした。
「闇」以外は、彼の幼い妹しかいなかった。
さて、「闇」が即位してからというもの、
国には飢饉や日でりが続き、
国力がただでさえ弱まっているというのに、
大量の餓死者が出た。
その他にも、占星術師たちが口々に不運を予知し、
国は存亡の危機に脅えた。
隣国は戦争が終わっても、まだ腹の内ではこの国の領地を狙っていた。
この隣国の方がまだましな生活で、国外へ逃れる民も増えた。
王は何をしているのか。いや、何もできないであろう。
民の不安は高まった。
その頃王宮内では、「闇」が考えをめぐらせていた。
民のためにできることは何か。
どうすればこの国は良くなるのか。
まだ年若い彼に出来る事は限られていたが、
ある一つの決断をして、それをやりぬくことに決めた。
国内から募集をかけ、次の王を決めて即位してもらおう。
反対する者もいるだろうが、一番賢い者が政治をすれば、
この国はもっと良くなるだろう。
「闇」は連絡を待った。
しかし乞食が来る以外、ほとんど誰も応募してこなかった。
彼は王宮の大きな窓を開いて外を眺めた。
国は既に壊滅しそうなほど荒廃していた。
彼らにはもう政治を考える余裕はないだろう。
もしくは、危険を冒して国外に避難しているであろう。
食料、衣服など基本的な物資さえすでに無いのだ。
「闇」は隣国に助けを求めることにした。
しかし使者を送っても、なぜか丁寧に門前払いをくらう。
「闇」は悪魔の使いであるという噂は隣国まで広がり、
用心されているようだった。
「闇」は良い考えを思いついた。
うっすらと唇に笑みを浮かべ、仕事に取り掛かった。
数年後、その国は発展し、豊かになっていた。
「闇」はもうこの世にいない。
悪魔と契約し、自らを捧げてこの国を救うことにしたのだ。
彼はそれゆえ悪魔に転生することになった。
その後、彼の妹が王位を継ぐことになった。
妹は公務を側近に手伝ってもらいながら、ふと思う。
「闇」とは何だったのかと。
「闇」とは破滅の象徴であり、始まりを意味する。
良い時期もあれば、悪い時期もある。
それゆえ過ぎ去った時代は面白いものだ。
いつしか妹は大きくなり、
「輝王」の名にふさわしく成長し、
彼女の隣には悪魔となった兄がおりましたとさ。
それからというもの、国力は、
彼らの協力によって衰えることがなかったそうである。
めでたし めでたし